Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
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Ansysブログ
November 22, 2023
各国のリーダーは、2050年までに世界規模で脱炭素化を実現するという大胆な目標を設定しました。地球の温暖化が進む中、世界のエネルギー消費量は依然として増加しており、現在では、このエネルギー消費のほとんどが化石燃料に由来しています。この厳しい現実は、再生可能エネルギーを使用して生成されるグリーン水素を含む脱炭素化のトレンドの波を生み出しました。
なぜ水素なのでしょうか。水素は、宇宙で最も豊富に存在する最も軽い化学元素であるため、将来、経済的な燃料となる可能性を秘めています。さらに、燃焼時にCO2を排出せずに、水を生成するグリーン水素は、気候変動に寄与することはありません。また、汎用性のある水素は、産業輸送、鉄鋼やコンクリートの生産、食品加工、水素燃料電池を動力源とする自動車など、多くの用途で化石燃料の代替として利用されています。
Schaeffler社では、グリーン水素エネルギーチェーンの両端で使用される技術を検討しており、具体的には、再生可能エネルギー源の使用時に有利なプロトン交換膜水電解(PEMWE)による水素生産と、水素を消費して発電する燃料電池に注目しています。この分野における専門知識を活用しているSchaeffler社は、自動車および電力業界向けのPEMWEスタックや燃料電池など、さまざまな分野や部門にわたる技術の開発をAnsysのシミュレーションソフトウェアを用いて行っています。
Schaeffler社の成形能力と、Ansysの流体最適化ソリューションを組み合わせて活かすことで、最適化されたバイポーラ板構造を含む優れたスタックハードウェアを開発し、効率的な水素生産を実現することを目指しています。
Schaeffler Technologies社で水素シミュレーションスペシャリストとして活躍するPavlo Lyubarsky氏は、次のように述べています。「私たちは、Ansysのシミュレーションを利用して、電解槽の開発と性能向上に取り組みながら、産業システムに関連する製品の挙動を予測しています。シミュレーションは、効率向上を実現するとともに、経験的な評価や実験では得られない知見をもたらすため、私たちにとってはデジタル拡大鏡のようなものです。」
Schaeffler社のK100 PEM電解槽スタック
Schaeffler社のPEM電解槽スタックのポートフォリオ
水素は、電流によって液体水を水素ガスと酸素ガスに分解するプロセスである電解によって抽出されます。PEM水電解槽で使用され、生産された水素は、トラックや列車などのさまざまなモビリティ用途や産業用途に利用されます。水素ガスは、燃焼させて従来の金属の熱処理にも使用できますが、グリーンスチール製造プロセスの還元剤としての新しい用途もあり、石炭や化石燃料の代替となります。
Schaeffler社では、数値モデルの制約内で水素生産時の電解槽性能をより深く理解するため、スタック開発中にPEMWEを解析しています。これらのモデルの簡略化は、誤った知見や望ましくない設計結果を得ないように慎重に行う必要があります。Schaeffler社は、シミュレーションモデルを適切に定義するとともに、境界条件を正確に設定することで、設計案の評価、PEMセルおよびスタック全体の圧力損失の評価、温度分布の推定、さらにホットスポットの特定に取り組むことができます。この取り組みにより、研究開発時間と運用コストを低減し、最終的にはより優れた製品を開発できるようになります。
PEM電解による水素生産の原理
Schaeffler社が製品の解析で重視している点は、PEMをまたぐ活動を理解することです。PEM電解中、PEMは、水分子が分解される際に水素と酸素間で起こる交換で水素イオンを通しますが、しかし、この膜の両側に高い圧力がかかるため、いくらかのクロスオーバーが発生し、電気分解に使用された水の一部と水素陽子が再結合して分離プロセスを妨げます。これは、最終製品における水素/酸素の不均衡を引き起こす電気分解の避けられない部分です。
このチームは、数値流体力学シミュレーションソフトウェアAnsys Fluentを使用して、水素と酸素の比率を電気分解の副生成物として測定し、特定のマージンを超えた時点でテストを中止しました。この解析は、安全性のしきい値を超えているかどうかを判断するために、Schaeffler社がセル膜の反対側で繰り返される活動に関して測定している重要な安全パラメータの1つです。
形成されたバイポーラ板のサブセクション内の水流場(Fluentで作成)。この画像によって、水流速分布が分かる。
フルセルスケールでの詳細な熱特性は、Fluentを用いた共役熱伝達解析(CFD-CHT)を行って、モデル化された。セルの断面における温度分布を示したこの図の中央には、高温のCCMが示されている。
電解槽の設計を最初に解析した後に、その適用範囲について疑問が残ることがあります。たとえば、電気化学種の結合や混相流に関しては、電解槽の出力範囲を拡大するために、シミュレーションを利用して、さらに徹底的な調査を行う必要がある場合があります。
このチームは、Ansysのソフトウェアを用いたさまざまなシミュレーションワークフローを使用して、水素生産に最も大きな影響を与えるパラメータを特定する方法など、多くの重要な課題を解決しました。この評価により、セル壁の厚さ、供給水の温度、排水の温度など、他の課題についての最適化も進めることができました。冷却ループがある場合、流入温度と流出温度の論理的な相関関係はどうあるべきでしょうか?つまり、エネルギー効率は入念な設計だけでなく、特に動的な用途における運用戦略の正確な評価によっても達成できるのです。
Schaeffler Technologies社のシニアスペシャリストであるKay Juckelandt氏は次のように語っています。「私たちは、局所的なホットスポットを含め、システムの内部からは分からない、水の入口と出口の温度などの要素をシミュレーションしています。また、すべての圧力を測定していますが、水の純度に関しては継続的に測定しています。これは、水中にイオンが存在すると、スタック内に腐食が発生し、製品の不具合につながる可能性があるからです。このようなことやその他の局所的な影響は、通常、測定することができませんが、シミュレーションを使用すれば、観察することができます。これは、メリットの1つであり、以前は実現できなかった、あるいはかなりの労力をかけなければ実現できなかったことです。」
画像は、形成されたバイポーラ板の供給水の流れ場を示している。流れの構造の最適化研究は、水理設計を改善するために、Fluentのアジョイントソルバーを用いて行われる。
Schaeffler社のチームは、Ansysのサポートを有効活用しています。このサポートは、CFD分野でポストプロセスを改善する際に特に有効であり、機能とユーザーインターフェースをより深く理解することで、貴重な開発時間を節約することができました。
Lyubarsky氏は次のように述べています。「私がAnsysのシミュレーションソフトウェアについて最も気に入っている点は、このソフトウェアがさまざまな物理現象に対応していることです。統合ツールチェーンを構築して、設計者にガイドラインを効率的に提供するとともに、成果を上げ、製品を改善することができます。Ansysの製品は、私たちが必要とするすべてのデータを高い精度と効率で処理し、解析することで、当社に大きなメリットをもたらします。」