ANSYS 2019 R3
陸上でも空中でも、完全な自律走行車(AV)の普及が現実味を帯びるにつれ、運用上の安全性がより一層重要な問題になります。複雑な環境内で、さまざまな可変条件を使って、自律走行車に関する厳密なテストを実行しなければなりません。物理テストで要求される走行距離または飛行距離は、数十億マイルにも及ぶでしょう。しかし、それは膨大な時間とコストを必要とする、ほとんど不可能に近いアプローチです。シミュレーションを利用した自律走行車の仮想的なテストは、システムの安全性を検証し、自律走行車の開発を迅速化する、唯一の実行可能な選択肢です。
ANSYS 2019 R3では、ANSYS SCADE Visionの導入により、自律走行車向けの次世代Pervasive Engineering Simulation(エンジニアリングシミュレーションの活用)ソリューションを引き続き提供します。お客様が組込みの認知システムの安全性を評価し、自律走行車センサーに検出異常がないことを確認することが可能です。
この最新の追加機能は、エンドツーエンドのシミュレーションを実現するANSYSの自律走行車向けソリューション、ANSYS Autonomyをさらに強化します。ANSYS Autonomyはエンジニアを支援し、閉ループのシミュレーション、組込みソフトウェアの開発、機能的な安全性およびサイバーセキュリティの解析、センサーのシミュレーション、ヒューマンマシンインターフェースの使用を可能にします。
ANSYS 2019 R3では、多くの拡張機能がポートフォリオに加わっています。また、センサーシミュレーション用の総合的な再帰反射材料データベースSPEOS Road Libraryが含まれており、湾曲のある大型対象物のレーダー断面を高精度で予測できるANSYS HFSS SBR+のアップデートも提供されます。さらに、ANSYS 2019 R3には以下が含まれています。
3D設計
ANSYS Discovery Liveでは、ジェネレーティブデザインのための世界初のインタラクティブなトポロジー最適化ツールが導入されています。また、非定常解析のための質量流量アウトレットおよび時変インプットを含む、新しいシミュレーション機能も導入されています。これらの拡張機能を利用すると、広い範囲に及ぶ製品挙動を簡単に評価し、最適な設計ソリューションを迅速に発見することができます。
ANSYS Discovery SpaceClaimに新しく追加された機能としては、STLなどのファセット形状から自動的に面を再構築する機能があります。このプロセスにより、三角形ベースのモデルが隙間のないスムーズなCADモデルに変換され、リバースエンジニアリングやジェネレーティブデザインのワークフローで利用できます。可視化の改善によって高品質なレンダリングが生成され、ユーザーエクスペリエンスが強化されています。
ANSYS Discovery AIMでは、構造ビーム、新機能である物理条件を考慮したメッシュ生成(Physics-Aware Meshing)、線形座屈機能がサポートされるようになりました。今回のリリースでは、メッシュ障害の可視化から構造的安定性の評価まで、確かな実績のある使いやすい機能が提供されています。
付加製造技術
ANSYS Additive Prepに新しいビルドプロセッサが加わり、ビルドファイルを直接、付加製造(AM)マシンにエクスポートできるようになっています。
ANSYS Workbench Additiveでは、STLサポート材、メッシュ、要素密度の切り替えが可能です。クールダウン後、(AMプロセスシーケンサーで)STLサポート材を除去するためのオプションが含まれています。
ANSYS Additive Printでは、サポート材に関連する新機能が提供されています。
- サポート材だけを切断する機能を使用すると、変位量のあるベースプレートから部品を分離させずに、部品からサポート材を切り取ることができます。
- サポート材のグループ機能により、1回のシミュレーションで複数のタイプのサポート材(ボリュームレス、立体)に対応できます。
電磁界
ANSYS 2019 R3は、電磁界シミュレーションソリューションを提供し、自律性、5G接続、電動化というエンジニアリングのメガトレンドを追求するお客様を支援します。新機能には以下が含まれます:
- ANSYS Cloudオファリングが拡張され、ANSYS Electronic Desktopで使用可能 — ANSYS HFSS、ANSYS Maxwell、ANSYS Q3D Extractorのユーザーが、ANSYS Cloudのハイパフォーマンスコンピューティングオプションを利用できるようになりました。
- ANSYS HFSSでは、分散型メモリソルバーのスピードが大幅にアップされます。
- ANSYS HFSSおよびANSYS HFSS SBR+には、自律システムのシミュレーションで必要となる、複雑なレーダー断面積のモデリングと後処理のための新機能が含まれています。
- ANSYS HFSS SBR+には、クリーピング波物理学が追加されています。湾曲のある大型対象物のレーダー断面を高精度で予測できる重要な新機能です。
- SIwaveハイブリッドソリューションのHFSSリージョンにより、ICパッケージとPCBのシミュレーション速度が大幅に向上 — HFSSリージョンを複数の演算リソースに分散し、パラレルに解決できるようになりました。
組込みソフトウェア
ANSYS 2019 R3では、自律走行車を中心とするイニシアティブを推進するために、組込みソフトウェアファミリーの機能が拡張されています。
ANSYSソリューションは、センサー、ヒューマンマシンインターフェース、自動運転ソフトウェア、コントロールソフトウェア、演算プラットフォーム、車両プラットフォームなど、自律走行車(AV)のすべての主要要素に対応しています。このリリースでは、既存のソリューションに加え、AIベースの自律走行車に組み込まれる認知ソフトウェアのテストおよび安全性に特化した、まったく新しい製品が導入されています。ANSYS SCADE Vision SCADE Visionは、自律走行車に組み込む認知ソフトウェアの弱点を迅速に発見すると同時に、テストおよび安全性の検証に必要なコストを大幅に削減し、わずかな距離であっても軽視せず、自律走行車のデータから最大限に価値を引き出します。
ANSYS SCADEでは、最も先進的な自動車システムの開発と、自律走行車を含むそれらのシステムをコントロールする組込みソフトウェアの開発に必要な重要機能が強化されています。SCADEによる完全かつ効率的なAUTOSAR SWCフローと、大容量のSimulink®モデルをシームレスにインポートする能力のユニークな組み合わせにより、システムエンジニアリングチームが作成したレガシーモデルの再利用が可能です。SCADEを使用することで、他に例を見ない、最高の品質を備えた、ISO 26262認証済みのコード生成ツールチェーンによる利点を活用できます。
流体解析
このリリースでは、ANSYS Fluentのユーザーエクスペリエンスが進歩しています。たとえばANSYS Workbenchで、Mosaic対応のメッシュを使用してパラメータ調査を実行したり、共役熱伝達をシミュレーションする際、耐障害性のあるメッシュを適用して不連続インターフェースをサポートすることが可能です。加えて、Fluentの式言語機能が新しく利用可能になり、パラメータ、レポート、モニターで併用することができます。
その他にも多くの重要なアップデートおよび追加機能があり、数値流体力学(CFD)解析をより広い範囲の用途で補完します。
- 自動化されたワークフローによって、Fluentのアジョイントソルバーが高速化し、さまざまな目標および動作条件に対応する、有機的で最適な形状が生成されます。
- Fluentを使用して、複雑な次数低減モデル(ROM)をより迅速に、より簡単に評価することができ、設計調査が改善されます。
- ANSYS ForteをFluentまたはANSYS Mechanicalと組み合わせ、共役熱伝達解析を高精度で実行できます。
材料
今回のリリースでは、ANSYS GRANTA Selectorを導入しています。新しいSelectorは、従来のCES Selector製品がもたらした25年の実績を持つ材料選択テクノロジーに立脚し、外見を刷新するとともに、優れた新機能およびANSYS製品との統合能力を提供します。総合的な材料データライブラリと、データの絞り込み、分析、適用のための一連のツールを利用して、材料の選択をスマートに、簡単に実行できます。比較、等価性の調査、金属グレードの選択用に最適化されたデータが得られます。シミュレーションのサポートが改善され、ユーザーエクスペリエンスが強化されています。
電磁界シミュレーションを実行する際、ANSYS Electronics Desktopから、ANSYS GRANTA Materials Data for Simulationにアクセスできるようになりました。最新リリースでは、機械特性および熱特性とともに、キーとなる電磁特性も含まれるよう適用範囲が拡張されています。重要な多くの材料クラスに広がる700以上のレコードにより、データの検索と変換に必要な時間を最小化します。ANSYS Mechanicalでも、拡張された同じデータセットを利用可能です。
光学解析
このリリースでは、ANSYS環境への光学シミュレーションの統合がさらに強化されています。ANSYS SPEOSで、メッシュ化された形状のサポートが含まれるようになり、マルチフィジックスワークフローからメッシュデータのインポートが可能です。また、最高のドライバーエクスペリエンスをもたらす最適なレイアウトと形状を生成する、ヘッドアップディスプレイ(HUD)光学設計もサポートされます。
SPEOS Live Previewがさらに柔軟に、使いやすくなっています。トゥルーカラーとフォルスカラーの切り替え、結果プレビューにフィットするスケールの調整、プレビューに使用するセンサーの選択など、多くの機能をワンクリックで実行できます。
また、SPEOS Road Library for Sensors Simulationと呼ばれるライブラリも追加されています。このライブラリには、どのセンサーでも検出可能なアスファルト、標識、ペンキ、植物などの再帰反射材料が含まれています。
このリリースでは新しい周辺/熱源モデルが導入され、空や太陽の環境をよりリアルにシミュレーションできます。さらに、ライダー(Lidar)の回転をシミュレーションする新機能により、SPEOSで視野調査をすばやく簡単に実行できます。
SPEOSでは、より直感的になったインターフェースも提供され、ユーザーエクスペリエンスが改善されています。
プラットフォーム
ANSYS Cloudで提供される、ほぼ無限の演算キャパシティを利用して、シミュレーションの所要時間を大幅に短縮しながら、モデルのサイズおよび忠実度を上げることができます。非常にセキュアなMicrosoft® Azure™プラットフォーム上に構築されたANSYS Cloudを利用すると、ANSYS Mechanical、ANSYS Fluent、ANSYS Electronics Desktopから直接、オンデマンドで演算コアに簡単にアクセス可能です。今回のリリースからANSYS Maxwellのユーザーが、構成済みのハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)構成を選択することにより、このセキュアな演算プラットフォームの利点を活用できるようになりました。これらのHPC構成は、電気機械アプリケーション向けに最高のコストパフォーマンスが得られるよう最適化されています。
さらに、ANSYS 2019 R3では、真のマルチフィジックスコラボレーションを可能にする機能が導入されています。Arasのレジリエントプラットフォームを搭載したANSYS Minervaは、さまざまな地域や縦割りの部署に分かれたチームメンバーが、データ、プロジェクト計画、アナリティクスに簡単にアクセスできるよう、これらを保存する集中型シミュレーションナレッジマネジメントアプリケーションです。Minervaは、重要なシミュレーション専門知識を集めた単一の集中化レポジトリーを提供し、次世代製品をよりスピーディに、より低い開発コストで市場化できるよう貢献します。
半導体
電力効率、パワーインテグリティ、信頼性のソリューションからなるANSYSの半導体向けポートフォリオは、ISO 26262の「Tool Confidence Level 1」(TCL1)認証をクリアしています。自動車向け集積回路(IC)の設計企業はこの認証によって、ADASや自律走行の用途における厳しい安全要件を満たすことができます。
オートチップメーカーは、安全性関連のISO 26262開発プロジェクトにおいて、ASIL(Automotive Safety Integrity Level)を問わず、マルチフィジックスシミュレーションを提供するANSYS PowerArtist、ANSYS Totem、ANSYS RedHawkファミリーを活用できます。自動車、人工知能(AI)、5Gアプリケーション向けの次世代システムオンチップ(SoC)ソリューションは、設計マージンの縮小に加え、コストの高騰、厳しい開発スケジュールへの対応といった問題に直面しています。ANSYS RedHawk-SCは、このような設計における複雑なマルチフィジックスの課題に、高度なFinFETプロセスおよび3D-ICパッケージング技術で対応することにより、これらの問題を解決します。RedHawk-SC in ANSYS 2019 R3には、5nmまでの総合的なFinFETノードリストに対応する主要なファウンドリ認証が含まれており、自己加熱および熱エレクトロマイグレーション解析のパフォーマンスが大幅に改善され、実効抵抗計算の実行時間が桁違いに短縮されています。
構造解析
ANSYS 2019 R3におけるANSYS構造解析ソリューションのイノベーションにより、以下のことが可能です。
- ANSYS Mechanicalに統合された先進的なマルチボディダイナミクスソルバー、ANSYS Motionを使用して、数百万の設計ポイントを含む大規模なアセンブリモデルを調査できます。
- 新たに追加されたANSYS Sherlockを使用して、設計の初期段階で電子ハードウェアのコンポーネント、基板、システムの各レベルについて、製品故障を迅速に、高精度で予測することができます。
- 電子系コンピュータ支援設計(ECAD)モデルをわずか数分で有限要素法解析(FEA)形状に変換し、FEA情報を構築して故障時期を予測できます。
- 多様な演算リソースで設計課題を分散、管理、解決、最適化する新しいアプリケーションファミリー、Distributed Compute Services(DCS)を使用して、オペレーティングシステムを評価できます。
- Mechanicalの2つの新しい効率化ワークフローを使用して、タイトにカップリングされた熱解析と構造場解析をシミュレーションすることができます。静的および非定常シミュレーションにより、熱負荷と構造負荷の相互作用を簡単にキャプチャーできます。
- Mechanicalを使用して逆解析を実行できます。逆ソルバーを使用すると、極端な負荷や変形が発生する前のモデルの形状を判別できます。これは「Hot-to-Cold」解析とも呼ばれます。
- Mechanical内部で使用できるANSYS GRANTA Materials Data for Simulationデータベースに、120の材料が追加されています。 必要に応じて電磁特性データも使用できます。
システム
ANSYS 2019 R3アップデートでは、予知保全の目的でANSYS Twin Builderを使用して、シミュレーションに基づくデジタルツインをより早く、より簡単に作成、検証、導入することができます。その結果、製品運用が最適化され、製品寿命が長くなります。電動化を前提に機能拡張されたTwin Builderを使用すると、バッテリー管理システムの高精度なシミュレーション、他の電動化アプリケーションに対応するデジタルツインの導入が可能です。今回のリリースでは、その他にもModelicaの機能拡張、新しい次数低減モデル(ROM)機能、改善されたエレクトロニクスコントロールモジュール(ECM)ツールキットなどが進歩しています。
ANSYS medini analyzeでは、機能安全分析の専門能力が、自動車と航空宇宙だけに留まらず、IEC 61508規格による標準化を必要とする工業装置まで拡張されています。プロセスハザード分析(PHA)、システム要件、システム設計をカバーする、一貫した安全度水準(SIL)管理が組み込まれています。安全側故障割合(SFF:Safe Failure Fraction)および診断カバレッジ(DC)計算を使用する、故障モード影響診断解析(FMEDA:Failure Mode Effect and Diagnostic Analysis)にも対応しています。
このリリースには、ANSYS VRXPERIENCEによる革新的なセンサーおよび音響シミュレーションに加え、仮想現実(VR)の新機能が含まれ、HMIからのSIL(ソフトウェア・イン・ザ・ループ)コネクターが提供されます。VRXPERIENCEには、理想的な地上検証データセンサーにおけるマルチバウンス対応のレイキャスティング、物理ベースのライダーの点滅および回転モデル、SPEOS Live Previewの形状移動が可能なダイナミックライブプレビューが含まれています。ANSYS SCADE SuiteとSCADE Displayの統合により、VRの中で組込みソフトウェアと簡単に対話することができます。

