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デジタルエンジニアリングでより安全なeVTOLシステムを設計

7月 18, 2024

1:00 Min

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Prem Andrade | Ansys、Distinguished Engineer
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自動運転は、製造、産業機器、自動車、そして航空まで、さまざまな業界でトレンドとなっています。その結果、高度なエアモビリティ(AAM: Advanced Air Mobility)を提供している企業は、救急医療、農業、防衛、産業、捜索救助などの多岐にわたるユースケースで、人や貨物をより効率的に輸送するためのさまざまなレベルの自律型航空機を開発しています。「都市エアモビリティ」(UAM: Urban Air Mobility)と「地域型エアモビリティ」(RAM: Regional Air Mobility)という用語は、多くの状況において同じ意味で使われますが、それぞれ都市部と郊外における低高度での航空輸送に焦点を当てたAAMのサブセットです。これらの自律型航空機は、一般に「無人航空機システム」(UAS: Unmanned Aircraft System)または「無人エアモビリティ」(UAM: Unmanned Air Mobility)とも呼ばれます。

AAMに新たに加わったテクノロジーとして、電動垂直離着陸(eVTOL)航空機があります。eVTOLは、潜在的な利便性に加えて、排出ガスと公害の削減につながる、よりクリーンな輸送手段をこの新しい市場にもたらすことで、持続可能性にも貢献します。eVTOLに関する関心と期待が高まる中、世界のeVTOL航空機市場は2030年までに234億ドルに達すると予想されています。実際に、「World eVTOL Aircraft Directory」(世界のeVTOL航空機登録簿)を管理するVertical Flight Societyは、現在世界中の400社を超える企業や開発者の900件以上の機体モデルが登録されていることを公開しました。

しかし、安全性の高いeVTOLを開発するには、複雑な設計、開発、製造、およびトレーニングが必要です。エンジニアリングシミュレーションは、そうしたすべての課題を解決します。自律型AAMシステムに対する信頼性を高め、安全性を検証し、確実性を担保します。AAM企業は、Ansysのソリューションを統合することで、マルチフィジックスシミュレーション、ソフトウェア設計、デジタルミッションエンジニアリングなどの要素を組み合わせた、シームレスでエンドツーエンドのワークフローを採用できるようになります。ここからは、ミッションの計画から、概念の選択、そして設計や運用まで、eVTOLのデジタルエンジニアリングの道のりを詳しく見てみましょう。

ミッション概念を選択して計画を開始

eVTOLのデジタルエンジニアリングは、ミッションの計画、概念の選択、そして安全性の検討から始まります。エンジニアや設計者は、デジタルミッションエンジニアリングソフトウェアであるAnsys Systems Tool Kit(STK)を導入することで、システムオブシステムズ(SoS)アプローチを用いてeVTOLのミッションを定義できます。このSTKプラットフォームでは、高解像度の地形データ、画像、無線周波数(RF)環境など、現実的で時間変化に対応した3Dシミュレーションで複雑なシステムをモデル化できます。この重要な知見は、予期しない事象や変化する条件を考慮しながら、より安全な航空機を設計するのに役立ちます。

また、ミッションの定義には、ミッションの能力、概念、および設計リファレンスミッション(DRM: Design Reference Mission)の評価が含まれます。DRMは、基本的には他のアセット、地形データ、気象条件を含むシステムオブシステムズ(SoS)におけるアセットの運用シナリオを捉える詳細な計画またはミッションプロファイルです。STKプラットフォームで捕捉されたDRMは、エンジニアや設計者が機体システム要件を満たし、計画されたミッションを確実に成功させる上で役立ちます。たとえば、eVTOLの設計では、他の航空機、衛星、基地局への接続など、新たな要件を考慮しなければなりません。

デジタルミッションエンジニアリングソフトウェアのAnsys Systems Tool Kit(STK)を使用して捉えたeVTOLの設計リファレンスミッション(DRM)

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Ansysのモデルベースシステムズエンジニアリング(MBSE)ツールは、システムアーキテクチャモデルやマルチフィジックスエンジニアリングワークフローと容易に統合できる。

次のステップでは、候補となる複数の構成についてトレードスタディを行い、どの概念が最適なシステム構成をもたらし、最も効果的、効率的、そして安全に動作するかを決定します。この評価で重要となるのは、システムアーキテクチャモデルです。このシステムアーキテクチャモデルは、プロジェクトに関わるすべての人にとって「信頼できる唯一の情報源」として機能します。Ansysは、リアルタイムの連携をサポートし、システムアーキテクチャモデルをエンジニアリング解析ワークフローと統合するために設計された、クラウドネイティブのシステムアーキテクチャモデラー(SAM)を提供しています。

MBSEソフトウェアであるAnsys ModelCenterを使用すると、STKプラットフォームで以前に定義した運用とミッションを捉え、そのデータを運用データとしてSAMに接続できます。これにより、システム全体、オプション、候補となる構成、初期システム動作を接続、記述、および説明することができます。

また、デジタル化された仕様書、解析方程式、伝達関数、次数低減モデル(ROM)などの解析モデルにSAMを接続することもできるため、トレードスタディを実行して、ミッション成功の要件を満たす初期システム構成を得ることができます。

より接続性の高いスマートなモデルが提供されることで、システムの機能安全とサイバーセキュリティアーキテクチャを調査できます。機能安全システム分析ソフトウェアであるAnsys medini analyzeなどのツールを使用すると、SAE InternationalのAerospace Recommended Practice(ARP)4754およびARP4761、アメリカ国防総省の軍事規格(MIL-STD)882Eシステム安全など、航空宇宙システムの規制基準に照らしてシステムをチェックできます。

STKで定義された運用とミッションは、モデルベースシステムズエンジニアリング(MBSE)ソフトウェアのAnsys ModelCenterと、Ansysのクラウドネイティブなシステムアーキテクチャモデラーを使用して、システムアーキテクチャモデルと接続される。

設計を統合して最適化

ミッションを確立した後は、モデルベースアプローチを導入して対象のシステムを設計し、回路モデルなどの忠実度の低いモデルを用いて、システムの物理的性質を捕捉できます。eVTOL設計において、モデル化する主な領域は、推進、飛行力学、センサー、さらにはガイダンス、ナビゲーション、制御システムなどです。さらにこの時点では、Ansysワークフローで重要な組込みソフトウェアのためのモデルベース開発環境であるAnsys SCADE Suiteを使用して、モデル化されたハードウェアとソフトウェアが同期していることを確認します。SCADEは、組込みソフトウェアのための開発環境であり、要件管理、モデルベース設計、検証、認定コード生成、そして他の開発ツールやプラットフォームとの相互運用性を提供します。

設計をより深く調査するために、Ansysのマルチフィジックスソリューションと忠実度の高いモデルを使用して、さまざまな運用条件下で3Dジオメトリコンポーネントがどのように振る舞うかを解析できます。たとえば、eVTOLの光学赤外線(EOIR)センサーを正確にモデル化するには、すべての要件を確実に満たすために、EOIRの運用時の電磁界、光学、熱、構造、空力の影響を考慮する必要があります。

より包括的で詳細な設計を実現するには、Ansysのマルチフィジックスシミュレーションツールが役立ちますが、特定コンポーネントの忠実度の高いモデルの解析と実行には長い時間がかかります。Ansysでは、シミュレーションワークフローを高速化するために、ROMを使用してモデルの複雑さを軽減する、人工知能(AI)と機械学習(ML)を活用した手法を提供しています。このAI/MLを活用する手法とROM機能は、プロセス統合および設計最適化ソフトウェアであるAnsys optiSLang、シミュレーションベースのデジタルツインプラットフォームであるAnsys Twin Builder、クラウド対応の生成AIプラットフォームであるAnsys SimAIに組み込まれています。ROMは、より迅速かつ簡単に統合して、Model-in-the-Loop(MIL)およびHardware-in-the-Loop(HIL)解析を実行できます。そのため、eVTOLセンサー、機体ダイナミクス、推進システムのROMは、忠実度の高いモデルよりも簡単に統合して、誘導、航法、制御システムを検証できます。

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Ansys optiSLangの感度解析により、振動の問題を特定し(左)、よりスムーズな飛行を実現するために対処した(右)。

ミッションの妥当性確認、運用、そして維持

eVTOLのデジタルエンジニアリングの最終段階では、初期DRMに対して統合システムをモデル化し、ミッション成功基準を満たしているかどうかを確認できます。

最後に、eVTOLの運用開始後は、アセットからの遠隔測定データをデジタルツインに入力して、健全性の予測管理と保守を行えるようになります。たとえば、デジタルツインを使用して、電流/電圧の振る舞いを監視することで、バッテリの状態を予測できます。

STK、SCADE、およびTwin Builderプラットフォームを使用した仮想環境での検証と妥当性確認により、飛行テストと性能の最適化、故障の予測、先を見越したメンテナンスが可能になります。

デジタルエンジニアリングとAI/MLで自動運転を実現

Ansysのソリューションを導入することで、さまざまなレベルの自律型AAMシステムを開発できるようになります。Ansysのデジタルミッションエンジニアリングおよびマルチフィジックスシミュレーションと、AI/MLを活用したモデリング手法を組み合わせることで、現実に即した高精度の3D環境でeVTOLをより効率的に開発し、妥当性を確認できるようになります。

Ansysのマルチフィジックスソリューションの詳細については、無料の製品トライアルをご覧ください。Ansysのシステムオブシステムズ(SoS)シミュレーションを体験するには、STKプラットフォームの無料トライアルオプションをご覧ください。

Ansysの自律性ソリューションの詳細については、オンデマンドウェビナー「Ansys Autonomy: モデルベースのソフトウェアソリューションによる組込み計画および制御の自動化」に登録ください。

SimAIプラットフォームを導入してさまざまな業界の設計を変革する方法については、ブログ「チップから船舶まで: Ansys SimAIプラットフォームで設計を最適化」をご覧ください。


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Ansys、Distinguished Engineer

Prem Andradeは、仮想環境での製品開発におけるデジタルトランスフォーメーションを推進しています。エンジニアリングに対する確固たる考えをもって、仮想シミュレーションを活用しながら、多分野にわたるエンジニアリングチームを率いてきた経験豊富なリーダーです。Premは、エンジニアリングシミュレーションの分野で25年以上の経験があります。流体、熱、電磁界、システムエンジニアリングの分野の専門家を育成し、チームを立ち上げてきました。インド工科大学ボンベイ校で機械工学のB.TechおよびM.Techの学位を取得しています。

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