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「モータ」という言葉を聞くと、自動車が思い浮かびます。実際には、モータは至る所に使われており、電源に接続されて動く機器には、少なくとも1つのモータが使用されています。たとえば、自動車、飛行機、電動工具、フィットネス機器、家電製品(冷蔵庫、電子レンジ、ブレンダー、冷却ファンなど)、産業機器、ポンプ、HVACユニットなどが挙げられます。
モータが広く使われている現代では、毎日多くのエンジニアが、ブラシレス永久磁石(BPM)モータ、誘導モータ、同期モータ、外部ロータモータ、同期リラクタンスモータなど、さまざまなモータのより効率的な新しい設計に取り組んでいます。電動モータのマルチフィジックスシミュレーションに特化したAnsys Motor-CADは、マルチフィジックス技術を使用してモータ設計の電磁界的/熱的/機械的側面を同時に処理できるモータ専用のシミュレーションソリューションを提供し、こうした取り組みにおいて重要な役割を果たしています。
Motor-CADソリューションの最新リリースでは、柔軟性が向上し、イノベーションを推進する可能性が広がりました。これらの改善は、Motor-CADに組み込まれたPython駆動のアダプティブテンプレートという主要な強化機能によって実現されています。
モータの設計に取り組んでいるエンジニアは、テンプレートを開始点として使用することで、毎回ゼロからプロジェクトを始める必要がなくなります。多くの場合、テンプレートは、特定の設計ニーズに応じてカスタマイズして使用します。革新的なモータを設計し、競合他社よりも優位に立つには、カスタマイズが必要です。
Motor-CADソリューションは長年にわたり、さまざまなモータ設計に対応するテンプレートが提供してきましたが、現在まで、これらの設計のカスタマイズは手動で行われており、自動化されていませんでした。エンジニアは、形状の図面交換フォーマット(DXF)の線画を準備してから、それをMotor-CADにインポートして、シミュレーションを実行し、その動作を確認することがありましたが、インポートされたDXFは、寸法がパラメータ化されていなかったため、感度解析や最適化などのパラメトリックスタディには使用できませんでした。限定的なスクリプト機能により、パラメータ化されたノード、線、円弧を設計に追加することはできましたが、より複雑な変更は容易には実行できませんでした。
要するに、モータ設計は主に手動で行われていました。変更を加えるには、時間のかかる手動の繰り返し作業が必要でした。自動化されていなかったため、設計をスケールアップしたり、形状の改善を検討したりすることが困難でした。カスタマイズした設計を別のモータに再利用することもできませんでした。
しかし、アダプティブテンプレートによってすべてが改善されました。
Motor-CADソリューションのアダプティブテンプレートは、こうした設計上の問題を解決します。エンジニアはアダプティブテンプレートを使用することで、ジオメトリ生成の自由度を高めるとともに、追加のツールや専門知識を必要とせずにモータのカスタマイズを行うことができます。アダプティブテンプレートは、カスタマイズと組込みテンプレートの使いやすさの両方の利点を併せ持ちます。アダプティブテンプレートの利点には以下のものがあります。
アダプティブテンプレートは、Motor-CADに組み込まれたPythonスクリプト機能を使用して変更できます。Pythonスクリプトを用いてモデルパラメータを変更することで、アダプティブテンプレートを作成し、それを後で再利用できるように保存できるため、モータ設計プロセスを加速させることができます。
ロータにノッチを追加するスクリプトを備えたPythonエディタの例
操作は、Motor-CADのエディタ機能を使用してモータのジオメトリを表示するだけで簡単に行えます。次に、[Adaptive Template]タブをクリックすることで、新しいPythonスクリプトを挿入し、モータのパラメータを変更することができます。
たとえば、内部永久磁石同期モータ(IPMSM)のロータに三角形のノッチを追加して、コギングトルクとトルクリップルを軽減し、騒音、振動、ハーシュネス(NVH)を改善したいとします。これらの新しいパラメータを含むPython行を事前に記述して追加すると、指定した通りにロータ設計が自動的に変更されます。モデルの視覚的な変化を通常の半径方向ビューで確認できるほか、パラメータテーブルに新しいパラメータ(ノッチ角度、極ごとのスイープ数、深さなど)が反映されていることも確認できます。このアダプティブテンプレートは、追加の変更が必要な場合に備えて、再利用できるように保存することができます。
Ansys Motor-CADのアダプティブテンプレートを使用し、IPMSMのロータにノッチを追加することで、トルクとNVHの最適化を行った。
Motor-CADのアダプティブテンプレートをさらに強化するために、モータの電磁界的/機械的/熱的物理特性を組み込み、設計精度を最大限に高めることができるようにしました。
一般に、ほとんどのモータ設計では、電磁界が基本的なジオメトリをベースとした出発点となります。Motor-CADでは、トルク、出力、損失、電圧、電流、インダクタンス、鎖交磁束量および電磁力の計算を含め、モータのプロトタイプ設計に対する様々な電磁界特性試験が迅速に行えます。アダプティブテンプレートを用いて変更を加えると、2D有限要素法解析(FEA)ソフトウェアは、その変更を反映したアダプティブジオメトリを直接解析します。つまり、DXFジオメトリをインポートして使用していたのと同様に、テンプレートで変化したジオメトリを実際のジオメトリとして使用することになります。しかし、現在では、メッシュ生成、材料、巻線設定などがすべて自動化されています。電動モータでは、渦電流によるAC巻線損失も特に重要であり、高周波数では無視することができません。Motor-CADには、ハイブリッドFEAとフルFEAという2つのオプションがあり、どちらも自動化されているため、容易に切り替えて使用できます。
また、デューティサイクル計算、システムモデリング用の効率マップエクスポート、NVH解析などをサポートするMotor-CADソリューションのLabモジュールは、すべてのアダプティブテンプレートで有効です。
湾曲した磁束バリアを有するシンクロナスリラクタンスモータ(SYNCREL)のFEAによる磁束密度解析結果(上)と効率マップ(下)の表示(Motor-CADを使用)
モータの2つの性能分野(ロータ応力解析とNVH)においては、構造シミュレーションおよび解析が重要となります。電磁界モジュールで設定したジオメトリは、2D FEAベースの構造モジュールと共有され、これにより、追加設定なしでロータ応力を直接解析することができます。同様に、NVHについても、すべての自動化とワークフローでアダプティブテンプレートを使用します。ロータにノッチを追加したIPMSMの例に戻ると、ステータフレームに作用する最適化された電磁力は、新しいアダプティブジオメトリに基づいて計算されます。その電磁力データはNVHモジュールと共有され、これにより、NVHの改善効果を効率的に検証することができます。
また、定常状態および過渡の動作条件下でモータの各部の温度を計算し、数秒の計算で熱的挙動を正確にモデル化することができます。湾曲した磁束バリアおよび形状が更新された下の画像で分かるように、アダプティブテンプレートは、熱モジュールとも連携して機能します。
湾曲した磁束バリアを有するSYNCRELに対し、熱モードでアダプティブテンプレートを適用し、熱特性を更新した。
熱伝導などの現象がコンポーネント間のインターフェースに依存する熱モジュールは、小さなカスタマイズの影響をそれほど受けません。熱に関する大規模なカスタマイズを行うユーザーには、引き続き熱回路のカスタマイズを推奨しています。ここで留意すべき重要な点は、アダプティブテンプレートを使用して変更を加えると、その新しい形状の断面積が再計算されるため、新しい形状に基づいて質量や重量の計算が行われ、これらのパラメータが熱モジュールに渡され、入力質量と容量などの計算に使用されることです。
Motor-CADのアダプティブテンプレートは、今後のリリースにおいてさらなる機能強化が予定されています。リリース公開時には、新機能をぜひご確認ください。
また、Motor-CADソリューションのアダプティブテンプレートの使用方法をデモでご紹介するウェビナー、Ansys Motor-CADのアダプティブジオメトリテンプレートもぜひご覧ください。
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