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ANSYS BLOG

February 14, 2023

東芝デバイス&ストレージ株式会社様事例

モデルベース設計を活用し、シミュレーションベースのデジタルツインによる車載半導体の検証時間大幅短縮を実現

車載用機器は、電動化により年々複雑化しています。機器メーカーは、技術的な需要に応えるため、設計の予測インサイトを捉え、製造までの時間を短縮し、プロトタイプのコストを削減するようシミュレーション主導の開発を推進しています。

自動車システムの電気部品や電気回路を扱う場合、システムの信頼性を保つには設計フェーズで熱と電磁干渉(EMI)を正確にシミュレーションすることが重要です。ただ、これら特性を正確にシミュレーションするには、詳細な半導体デバイスモデルをシステムへ組み込む必要があり、一般的には長時間の解析が必要となります。

東芝デバイス&ストレージ株式会社では、モデル縮退技術Accu-ROM™を開発しAnsys Twin Builderへ組み込むことでこのプロセスを効率化するソリューションを構築しました。Accu-ROM技術は、デジタルツイン技術と組み合わせることで、半導体デバイスをシステムへ組み込む際の熱およびEMIのシミュレーションと検証をスピードアップします。

Twin Builderにはこの新しい技術が組み込まれており、不要な計算をなくしてシミュレーション時間を約90%短縮し、検証時間を6倍スピードアップします。

共同での取り組み: シミュレーションとデジタルツイン

東芝デバイス&ストレージでは、車載用インバータ、バッテリー管理システム、モータ駆動装置を中心に、自動車の電動化に不可欠な半導体製品を幅広く用意しています。これら製品の用途には、電動パワーステアリング(EPS)、電動ウォーターポンプ、電動エアコン用ファンなどがあります。

Toshiba automotive

東芝デバイス&ストレージのさまざまな車載製品とアプリケーションをご紹介します。

これまで、東芝デバイス&ストレージは半導体のモデルを単体で提供していましたが、実際の検証ではこれら構成部品を搭載したシステム検証が必要となります。そのため、この負担を軽減し、半導体デバイスのモデルを単体ではなく、基板やヒートシンクを含むシステム全体をリファレンスモデルにしてお客様へ提供したいと考えました。

東芝デバイス&ストレージのエンジニアチームは、MBD技術を用いたシステム検証により、スピードアップを図りながら、設計上の課題を解決できると確信していました。それを実現したAccu-ROM技術の開発にはTwin Builderを採用しました。それはTwin Builderが物理現象とデータによるシミュレーションベースのデジタルツインを作成できるオープンなソリューションであるからです。

特に次数低減モデル(ROM: Reduced Order Model)機能により、他のAnsysツールで解析した結果に基づき、低次元化したモデルを生成することができました。さらに、これらのモデルをTwin Builderへ簡単に接続できる点も、システムレベルのシミュレーションを実現する重要な要因となりました。

東芝デバイス&ストレージ株式会社デバイス&ストレージ研究開発センターのパッケージソリューション技術開発部フェローの岡野資睦氏は次のように述べています。「Ansys Twin Builderは、他のAnsysツールと連携して電気、熱、機械要素を考慮したシステムシミュレーションを構築でき、SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)やVHDL-AMS(Very High Speed Integrated Circuit Hardware Description Language for Analog and Mixed Signals)などの共通フォーマットを読み込めるため、弊社の問題解決の要件を満たしていました。」

ROM Ansys diagram

Twin Builderは、Ansysの構造、流体、電磁界、半導体製品から生成されるROMを使用して、機械アセンブリ、熱ネットワーク、電磁アクチュエータ、シグナルインテグリティなどの幅広いアプリケーションをモデル化します。

従来の単体による物理シミュレーションで検証する場合、具体的な条件の限られたものになる傾向があり、その範囲の中でのみの検証となってしまいます。

一方、システムレベルでマルチフィジックスシミュレーションを用いれば、電気システムや機械システムなど複数の要素を同時にシミュレーションすることができます。つまり、実際の運用で生じる負荷の下でリアルタイムに検証を実行できるため、最適化が向上します。

さらに、さまざまな要素を取り込むシミュレーションでは、解析時間がかかり設計や検証の期間も長くなっていましたが、Accu-ROM技術によるMBDアプローチにより検証プロセスを効率化します。

車載検証などに関する注目の話題

Accu-ROM技術は従来の技術と異なり、メカプラントを検証し縮退してから電気回路を含むシステム全体を検証します。このアプローチにより、電気回路検証時に不要なメカプラントの計算を省略することができます。

Spice model diagram Toshiba

この図(東芝デバイス&ストレージのSwitched Mode Power Supply Libraryで入手可能)は、アクティブクランプDC/DCのSPICEモデルを表しています。

さらに電気回路を個別に評価することで、SPICEモデルからVHDL-AMSモデルが自動的に生成されます。VHDL-AMSモデルを使用することで、熱やEMIノイズなどに必要なパラメータを絞ることができるため、検証プロセスが効率化されます。

このように東芝デバイス&ストレージでは、Accu-ROM技術を使用し放熱性の優れた低ノイズの車載用半導体の開発を進めており、それら技術を共有することでお客様による東芝デバイス&ストレージ製品の使用やシステム検証も容易になります。Accu-ROM技術は、家電や産業機器など他用途の半導体にも有効です。

この技術は、用途を問わず、各業界のエンジニアや設計者が電気、熱、機械部品を含むシステムレベルの最適化を行うために、熱やEMIを短時間かつ高精度でシミュレーションする場合に役立ちます。

岡野氏は次のように述べています。「シミュレーションは、高性能製品の開発に有用です。また、MBD用のシミュレーションモデルを開発してお客様に提供することで、弊社製品の妥当性確認にかかる時間やコストを大幅に削減できます。その結果、ビジネスの観点からも弊社製品の魅力が向上していると思います。」

東芝デバイス&ストレージのエンジニアからは、Twin BuilderとAccu-ROM技術により、システム運用のシミュレーション時間が90%削減された、検証時間が30日から5日に短縮されたといった大きな成果が報告されています。

知見による先見性

Twin Builderは、Ansysの構造、流体、電磁界(EM)、半導体向け製品から生成されるROMを使用して、機械アセンブリ、電磁アクチュエータと機械、回路とケーブル寄生、熱ネットワーク、およびシグナルインテグリティをモデル化します。また、サードパーティの各種ツールからROMを取り込むことができます。

岡野氏は次のように述べています。「Ansysは、電気システム、熱システム、機械システムなどのさまざまな物理現象を正確にシミュレーションできるツールを備えており、これらのツールで得られる特性を単一のシステムに取り込み、シミュレーションすることができます。」

Accurom screenshots

Accu-ROMには、Ansys Customer Portalの[Downloads] > [Current Releases]からアクセスできます。

Twin BuilderにAccu-ROMをインストールするには、Ansys Customer Portalにアクセスし、[Downloads] > [Current Release] > [Add-On Packages] > [Accu-ROM Electric Power Steering System]を選択します。

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