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Continental社、シミュレーションを活用して自動車レーダーシステムの精度向上を実現

12月 09, 2024

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Laura Carter | Ansys、企業コミュニケーションマネージャー
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完全な自動運転車の普及における最大の課題は、自動運転システムに人間のドライバーと同等の認識レベルを持たせることです。自動車メーカーは、高度なカメラ、レーダー、LiDARセンシング技術、機械学習、人工知能を組み合わせることで、自動運転車の実現に向けて取り組んでいます。すでに広く採り入れられている先進運転支援システム(ADAS)もこの取り組みに含まれており、より安全に車両を運転できるように設計されています。

しかし、こうした自動運転に関わる技術は、予期しない事象によって制限されることがあります。たとえば、レーダーシステムに影響を与えるような機械的故障もそうした制限のひとつです。Continental社は、Ansysのソフトウェアを活用することで開発中の課題を解消し、レーダー機能に影響を与えるゴーストなどの要因を特定し、製品を市場に迅速に届けることができるようになりました。

仮想テストでシステムのエラーを解消

自動車用レーダーは電磁波を使用して、進行方向にある物体を検出します。電磁波が物体に当たると、その一部はエネルギーとして物体に吸収され、残りが反射して車両に戻ります。その情報は、検出、距離測定、追跡、および周囲の物体を感知するセンサーシステムによって解釈されます。この仕組みにより、ADASおよび自動運転技術は車両が走行する環境を把握します。

自動車レーダーにおいて、最も高度な課題の1つはゴースト現象です。ゴースト現象は車両から物体への電磁波の進行経路が、特定の物体や車両シャーシ内部によって影響を受け、複数の経路反射が生じるときに発生します。

電磁波の一部は、これらの物体から反射して車両のレーダー受信機に入力されます。つまり、電磁波は意図したターゲットに到達せずに、誤って解釈されます。この誤って解釈された電磁波が、その後の信号処理の基礎となり、機械学習や信号追跡を含む処理を行うことで、自律機能が正確に作動しなくなります。

補正は一見簡単に見えるかもしれませんが、ターゲットとレーダー間でエラーを引き起こす複数の間接反射の原因は簡単に特定することはできません。Continental社は、高周波電磁界シミュレーションソフトウェアであるAnsys HFSSを活用して、これらの反射の正確な位置または根本原因を特定し、不要な信号を排除するために必要な吸収材の適切な量を決定しました。

Continental社の電磁界シミュレーションチームの共同責任者であるYadhu Krishnan M K氏は、次のように述べています。「当社では、レーダーが車両内に統合された後、ゴーストターゲットに寄与するさまざまな問題に対処するためにシミュレーションを活用しています。シミュレーション主導の設計をワークフローに統合することで、 設計調査からプロトタイプまでの開発プロセスを加速させ、 市場投入までの時間を短縮し、コストを削減することを目標としています。」

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レーダーなどのセンサーに基づく環境認識は、運転支援や自動運転の実現に不可欠となっている。

Ansysのソフトウェアを活用して、レーダーの複雑さを段階的に軽減

レーダーの基本的なコンポーネントは、 アンテナアレイ(複数の接続されたアンテナで構成される放射システム)です。これらは、電波を送受信するために連携して動作します。Continental社のエンジニアは、Ansys HFSSを活用して、設計のすべての要素を最適化し、プロトタイピングや測定などの手作業を削減しています。これは、「段階的に取り組み、内在する複雑さに正確に対処する」というYadhu氏のアプローチに基づいています。

設計が完了すると、 レーダーシステムはバンパーの背部に設置されます。ある事例では、レーダーに隣接する二次的な表面が、レーダーから発信される電磁波の性能に影響を与えていることが分かりました。ここでの課題は、レーダーの性能がダッシュボードや装飾パネルによってどのように低下しているかを把握することでした。

Yadhu氏は次のように述べています。「取付けを検討する際には、シャーシの影響も考慮する必要があるため、シミュレーションはより複雑になります。この例では、電磁波はセンサー、ダッシュボード、さらにはシャーシの間で複数の反射を受け、散乱やゴーストなどの事象を引き起こしています。」

こうした事象を解決するためには、複数の最適化を実行する必要があります。具体的には、バンパーへの塗装層の適用を変更したり、基準の主要な性能指標に準拠するようにセンサーの位置を調整したりする必要があります。

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衛星レーダーによる車両周囲360度の全方向カバレッジ

シミュレーションでクロストークを解消

ここまでは、1つのセンサーの性能について説明してきました。しかし実際には、車両には多数のセンサーや電子機器が搭載されており、それらは互いに通信する場合があります。これは、クロストーク( 電磁干渉)と呼ばれる現象です。クロストークは、レーダーの性能を低下させる可能性があります。

Yadhu氏は次のように述べています。「レーダーの統合は、電磁波が反射によって電磁散乱を起こしやすいため、非常に難しい課題です。この課題は、無線周波数を扱うエンジニアを悩ませています。電磁界シミュレーションは、複雑な反射の影響や、車両の認識に影響を及ぼす複数のセンサーと電子機器の間で発生するクロストークと電磁干渉を理解するために役立ちます。」

次のステップでは、さらに視野を広げて運転環境を考慮する必要があります。たとえば、走行中の道路で他の車両のセンサーシステムとクロストークが発生する可能性もあります。Continental社では、こうした相互作用に対応するために、自律センサーシミュレーションソフトウェアのAnsys AVxcelerate Sensorsを活用しています。

AVxcelerate Sensorsを使用することで、仮想環境でレーダーの性能テストを実施して、影響を考慮した車両の認識を確認することができます。これにより、クロストークだけでなく、障害物検出や気象事象にも関連するレーダー性能を検討できます。たとえば、雪に覆われたバンパーが車両のレーダーから発信される電磁波にどのように影響を与えるかを確認することもできます。

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包括的なクラウドベースのワークフロー

クラウドベースのワークフローにより、Continental社はハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)環境で課題に迅速に対応できるようになりました。

クラウド上でAnsys HFSSを実行することで、エンジニアは大規模なシミュレーションをより高い精度と速度で実行できるようになりました。実際に、クラウドベースのシミュレーションは、従来と比較して18倍速く実行できました。シミュレーション時間の短縮により、全体のプロジェクト時間も短縮され、生産性と効率が向上し、大幅なコスト削減につながりました。

現在、Continental社はAnsysのシミュレーションを実行するために、オンプレミスの単一ノードマシンやオンプレミスのHPCクラスタ、さらにはクラウド上のリソースなど、さまざまなリソースを活用しています。これにより、必要に応じて処理能力を倍増させることが可能です。設計の複雑さが増してく中、Continental社は増加するリソースの需要に対応するため、クラウド利用の拡大を見込んでいます。

こうした取り組みは、 Continental社に大きな成果をもたらしています。複数のプロジェクトにわたる数百の製品ラインにAnsysのソフトウェアを活用することにより、車両テストにかかるコストを削減することができます。さらに、将来的にはシミュレーションの成果を製品化し、新たなビジネスチャンスを創出することもできるでしょう。

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「当社では、レーダーが車両内に統合された後、ゴーストターゲットに寄与するさまざまな問題に対処するためにシミュレーションを活用しています。シミュレーション主導の設計をワークフローに統合することで、 設計調査からプロトタイプまでの開発プロセスを加速させ、 市場投入までの時間を短縮し、コストを削減することを目標としています。」

—Yadhu Krishnan M K氏(Continental社、電磁界シミュレーションチームの共同責任者)


Laura Carter
コーポレートコミュニケーションマネージャー

Lauraは、ライター兼クリエイティブスペシャリストとして、Ansysの製品に高い関心を持つお客様に向けて多様な情報コンテンツを提供しています。OEMメーカーやTierサプライヤーのアカウントの管理やライターとしての豊富な経験を活かして、自動車業界に関する独自の視点と専門知識でコンテンツを作成しています。

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