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コンピュータ支援エンジニアリング(CAE)は、ソフトウェアツールを使用して製品設計をデジタルでシミュレーションし、最適化するエンジニアリングの一分野です。CAEは、故障解析の支援、パフォーマンスの向上、開発コストの削減、設計サイクルの短縮、製品パフォーマンスに関する知見の提供などを実現するために、さまざまな業界で採用されています。
当初は航空宇宙業界向けに開発されたCAEツールは、その後進化を遂げ、物理プロトタイプが用意される前の段階で製品開発の意思決定を推進できる、エンジニアリングプロセスに不可欠な存在となりました。現実のシナリオを仮想環境でテストし、設計上の重要な質問に答え、設計プロセスの早い段階で機能とパフォーマンスを検証できることで、CAEツールとスキルへの投資は、エンジニアリングにおける最も優れた投資収益をもたらすと言えるでしょう。
CAEツールは、特定のジオメトリ、材料、接続、および拘束が適用荷重下でどのように挙動するかを数学的に表現します。CAEシミュレーションの目的は、システムの既知の量を定義して、未知の量を計算することです。実機試験が不要な場合はCAEで代替し、実環境での試験が必要な場合でも反復回数を減らすために活用できます。
エンジニアがCAEで使用する3ステップのプロセスについて説明する前に、一般的な用語をいくつか確認しておきましょう。
CAEを適用する分野に関係なく、通常はプリプロセス、解析、ポストプロセスの3つのステップに従います。各ステップの複雑さは、シミュレーションが対象とする物理特性、要求精度、製品の複雑さ、デジタルモックアップに含まれる動作環境の複雑さによって異なります。さらに、このプロセスは、エンジニアリングチームがシミュレーションから収集しようとしている情報を把握することによって進められます。
以下に、標準的な3つのステップを示します。
CAEワークフローの最初で最も重要なステップはプリプロセスです。ここでは、エンジニアが既知の値を記録し、CAEソフトウェアを使用してジオメトリを離散化し、必要なすべてのデータをデータベースに格納します。モデル作成の多くは、システム内のジオメトリまたはコンポーネントを取り、ジオメトリを離散化(メッシング)することから始まります。次に、特定の物理量を定義する拘束条件を適用し、ジオメトリに作用する荷重を定義する必要があります。また、使用する材料ごとの特性、コンポーネント間の接続、そして時間の経過とともに境界条件がどのように変化するかを指定する必要があります。CAEシミュレーションを実行するエンジニアの最後のタスクは、ソルバーに必要な入力と変数を指定して、数学的問題の解き方を定義することです。
ソルバーを使用して問題の出力を計算するため、このプリプロセスが重要になります。入力が正しくない場合、出力は実際の状況を反映しません。まさに、GIGO(Garbage In, Garbage Out)の状況です。また、自動化の活用とCADジオメトリツールとの緊密な連携により、プリプロセスを高速化し、精度も向上させることができます。
ソフトウェアがプリプロセス段階で構築した数学的表現を実際に処理(計算)するステップです。ソルバーでは、まず数学的な定義が、既知の値と未知の値を含む一連の方程式(通常は偏微分方程式)に変換されます。次に、数値解析法を用いて、大規模な連立方程式を解き、未知の値を計算します。これら未知の値を解くためにソフトウェアが使用されますが、アルゴリズムによっては大量のメモリやディスク容量、あるいは多数のCPUサイクルを消費します。そのため、多数のCAEモデルを解析する場合は、効率的なソルバー法とハイパフォーマンスコンピューティングリソースへのアクセスが重要となります。
計算ステップの結果は、データベースに数値として保存されます。これらの値を活用するには、CAEソフトウェアを使用して有用な表現に変換する必要があります。ポストプロセス中に作成される最も一般的な結果の表現には、以下のものがあります。
値が色分けされたジオメトリのプロットは、ポストプロセスで作成される最も一般的な出力タイプです。ほとんどのケースで、エンジニアはポストプロセスを活用して設計の検証・妥当性確認に必要な情報を取得し、設計または製造プロセスの意思決定に役立てます。
たわみがメッシュ表面に色別にマッピングされて表示される典型的な結果プロットの例。赤は最大たわみ、濃い青は最小たわみを表す。
望遠鏡内の鏡の固有振動数を示す振動解析の結果。たわみは誇張されており、たわみの値を表すさまざまな色が使用されている。
高周波電磁界シミュレーションソフトウェアのAnsys HFSSにおけるフェーズドアレイアンテナの電磁界値
CAEにおいて重要なのは、モデルを変更して再解析を行い、加えた変更が結果にどのように影響するかを評価することです。これは、エンジニアが手動のワークフローで行う方法と、入力をパラメトリックに変化させながら目標の出力値に収束させる自動化ループ(「optimization」)を使用する方法の2つで実現できます。エンジニアがこれらの反復を自動化および制御できるスクリプト機能は、最新のCAEソフトウェアのほとんどに含まれています。最近では、 AnsysソフトウェアへのPythonベースのアクセスを提供するPyAnsysなど、Python APIを利用して、こうした作業を実行するケースが増えています。
CAEは、厳密には、コンピュータを使用して製品の振る舞いを計算するすべてのシミュレーションを指します。エンジニアは、解析対象となる物理特性のタイプや使用するソルバーのタイプによってシミュレーションを分類できます。
解析対象の物理特性ごとに、複数のソルバータイプを使用できます。たとえば、熱伝達シミュレーションでは、有限要素法、有限差分法、または有限体積法ソルバーを使用して熱流束を計算できます。
以下に、エンジニアがCAEアプローチを説明する際によく用いられる代表的なソルバータイプを示します。
CAEソリューションの効果を最大化するには、コンピュータを活用して、製品開発、製造、保守など、製品ライフサイクル全体の各ステップを支援することが重要です。デジタルエンジニアリングアプローチを通じて、それぞれの領域で同じようなメリットを得られるだけでなく、CAEツールとの間でデータをより簡単にやり取りできるようになります。
以下に、コンピュータ支援領域の最も一般的な形式を挙げます。
CAEの世界で唯一変わらないのは、コンピュータハードウェア、数値解析法、ユーザーインターフェース設計の継続的な向上に支えられた、機能と速度の不断の進歩です。この傾向は、これまでと同様に精度、使いやすさ、ソルバーパフォーマンスの向上に焦点を当てながら継続するでしょう。
ここでは、今後数年間でさらに発展が期待されるいくつかの項目を紹介します。
CAEソフトウェアでは、何十年もの間、AI、特に機械学習(ML)およびエキスパートシステムを採用してきました。現在は、ニューラルネットワークに関連する技術、さらには大規模言語モデルをユーザーエクスペリエンスやソルバーに組み込むための研究が進められています。このテクノロジーはすでに、Ansys Engineering CoPilotなどのUIを通じてプリプロセスおよびポストプロセスで活用できます。ソルバー側では、シミュレーション向けAIプラットフォームのAnsys SimAI、ジオメトリ向けのAnsys GeomAI、AIを活用したデジタルツインソフトウェアのAnsys TwinAIとして提供されています。
CAEソルバーは、グラフィックス処理や生成AIモデルのトレーニングで活用されている大規模なベクトル演算の並列化技術の恩恵を受けています。線形代数アルゴリズムを効率化することで、大規模なモデルを使用したり、高速な解析を実行できるようになります。
CPU、GPU、メモリICの改善についても同様です。フィーチャーサイズの縮小により、トランジスタ数の増加とクロック速度の向上が実現し、CAEツールもその恩恵を受けます。CAEツールは、こうして改善されたチップの設計にとって不可欠です。
CAEツールが最初に付加価値を高めたのは航空宇宙業界ですが、その後はさまざまな業界で導入が広がっています。設計ワークフローの一部としてCAEワークフローが導入されている業界をいくつか紹介します。
CAEソフトウェアツールの価値は、エンジニアが利用できる圧倒的な数の選択肢からもうかがえます。採用するツールを決定する際には、以下を考慮する必要があります。
Ansys, part of Synopsysが提供するツール製品群では、これらすべてに「はい」と回答できます。
Ansysのフラッグシップ製品を詳しく見ると、CAEツールのこれまでの発展とエンジニアリングチームへの価値がよくわかります。
3D製品シミュレーションソフトウェアのAnsys Discoveryは、CADと連携して作業する設計チーム向けの業界をリードするCAEツールです。単一の直感的なインターフェースで、ジオメトリのモデリングと修正から、構造解析、熱解析、流体解析、最適化まで一貫して実行できます。また、高度なソルバーにGPUを組み込みほぼリアルタイムの結果を実現している点、さらに最新バージョンではAIツールを搭載しCAE専門家以外でもシミュレーションワークフローを使えるようにした点も、注目すべき特長です。3D設計空間でシミュレーションを完了したら、シミュレーションを詳細な物理場やマルチフィジックス解析に転送できます。たとえば、Discoveryソフトウェアのユーザーは、構造FEAソフトウェアのAnsys Mechanical、流体シミュレーションソフトウェアのAnsys Fluent、高周波電磁界シミュレーションソフトウェアのAnsys HFSSなどのフラッグシップ製品に移行できます。
3D製品シミュレーションソフトウェアであるAnsys DiscoveryのCFDで、ほぼリアルタイムで解析される換気システム
世界中のエンジニアがFEAの主力製品としてMechanicalを信頼しています。主に構造、振動、熱のシミュレーションに重点を置いていますが、音響、電圧、破壊力学など、他の多くの物理現象もサポートされています。シミュレーションには、非線形性や時間依存性を組み込むことができ、これらすべてがパラメトリック機能や最適化機能を備えたスクリプト可能かつオープンなプラットフォームに組み込まれています。
Fluentは、さまざまな業界の流体力学をモデル化するために使用される包括的でロバストなCFDプラットフォームの代表的なソフトウェアです。CFD問題の解析は数学的な負荷が高い傾向があることから、HPCとGPUを活用してより大規模かつ高精度なモデルをサポートしている好例でもあります。
HFSSは、高周波電磁界CAEの業界標準です。PCBから深宇宙に展開するアンテナまで、エンジニアはこのFEAベースのツールを使用して、現代の経済を形成するエレクトロニクスおよび通信製品の設計を推進しています。高度な機能と使いやすさを兼ね備え、効率的に実行できるツールです。
最後に、業界では「垂直アプリケーション」と呼ばれる、特定のユースケースに特化したCAEツールを紹介します。Ansys Icepakは、Fluentソルバーを基盤に構築されたプリプロセスおよびポストプロセスツールで、エレクトロニクスの冷却とPCBの伝熱シミュレーションと解析に特化して設計されています。
エレクトロニクス冷却シミュレーションソフトウェアのAnsys Icepakで実行した、強制空冷を含むコンピュータサーバの一般的なエレクトロニクス伝熱解析
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