Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
現在、月に関してどの程度解明されていると思いますか。月面の地質を研究している専門家に聞けば、特に月の南極地域に、まだ探査すべきものがたくさんあると答えるでしょう。月に水が存在する可能性については、多くの科学者や企業が高い関心を寄せています。月の水(水氷)は、溶融したり、水素と酸素への分離が可能であり、宇宙飛行士にとって不可欠な資源となります。
ただし、月のどの領域に氷が存在するかどうかを確認し、その場所を特定することは容易ではありません。月そのものに機器を送るだけでも高度なミッションですが、月の南極の地形は特に危険です。南極の大部分は深いクレーターで覆われています。その大半は常に暗闇に包まれ、極めて低温となるため、着陸、調査、航法は非常に危険なタスクになります。さらに、月震が発生する地域でもあるため、その過酷さは増します。
この課題に対処するためには新しい革新的な技術が必要ですが、この分野で台頭している企業の1つがIntuitive Machines社です。月へのアクセスを提供するという目標の一環として、Intuitive Machines社はNova-Cクラスの月探査機などの技術を開発し、アメリカでは50年以上ぶりの月面着陸となる初の民間企業による着陸に成功しました。
同社のチームは、探査機から展開可能なµNova Hopper(小型の推進ドローン)も開発しました。この技術は、月の神秘的な南極地域を調査して、水氷などの資源を探索するために設計されています。
Intuitive Machines社の月面データネットワーク担当チーフエンジニアであるJason Soloff氏は、µNova Hopperは月の南極における過酷な条件に耐えられるように開発されていると説明しています。µNova Hopperは、月の南極地域を覆う深いクレーターを横断し、通信できない状態でも自律的にミッションを実行して、尾根に戻り、収集したデータを共有できるように設計されています。
エンジニアや研究者たちは、この技術をさらに改良して運用することで、写真を撮り、南極の表土を掘り進め、土の組成を調べて、水が存在する証しがあるかを調べたいと考えています。こうした一連の技術は、月で水やその他の資源を探すというより広い目標の達成にも貢献します。
Intuitive Machines社のアビオニクスエンジニアであるJordan Reynolds氏は次のように述べています。「月の表土を掘り進め、そこに水が存在するか、存在する場合はどれほどの量があるかに関する自説を立証できれば、非常に喜ばしいことです。基地での居住や給油ステーションの建設も実現するかもしれません。」
現在、同社のチームは2つ目のミッションや、さらなるミッションに向けて準備を進めています。
月の南極への着陸は、Intuitive Machines社が掲げる目標の1つにすぎません。Soloff氏は次のように述べています。「当社は多様性の高い宇宙企業です。技術を進歩させ、宇宙経済の仕組みを変え、人類全体に開かれたものにすることを目指しています。」
たとえば、同社では、Nova-C探査機にmethalox(メタロックス)エンジンを採用することで、宇宙経済をより持続可能にすることを目指しています。methaloxは、液体メタンと酸素からなるクリーンな燃料です。この燃料は、月や火星で見つかった資源を利用して地球外で生成できる可能性があることで、宇宙産業で高い注目を浴びています。Reynolds氏は、月の南極で水を発見し、燃料を生成することができれば、「非常に重要で喜ばしい科学的成果になる」と述べています。同社は、この推進システムで大きな進歩を遂げています。Soloff氏は、最近のIM-1ミッションで、初めてmethaloxエンジンが深宇宙で繰り返し点火されたと話しています。
通信技術に関しては、同社は検証済みのシスルナ通信ソリューションであるLunar Data Network(LDN)も提供しています。このネットワークは、月面運用センター、世界規模で委託された衛星用アンテナネットワーク、そして開発予定の月面データ中継衛星を通じて、地球近傍の宇宙空間でのミッションをサポートしています。今後数年間で衛星の数が急増することが予想される中、シスルナ圏における通信インフラの必要性が高まっており、LDNが大きな役割を担うことになります。
Intuitive Machines社は、シスルナ圏を超える火星についても長期的な計画を立てています。これらのプロジェクトや技術を成功させるために、同社のチームはあらゆる設計を厳密にテストし、宇宙の過酷な環境に適応させる必要があります。そのために、同社は多くのAnsysのシミュレーションを導入しています。
Intuitive Machines社の探査機の写真。資料提供:Intuitive Machines社。
Intuitive Machines社は、資金とリソースが限られた小規模なスタートアップ企業であるため、シミュレーションが成功の鍵となっています。
Soloff氏は次のように述べています。「私たちにとってシミュレーションは力を増強させるものです。さまざまなアイデアを非常に迅速に試すことができます。」Soloff氏と彼のチームのメンバーは、シミュレーションを導入することで、問題の解決方法をより迅速かつ簡単にテストし、創造性を解き放つことができます。さまざまな着陸装置の設計やジンバルを使用するなど、「what-if」シナリオを仮想的にテストできます。そうしたシミュレーションの解析結果から得た情報を用いて、これらの変数の変更が全体的な応力、荷重、熱性能など、設計の重要な側面にどのように影響するかを簡単に確認することができます。
Reynolds氏によれば、同社のチームがシミュレーションを使用する場合は、Ansysのシミュレーションを使用してミッション全体で必要となる解析とテストを実行するそうです。たとえば、初期設計段階を見てみましょう。Soloff氏は、ここでは宇宙技術にとって質量の削減が重要となると指摘しています。その他の要件としては、機器が打ち上げ時にかかる力に耐えられるようにすること、そして探査機の片側には太陽の光が当たり、反対側は影になって温度が極端に低くなるなど、ミッション中に同時に受ける極端な温度に対応できることが挙げられます。シミュレーションを通じて、こうした要件をすべて最適化しました。Reynolds氏は次のように述べています。「当社が実行した解析によって、極端な温度変化に耐えられるシステムを熱と電力の両方から適切に設計できました。」
同社は、これらの計算を実行するために、デジタルミッションエンジニアリングソフトウェアであるAnsys Systems Tool Kit(STK)を使用しました。このソフトウェアの活用方法の1つは、太陽光線をモデル化して、探査機やホッパーに到達するタイミングや、光が機械に到達しないタイミングを調べることです。これは、地球上の実機試験では再現することが極めて難しい重要な知識です。さらに、シミュレーションを使用することで、熱解析を実行し、複雑な材料の中で熱がどのように移動するかを確認できます。これは、手作業では非常に時間がかかります。Soloff氏は次のように述べています。「これは現在のスケジュールでは、実行することはほぼ不可能です。そのため、シミュレーションツールによる解析に大きく依存しており、Ansysの製品群が最適でした。」
また、Ansysのシミュレーションが備えるマルチフィジックス機能も、導入した理由の1つです。Soloff氏は、同社は現在、「単なるアンテナパターンや振動および衝撃の構造解析だけではない、非常に複雑なマルチフィジックス問題」に取り組んでいると述べています。「私たちが必要とすることを実現する、統合されたモデルとシミュレーションツールを通じて、これらすべての物理領域を統合できます。」
宇宙を移動するIntuitive Machines社の探査機。資料提供:Intuitive Machines社。
Intuitive Machines社のチームにとってシミュレーションのもう1つの重要な用途は、通信システムが機能し、最適化されていることを確認することです。同社では、アンテナの適切な向きの確認から、さまざまな地上局や無線で生成されたスループットと帯域幅の比較まで、あらゆる分野の調査にAnsysのシミュレーションを活用しました。
これらの通信解析を実行するために、チームはここでもSTKを使用して、通信の強度、転送できるデータ量、予測される信号ノイズ、信号強度などを解析しました。Soloff氏は、シミュレーションソフトウェアとモデリングが複雑な電磁界解析の実行にどのように役立つかについて説明しています。たとえば、高周波電磁界シミュレーションソフトウェアであるAnsys HFSSと高周波(RF)シミュレーションを使用して、通信用のアンテナ、放射パターン、電磁放射を解析して最適化しています。
同社がシミュレーションを使用して技術を改善する分野は、これだけではありません。特に月の南極の画像は重要なデータポイントとなります。Reynolds氏は、シミュレーションソフトウェアを使用して、ミッション中に画像データを適切に収集して転送できるようにすることに重点を置いたと述べています。シミュレーションを使用して通信プロバイダーと連携することで、ミッションに最も理想的なサービスを特定できました。
Reynolds氏は次のように述べています。「月面ミッションを成功させるには、優れたチームワークが必要です。世界規模のミッションの準備にシミュレーションを活用できることは、大きな意味を持ちます。
STKは、広範な解析を同時に実行できるだけでなく、非常に動的なミッション条件に対応しながら実行できるようになります。当社が実行しているような宇宙ミッションでは、光、温度、速度、放射パターン、地形、軌道、信号強度などの条件が急激に変化します。エンジニアは、STKを使用することで、こうした変化をモデル化し、ミッション全体を考慮できるようになります。たとえば、私たちは着陸直後にSTKの地形モデリングと通信モデリングを使用して、探査機が着陸後に地球、太陽、月の系に対してどのように方向付けされているかを調査できました。」
地球の慣性軸(上)と月の慣性軸(下)を示すシミュレーション解析。資料提供:Intuitive Machines社。
Intuitive Machines社のチームは、シミュレーションソフトウェアを使用するさまざまな分野で、効率の向上が共通項となると考えています。Soloff氏は、シミュレーションなしでは数週間かかる解析が、Ansysのソフトウェアを使用することで、わずか数日で完了すると指摘しています。この効率化は非常に重要です。通常は問題を解決するのに数か月もかけることができず、数時間または数分で解決しなければならないからです。このような状況では、実証済みのAnsysのモデルを使用して答えを見つけ、情報に基づいた意思決定を迅速に行うことができます。これは、地球、太陽、および月がミッションにどのように影響するかという三体問題を正確に解くなど、非常に難しい計算にも当てはまります。
このスピードアップにより、ミッション中に情報に基づいた意思決定をリアルタイムで行うこともできるようになります。たとえば、Reynolds氏はリアルタイムシミュレーションを活用しています。「ミッション中に探査機から送られるテレメトリーを直接取り込み、それをSTKでシミュレーションして、状況を可視化して認識できるようになります。」研究者たちは、画面上でデータを状況に当てはめて考察する代わりに、モデルを通じてミッションの状況を迅速に理解できるようになります。これにより、予期しないことが発生した場合、素早く対応できるようになります。
もちろん、精度がなければスピードは無意味です。そのため、同社のチームにとって実証済みのテクノロジーは不可欠です。Soloff氏は次のように述べています。「これらのツールを使用することで、時間を短縮できるだけでなく、解析に対する信頼性が高まります。」Ansysのシミュレーションを導入することで、精度を犠牲にすることなく時間を節約できます。効率が向上することで、労力と限られたリソースをミッションの他の部分に割り当てることができます。Soloff氏は次のように述べています。「モデリングとシミュレーションがなければ、何も成し遂げることはできませんでした。」
Reynolds氏は、シミュレーションを使用することで、「あらゆるものをモデル化し、技術を改良するために余分な時間をかける必要がないという確信を得ることができます。」と述べています。シミュレーションを活用することで、Intuitive Machines社のようなスタートアップ企業にとって非常に貴重な時間を節約でき、より短期間で競争力を高め、ミッションに対応できるようになります。
夏の夜空の星を見つめる家族から、この分野で最先端の研究を行う科学者まで、さまざまな人が宇宙に対する好奇心を持っています。
Reynolds氏は次のように述べています。「宇宙は未知の世界です。宇宙に関してどのような知識を収集できるか、人間が何を知り、何を知らないかを理解することは大きな刺激となります。」Intuitive Machines社は、こうした謎を解明しようとしています。
Soloff氏は、地球上の資源は限られているものの、「太陽系は資源で満たされている」と語ります。そうした資源の1つは、Intuitive Machines社のチームが月の南極で探している氷の存在です。同社のチームは、こうした資源を見つけることで、宇宙の謎をより深く探求するために必要な資源の発見に貢献したいと考えています。
STKが宇宙ミッションにどのように役立つかご紹介します。
Ansys Advantageブログでは、専門家が投稿した記事を公開しています。Ansysのシミュレーションが未来のテクノロジーにつながるイノベーションをどのように推進しているかについて最新の情報をご覧ください。