Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
太陽が沈み始めると、群衆が静まり返りました。観客とエンジニアたちは、高さ100フィートほどのロケットが明るい炎を出しながら上空に飛び立っていく様子を凝視しています。
別のミッションでは、さらに積載量の大きい打ち上げロケットが月面探査機を運んでいます。月面に重要なペイロードを届けたり、低軌道(LEO)に軌道船を送って、応答性の高いホスティング、ライドシェア、デリバリーミッションをサポートするミッションもあります。
これらすべての要素は、これまでは異なる企業によってそれぞれ開発されていましたが、別々の開発が最適解であるわけではありません。Firefly Aerospace社は、宇宙での打ち上げ、着陸、運用を実現するという目標を掲げ、すべてを達成できるエンドツーエンドの宇宙輸送事業を行っています。Firefly Aerospace社は、アビオニクスを含め、使用するほぼすべてのコンポーネントを自社で設計および開発しています。同社の製品は、自社のどのプロジェクトでも使用できるように、互換性を持つように設計されています。
そのため同社では、多分野にわたるスキルを持つチームが編成されています。Firefly Aerospace社のエンジニアリング部門の責任者であるBrigette Oakes氏は、同社が有する専門知識は、機械工学および複合構造、電気工学、アビオニクス、ソフトウェアエンジニアリング(地上ソフトウェア、飛行ソフトウェア、組込みシステムを含む)、エンジン推進エンジニアリング、システムズエンジニアリングのすべてを網羅すると説明しています。
このようにさまざまな知識を有するチーム編成があるからこそ、業界をリードする独自の製品を開発し、目標を達成できるのです。
Firefly Aerospace社のAlphaロケット(資料提供: Firefly Aerospace社)
Firefly Aerospace社の製品は、専用の施設で設計されており、大きく3つのカテゴリに分類されます。
まず、2つのタイプの打ち上げロケットを開発しています。
Firefly Aerospace社は、両方の打ち上げロケットを開発する際に、信頼性と応答性に優れた、手頃な価格の設計を保証することに重点を置いていました。これらの製品と並行して、同社では45,000~230,000ポンドの推力を備えた5つのエンジンも開発しました。Oakes氏は「推進が好きな人には、非常に魅力的だと思います」と述べています。同社のエンジンは拡張性に優れているため、特定のミッションニーズに合わせて変更できます。
月探査機についてはどうでしょうか。同社の月探査機Blue Ghostは、月面上のどこにでもペイロードを届けてホストする機能を備えています。Blue Ghostは互換性があるため、MLVや同社の軌道船と併用することで、エンドツーエンドのシスルナサービスを完全にサポートします。
Blue Ghostは、2025年初頭にFalcon 9に搭載され、月に打ち上げられたNASAの商業月面輸送サービス(CLPS: Commercial Lunar Payload Services)プログラムの一環として選ばれています。CLPSに参加することは、「継続的かつ持続可能な月へのミッションを行うための扉を開く」とOakes氏は述べています。
最後に、Firefly Aerospace社のエンドツーエンドの宇宙輸送サービスとして、軌道船Elytraがあります。3種類の軌道船Elytraが提供されています。
Elytraが関与する今後のミッションでは、エッジコンピューティングを使用することで、「軌道周回中に、高度な最適化が実行できるようになる」とOakes氏は述べています。将来的に、このチームは宇宙ゴミの浄化から軌道上の他の衛星の修理まで、軌道周回中にサービスを提供する軌道船のコンステレーションを開発したいと考えています。
同社は製品を設計する際、設計が可能な限り軽量であり、費用対効果が高いことを確認するなど、いくつかの重要な課題を解決する必要がありました。航空宇宙工学では、設計上の余分な1ポンドは、衛星が搭載できるペイロードが1ポンド少なくなることを意味します。したがって、許容限界まで最適化された設計を開発する必要があります。これは、軌道船のあらゆるコンポーネントに当てはまります。
もう1つのハードルは、宇宙の過酷な環境に対応できるように設計することです。Firefly Aerospace社のサーマルエンジニアであるJackson Sweeney氏は次のように述べています。「地球を離れて深宇宙に入ると、大気はありません。宇宙ではマイナス200°Fまで温度が下がることもあれば、月面では250°Fを超えることもあります」そのため、Sweeney氏と彼のチームは、この極端な温度範囲で設計が正しく機能することを確認しなければなりません。この過酷な環境に加えて、高周波および低周波、衝撃、振動を含む構造荷重を考慮する必要があります。
これらの問題を解決するために、同社はシミュレーションを導入し、独自の統合設計プロセスのあらゆる部分を支援する統合されたオールインワン製品として使用しています。
Firefly Aerospace社の月探索機Blue Ghost(左)とElytra Dawn軌道船(右)資料提供:Firefly Aerospace社
Oakes氏は、同社のさまざまな製品、プログラム、分野にわたってAnsysのシミュレーションを「最初から」組み込んだと話します。「当社のあらゆる事業部門で、シミュレーションのさまざまな機能が活用されていることを見ることができます。」現在、Ansysのさまざまな製品を使用して、設計を迅速に反復し、市場投入までの時間を短縮するなど、具体的なニーズに対応しています。
Ansysの製品は、最適化された設計を迅速に実現するためにも活用されています。その1つは、3D CADモデリングソフトウェアであるAnsys SpaceClaimです。たとえば、SpaceClaimを使用すると、わずか数分でブラケットの設計をアップデートできるようになります。
Oakes氏は、Ansysのシミュレーションの導入により効率面で達成できたこととして、通常は数年かかる開発プロセスが、わずか11か月でSpectreエンジンの概念からホットファイアまで完了できたことも挙げています。Oakes氏は次のように述べています。「同社のような企業がシミュレーションを導入すると、従来型の企業よりも迅速に行動でき、大きなメリットになります。特に、衛星を開発する場合は顕著です。」
また、シミュレーションを使用することで、こうした迅速な解析がミッションパラメータに合わせて最適化されるようになります。Oakes氏は、複合構造設計などでは、できる限り質量効率を高めたいと語ります。シミュレーションを使用すれば、機能性に優れた設計に必要な最小限の質量を見つけることができます。具体的な例として、同社のチームは、構造有限要素法解析ソフトウェアのAnsys Mechanicalを使用してモデルを1週間で作成しました。このモデルを別のプラットフォームで作成した場合、数週間から数か月かかります。このモデルは、設計および解析サイクル全体を通じて使用でき、Ansysを使用して新しい変更をテストして反復し、設計に適した最小限の質量を特定できるようになります。
シミュレーションの有用性は、同社のどの製品でも発揮されます。また、多分野にわたるチームにとって不可欠な共通ツールをもたらすことで、異なる分野のエンジニア間のコミュニケーションが改善されます。
Firefly Aerospace社のサービスと拠点。資料提供:Firefly Aerospace社
ミッション中にさらされる過酷な温度範囲に対応できるように、Firefly Aerospace社は熱を重視したモデリングソフトウェアであるAnsys Thermal Desktopを導入して、熱伝導、対流伝熱、熱輻射を調査しています。これには衛星の全表面にわたる熱伝導、衛星内部の流体(推進剤など)による対流伝熱、宇宙空間における伝熱の主な形態である熱輻射が含まれるとSweeney氏は説明しています。
同社は、Ansys Thermal Desktopを使用して、さまざまな目標を念頭に置きながら、衛星のすべてのコンポーネントを解析します。まず、Thermal Desktopには、任意の惑星体の周りの軌道を調査する機能が組み込まれているため、エンジニアはミッション全体を幅広く把握できます。Sweeney氏は、Thermal Desktopを使用して、地球と月を周回するBlue Ghostの軌道と月面への着陸を解析したと述べています。このフルミッション調査では、地表面の室温、打ち上げ時の熱、宇宙の大きな温度勾配、月面など、あらゆる温度環境が解析されました。Sweeney氏は、Thermal Desktopを使用することで、こうした「さまざまな熱が衛星に与える影響」を調査できると述べています。
このミッションは、Thermal DesktopとデジタルミッションエンジニアリングソフトウェアAnsys Systems Tool Kit(STK)の優れた統合機能によって実現され、同社の誘導、航法、および制御(GNC)チームとのコラボレーションが向上します。GNCチームが軌道を定義した後の具体的な手順については、「STKをThermal Desktopを組み込むことができるため、STKからの入力データを使用して、モーメントを非常に正確にモデル化でき、衛星を適切な環境でモデル化していると確信できます」とSweeney氏は述べています。Sweeney氏のチームは、この知識を活用して、ミッション中に健全な熱状態を確保するために、衛星の正しい方向を定義するなど、軌道と温度予測に基づいて推奨事項を示すことができます。その後、GNCチームはこの要件に基づいて軌道の定義を変更するなど、両方のチームが連携しながら作業を続けます。
また、特定のコンポーネントの詳細なビューを得るためにもシミュレーションが使用されています。Sweeney氏は次のように述べています。「Thermal Desktopは、(表面コーティングの色の変更など、)設計(の変更)によってコンポーネント温度がどう変化するかを理解するのに役立ちます。」Thermal Desktopは、以下を実現することにも役立ちます。
Firefly Aerospace社は、誰もが宇宙に行ける未来を構想しており、このビジョンが実現する上で、同社の事業が大きな役割を担うと考えています。この旅の一環として、より高度なミッションをサポートしながら、より手頃な価格で信頼性の高い宇宙へのアクセスを提供することを目指しています。短期的な目標として、今後1年間でAlphaの打ち上げ回数を増やし、軌道を周回するBlue GhostミッションやElytra軌道船の打ち上げ回数を増やす可能性が検討されています。Sweeney氏は、今後も「チーム全体にとって最適なソリューション」を見つけ出すことに取り組むと述べています。
また、同社は次世代の宇宙エンジニアの育成にも特に力を入れています。現在、同社は、Dedicated Research Education Accelerator Mission(DREAM)プログラムを通じて、Alphaロケットの余剰ペイロード容量を活用し、学生たちが宇宙での実験や研究に挑戦できるよう奨励しています。
SpaceClaimおよびThermal Desktopが宇宙ミッションにどのように役立つかをご覧ください。
Ansys Advantageブログでは、専門家が投稿した記事を公開しています。Ansysのシミュレーションが未来のテクノロジーにつながるイノベーションをどのように推進しているかについて最新の情報をご覧ください。