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ANSYS BLOG

September 2, 2022

Nature Architects社がシミュレーション、ジオメトリ、メタマテリアルで、よりクリーンな未来を再構築

限りない想像力を持つ設計者であっても、利用可能な材料によって、またそれらの材料がいかに機能するかによって制限を受けることは少なくありません。しかし、必要な材料の機能を設計できるとしたら、どうでしょうか。Nature Architects社は、メタマテリアルを使用して振動、音響、熱伝導、変形、軽量化などさまざまな物理的機能を製品に組み込む形状設計ソリューションをメーカー企業向けに提供しています。

「メタマテリアル」とは、人工的に設計された幾何構造によって樹脂や金属といった材料の物理的機能を超えた機能を実現する構造物の総称です。メタマテリアルを利用すれば、従来の材料やコンポーネントでは不可能だと考えられていた高度な物理特性を実現することが可能になります。

メタマテリアルには、弾性変形によって機械的動作を生み出す構造も含まれています。たとえば、コンプライアントメカニズムと呼ばれる可動部などです。さらに、メタマテリアルを使用すると、従来は機械部品を組み立てたり異素材を組み合わせたりして実現していた高度な物理特性を、組み立てなしの一体構造で作り出すことができます。通常、これらは付加製造技術によって作られますが、場合によっては、射出成形、プレス成形、機械加工など、従来の製造方法も使用可能です。

このように、メタマテリアルを使用すると、組み立て部品数を増やすことなく、新しい物理特性を製品に組み込むことができます。メタマテリアルを使用すれば、設計者やエンジニアは、軽量化と剛性の強化など、設計要件における複数のトレードオフのバランスを取ることにより、従来の方法を越えることができます。

Ansysのシミュレーションソリューションを低価格で提供することによって初期段階のスタートアップ企業を支援するAnsysスタートアッププログラムのサポートにより、Nature Architects社は、シミュレーションを使用してこの新たな技術を進歩させ、未来を再構築するメタマテリアルや構造ソリューションを続々と構築しています。

新たな幾何次元のシミュレーション

2017年に設立されたNature Architects社は、設計者やエンジニアの力となって、従来の材料やコンポーネントの境界を覆す機能を持つ製品の設計を支援することを目指しています。  

メタマテリアルのユニークな機能をよく理解するためには、まず自然と物理の制約を認識する必要があります。この基本的な例は、ゴムやスパンデックスなど伸縮性のある材料で実証できます。ゴムバンドの両端を引っ張ると、細く、長くなります。機械工学においては、この概念はポアソン効果、つまり、力点または荷重の方向(この例では手でゴムバンドを引っ張る方向)に対して垂直方向の物質の変形の基礎です。ゴムバンドの場合、ポアソン比は、バンドが細くなって縮まる幅と、引っ張る方向に伸びる長さとの関係です。材料のポアソン比を知っておくことにより、応力に対する反応を再現可能な方法で予測することができます。

ただし、負のポアソン比を持つメタマテリアルを作り出すことにより、材料の期待とは異なる反応、不可能と考えられていた反応さえをも可能にする新しい特性を生み出すことが可能になります。ゴムバンドの場合は、これにより、両端を引っ張ったときに、細くならずに太くなる可能性があります。負のポアソン比で構築される材料は、オーセチック材料とも呼ばれます。

A hand squishing a squared structure filled with holes

穴の開いたエラストマーのシンプルな形状で、制御された座屈変形と人体への効率的適合を実現。

力学的メタマテリアルの構築にこの概念を統合することにより、Nature Architects社は、通常の材料で達成できるものを越える構造物を作り出すための、独自のDirect Functional Modeling(DFM)技術を開発しました。

たとえば、Nature Architects社では、メタマテリアルを使用することにより、ゴムからプラスチックへの材料置換を設計できます。具体的には、オフィスチェアのクッション部分を合成プラスチックハニカム構造で製作し、体圧を効率的に分散する柔軟性を実現します。適切な材料置換により、低コスト、成形性の向上による設計の改善、リサイクル性の向上、軽量化などの付加価値を創造できます。

Honeycomb structure made out of perforated plastic being bent by someone

エンジニアリングプラスチックプレートの穴あき構造が人体に従い、圧力を効率的に分散させるように変形。凹角ハニカム構造を含む対角ビームと適切に配置されたボックスで構成されており、複曲面を実現。

創造の可能性を高めることに加えて、メタマテリアルは、材料の使用量を増やすことなく機能を追加できるため、持続可能性に貢献する可能性も兼ね備えています。

Nature Architects社のCEOである大嶋泰介氏は、同社のDFM技術について、次のように語っています。「メタマテリアルのような革新的機能を表現する構造を逆算手法で組み合わせることにより、当社では高レベルの機能を実現できます。Ansysスタートアッププログラムのおかげで、当社では、スタートアップ段階ではコストがかかりすぎて実装不可能だったはずの高度なシミュレーションを使用でき、解析や設計のシステムを自動化、高度化し、当社が会社として対応可能な業界や問題の範囲を拡大することができました。」

大嶋氏と同僚のエンジニアたちは、シミュレーションを統合して、彼らが言うところの幾何学的設計における最大の課題、つまり新構造発見の自動化を実現しました。Ansys Mechanicalを構造解析および流体-構造連成解析に活用し、このチームは、シミュレーションタスクを自動化してワークフローを簡素化するスクリプト言語であるMechanical Ansys Parametric Design Language(MAPDL)を実装します。この自動化により、チームは数えきれないほどの新しい構造を可視化して探索することができます。エンジニアは、MAPDLを使用して、設計の最適化やアダプティブメッシングなどの機能を介して新しい変数やパラメータでモデルを構築することもできます。

Heat exchnager

Nature Architects社はAnsys Fluentを使用して格子構造における2流体の熱交換性能を解析。

大嶋氏は次のように述べています。「シミュレーションの自動化と非線形問題の処理の進歩のおかげで、当社はこの課題を克服するシステムを開発しています。当社には、Mechanical APDLを使用してDFM向けにカスタマイズ、自動化されたシステムがあります。ジオメトリ定義から解析、後処理まで、幅広い制約や要素から恩恵を受けています。」

さらに、同グループはAnsys Fluentを使用して格子構造における2流体の熱交換性能を解析し、熱交換器を設計することができました。

Nature Architects社の特徴的なDirect Functional Modeling技術は、典型的な外部コンポーネントなしで必要な動きを実現する幾何構造を使用して材料特性を改革。この動画では、バネや従来のような組み立てなしで作成されたユニバーサルフレックスジョイントについて説明している。

実際のソリューション

DFM技術は、必要な物理的機能に基づいて適切なメタマテリアル構造を即座に生成することにより、従来の機能モデリングの能力を強化します。DFMにより、Nature Architects社は、柔軟性、変形、熱伝導、振動吸収を含む、以前は実現不可能だったさまざまな物理的機能を製品に追加することができます。DFM技術は、自動車、航空宇宙、ロボット工学や、ファン、バネ、スイッチ、レバーを含むコンポーネントなど、運動を処理する製品で最も効果的に使用されます。これらのコンプライアントメカニズムの概念を覆すことにより、Nature Architects社のエンジニアは統合された構造によって必要な動きを生み出し、ヒンジ、ネジ、ボルトなど必要な外部の動作部品やコンポーネントを削減します。

コンプライアントメカニズムを使用して可動部品を単一のピースで作ることができれば、複数の部品も組み立て作業も不要となります。さらに、DFMでコンプライアントメカニズムが適切に設計されていれば、それらの機能をそのピースに統合し、同じ機能を単一のユニットで作り出すことができます。

Robot hand

通常はヒンジやその他の剛体メカニズムを含めて少なくとも30個の部品が必要なロボットハンドの可動部を、Direct Functional Modelingと組み立て不要な単一のコンプライアントメカニズムを使用して再現可能。

15名のチームであるNature Architects社は、最終製品を直接製造するのではなく、メタマテリアルとDFMソリューションをメーカーに提供し、多くの場合は開発に協力して製品設計をサポートしています。基本的に、Nature Architects社は、DFM技術を備えたソフトウェアモジュールを構築、操作して、顧客やプロジェクトごとに設計プロセスを自動化しています。

現在、Nature Architects社は、DFM技術を使用して、DFM PULSE、DFM TOUCH、DFM UNWELDの3つのソリューションを提供しています。それぞれ、振動、触覚、板金処理の機能を強化するものです。ソリューションの応用範囲は自動車から音楽機材まで多岐にわたります。

ある自動車部品会社は現在、DFM PULSEを使用してセンサー周りのコンポーネントの振動を分離し、大手空調メーカーと協力して空調システム用の防振コンポーネントを開発しています。ある建設会社はDFM UNWELD技術を統合して建築資材を製造しており、DFM TOUCHは、エンターテインメント業界向けの機材の開発に使用されています。

メタマテリアルはDFMソリューションの主要な構成要素であり、企業や用途のニーズに応じて幅広い特性を提供します。たとえば、前述したクッションパッドに使用される三角柱ベースのオーセチック格子構造は、自動車のセンサー周辺コンポーネントの応力を除去するかつてない剛性制御を持ち合わせており、振動を軽減するために実装することもできます。従来は、防振技術にはゴムやバネなどの外部コンポーネントによる弾性が必要でしたが、DFM技術ではこれらのコンプライアントメカニズムを他の材料で再現します。たとえば、DFM PULSEを使用してメタマテリアルで弾性特性を作り、ガラス、プラスチック、木材、金属を含むあらゆる複合材料や材料を変えることができます。

The letter N on a perforated piece of plastic

プラスチックの穴あきシートが防振の機能を果たす。このデモンストレーションでは、Nature Architects社は「N」のロゴを振動の発生源から分離。

オクテットトラスのような空間充填構造に加えて、メタマテリアルでは2次元構造の物理特性も強化することができます。これはつまり、幾何学的設計とメタマテリアルはAMや3Dプリントのプロジェクトに恩恵をもたらすだけでなく、射出成形やプレスを含む従来の製造法にも役立てることができるということです。

将来に向けての設計

Nature Architects社はすでにメーカー企業の注目を集めています。昨年の夏、同社は、世界中に拠点を置いて持続可能性を支える新しいエネルギー技術の開発と導入を促進している日本の国立研究開発法人、新エネルギー・産業技術総合開発機構から助成金を受けました。

今年の春には、Nature Architects社のチームはPlug and Play Japan社のアクセラレータープログラムを介してEXPO Startup Awardを受賞しました。Plug and Play社は、カリフォルニア州シリコンバレーに本部を構える企業イノベーションプラットフォームであり、世界中に拠点を置いてアクセラレータープログラム、投資、ネットワーキングを介してスタートアップ企業をサポートしています。Plug and Play社は、Google社、Dropbox社、PayPal社など、史上最も成功したスタートアップ企業のうちのいくつかと協力してきました。

大嶋氏は次のように語っています。「従来の製造法の使用に基づいて設計を革新することにより、当社は製品設計の効率を向上させ、製品に付加価値をもたらすことができます。Ansysのシミュレーションは、当社独自の設計システムにおける解析を自動化し、進歩させることに役立っています。」

Nature Architects社の詳細については、同社のWebサイトまたはYouTubeチャンネルを参照してください。Ansysスタートアッププログラムの詳細については、こちらで製品パッケージと資格情報をご確認ください。

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