Skip to Main Content

カーエレクトロニクスとは

カーエレクトロニクスは、電気信号と電力を処理および変換して、自動車のさまざまな機能を監視、制御、実行する車両システムです。最新の自動車は、電子システムが相互接続された複雑なネットワークを介して、安全性、効率性、性能、快適性、ユーザーエクスペリエンスを向上させています。今日の乗用車には最大100個の電子モジュール、電気自動車やハイブリッド車には200個を超える電子モジュールが搭載されています。自動車に搭載された電子デバイスは、電気自動車(EV)技術の進歩、自動運転の実現、そして接続性の向上により、さらに増加していくことでしょう。そうなれば、こうした車両を設計および製造するエンジニアにとって新たな課題が生まれます。

カーエレクトロニクスの重要性の高まり

自動車で電力が使用されるようになったのは、ごく初期の電動ヘッドライトを点灯させるためでした。その後も、電動モータで車のエンジンをかけたり、フロントガラスのワイパーを作動させたりするためにも電力が使用されました。トランジスタやダイオードのようなディスクリート半導体の開発により、自動車メーカーは交流発電機や単純な電子燃料噴射機を追加することで効率を高めることができました。

その後、1980年代に業界で集積回路が採用されると、エンジン制御、自動ブレーキシステム(ABS: Automatic Braking System)、電子安定制御(ESC: Electronic Stability Control)モジュールを改善するために、マルチチップ電子制御ユニット(ECU: Electronic Control Unit)が追加されました。21世紀に入ると、自動車メーカーは搭載するカーエレクトロニクスの数をさらに増やして、自動車をタイヤの付いたコンピュータに進化させ、さらにはソフトウェア定義車両の実現を目指しています。

自動車の電子システムの重要性は、以下の5つの業界トレンドによってさらに高まっています。

  1. 安全性: 政府、消費者、そして自動車業界自体も、安全性に対する期待の水準を高め続けています。センサーをスマートシステムと組み合わせることで、安全上の問題を人間のドライバーよりもはるかに迅速かつ効果的に特定して対処できます。厳しさを増す基準を満たし、高まる消費者の需要を満たすために、メーカーはこれらの機能を組み込む必要があります。
  2. 効率性: より厳しい排出要件を含め、効率性の向上に対する要求も年々高まっています。メーカーやサプライヤーは、性能を維持しながら走行距離を伸ばして汚染物質を削減するために、パワートレインのあらゆる部分にリアルタイムの電子監視および制御システムを追加しています。
  3. ユーザーエクスペリエンス: エレクトロニクスが生活のあらゆる側面を変えてきたように、ドライバーと乗客は、コンシューマー向けエレクトロニクス製品と同じような接続性、使いやすさ、機能を期待しています。
  4. 電動化: 内燃機関(ICE)を搭載した車両からハイブリッド車や完全電気自動車に移行することで、自動車に搭載される電子モジュールの数が2倍になる可能性があります。それと同時に、電動パワートレインの高電圧特性により、電気推進を採用する車両の複雑さと機能安全性に関する懸念も高まっています。
  5. 自動運転: 半自動運転車から完全自動運転車への急速な進歩により、自動車分野ではエレクトロニクスへの依存も高まっています。アダプティブクルーズコントロールなどの一般的な自動運転機能は、センサー、計算、エンジン制御を組み合わせてドライバーのタスクを自動化します。メーカーが自動化を進めるにつれて、車両に搭載されるエレクトロニクスも増加します。

カーエレクトロニクスのコンポーネント

車両内のさまざまな電子システムは、複数の電子コンポーネントとそれらの接続で構成されています。各コンポーネントには、設計、運用、保守の面で独自のニーズがあります。

以下に、最も一般的なタイプのカーエレクトロニクスコンポーネントを挙げます。

  • センサー: センサーは、物理的な値を測定して他のシステムにそれを報告する機器です。圧力、速度、位置、温度、流れ、近接度など、車両内外のさまざまな値を測定できます。レーダー、超音波デバイス、カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging)などの高度なセンサーは、ターゲットの距離、形状、方位角、仰角を測定することも可能です。これらのセンサーからの入力データを人工知能(AI)システムに入力し、センサーフュージョンを導入することで、車両の状況把握性能を高めることができます。
  • アクチュエータ: 長年にわたり、自動車メーカーは、さまざまな機械的連動装置をアクチュエータで置き換えてきました。アクチュエータは、電気信号を、機械的物体を動かす力に変換するソレノイドやモータなどのデバイスであり、空調システムの排気口を開閉する簡単な機構から、トランスミッションのギアシフトのような高度なものまであります。
  • ECU: ECUは、センサーデータとオペレーター入力を収集して処理し、車両のさまざまな機能を制御する装置です。コンピュータと同じように、ECUはソフトウェアとファームウェアを使用して車両を操作します。
  • パワーエレクトロニクス: パワーエレクトロニクスとは、高電圧を伝送するコントロールモジュール、電源装置、電力変換器、およびワイヤーハーネスを指します。スターター、電気ヒーター、電動モータなど、高需要システムに電力を供給し、バッテリの充電状態を管理します。
  • 通信ネットワーク: これらすべてのモジュールとそのサブシステムは、CANバス、LIN、FlexRay、イーサネットなどのプロトコルを使用して有線ネットワークを介して通信します。また、通信ネットワークはスマートフォン、インターネット、GPS、インフラ、または他の車両との無線によるV2X(Vehicle-to-Everything)接続を提供します。このコンポーネントグループは、「テレマティクス」と呼ばれることもあります。
  • ユーザーインターフェースコンポーネント: ドライバーと乗客は、ボタン、インフォテインメントシステム、ヘッドアップディスプレイ、ダッシュボードコンポーネント、ディスプレイ画面などのユーザーインターフェースコンポーネントを介して車両のさまざまな機能を操作します。

カーエレクトロニクスの各種モジュールのさまざまな分類

自動車業界では、急増する車載電子システムを把握する方法として、機能に基づいて各カテゴリに分類しています。

以下に、標準的な分類と、各カテゴリに属する最も一般的なコンポーネントのリストを示します。

ev-powertrain-diagram.jpg

バッテリ、モータ、パワーエレクトロニクスで構成された電気自動車(EV)のパワートレイン

パワートレインは、ホイールにトルクを与える車載システムで構成されます。燃料タンクや排気管からEV用のバッテリやモータまで、パワートレインは最も多くのエネルギーを使用します。そのため、このカテゴリの電子機器のほとんどは、燃料効率や車両性能の向上または排出量の削減に重点を置いています。

ICEパワートレインの最も一般的な電子モジュールには、以下のものがあります。

  • 電子燃料制御
  • 排出ガス制御
  • エンジン制御装置
  • エンジンマネジメント
  • エンジンセンサー
  • トランスミッション制御

ハイブリッド車や電気自動車では、これらのコンポーネントに加えて、以下のパワーエレクトロニクスモジュールも使用しています。

  • バッテリ管理システム
  • バッテリ温度制御
  • 駆動モータ
  • 充電用エレクトロニクス
  • インバータおよび電圧レギュレーター

安全システム

設計チームは、増加するECUのセンサーおよびエッジコンピューティング機能を活用して、車両の安全性を向上させ、モジュールの複雑さを高めることができます。

一般的な安全システムには、以下のものがあります。

  • エアバッグ
  • アンチロックブレーキシステム(ABS)
  • アンチスリップレギュレーション(ASR)
  • バックカメラ
  • 死角センサー
  • 衝突検出および回避システム
  • 緊急ブレーキ
  • ヒルスタートアシスト(HSA)
  • 車線逸脱警告
  • タイヤ空気圧監視
  • トラクションコントロールシステム(TCS)

インフォテインメントシステム

乗客に情報や娯楽を提供する電子デバイスは、インフォテインメントシステムに分類されます。以下のものが含まれます。

  • ブロードバンド接続
  • エンターテインメントシステム
  • 計器クラスター
  • ナビゲーションシステム
  • スマートフォン連携
  • スピーカーとマイク
  • ユーザーインターフェースデバイス
  • 車両診断
  • 車両機能の設定

シャーシエレクトロニクス

上記のカテゴリに属さないカーエレクトロニクスシステムは、「シャーシエレクトロニクス」と呼ばれます。ただし、自動化と統合の強化により、安全システムとシャーシエレクトロニクスの境界が曖昧になっています。

シャーシエレクトロニクスモジュールには以下のものが含まれます。

  • アダプティブヘッドライト
  • 先進運転支援システム(ADAS)
  • 車室内照明
  • 空調制御
  • 電子制御ブレーキ
  • 電動パワーステアリング
  • キーレスエントリー
  • 照明システム
  • サスペンション制御

シミュレーションでカーエレクトロニクスの設計を推進

設計チームには、プロトタイプを用いてアイデアをテストし、電子システムが熱、構造、電磁界の負荷に対して十分なロバスト性を備えているかどうかを検証する時間的な余裕はありません。そうした状況で、設計プロセスにわたってシミュレーションツールを導入することで、ますます複雑化するカーエレクトロニクスの課題に対応できるようになります。

OEMメーカーとそのサプライヤーは、車両の電子システムのすべてのコンポーネント、モジュール、アセンブリにシミュレーションを適用しています。この仮想プロトタイピングは、性能の向上、補償請求の削減、安全性の検証、コストの削減、新しい設計の市場投入までの時間の短縮を実現します。

ほとんどのシミュレーションタスクは、以下の4つの領域のいずれかに分類できます。

1.‍機能

シミュレーションを導入する第一の目的は、エンジニアが自動車を設計してコンポーネントの機能を試すのを支援することです。各モジュールの応答は、コンポーネント、サブシステム、システムの各レベルで設計が作成されているときに、仮想環境で設計およびテストできます。エンジニアは、高度な電磁界ソルバーであるAnsys Maxwellなどのツールを使用して、モータやアクチュエータなどの電気-機械式デバイスや、変換器および電圧レギュレーターなどのパワーエレクトロニクスシステムを設計します。光学システムの設計者は、光学システム設計および解析ソフトウェアであるAnsys Zemax OpticStudioなどの光学シミュレーションプラットフォームを使用して、光ベースセンサーのレンズ要件を満たします。また、内装の設計者は、CADを統合した光学および照明シミュレーションソフトウェアであるAnsys Speosなどの製品を使用して、車室内照明の外観と操作性を調査できます。

2.最適化

エンジニアは、車載電子デバイスの機能要件を満たした後で、設計を最適化する必要があります。この段階では、効率を向上させ、ガス排出量を削減し、性能を最大化します。

クリティカルな組込みソフトウェアのためのモデルベース開発環境であるAnsys SCADE Suiteなどの機能を備えたツールを使用して、ECUのファームウェアを変更することができます。あるいは、高周波電磁界シミュレーションソフトウェアであるAnsys HFSSを使用して、GPS用のアンテナを設計して最適化することもできます。さらに、このアンテナをデジタルエンジニアリングソフトウェアであるAnsys Systems Tool Kit(STK)のようなデジタルミッションシミュレーションプラットフォームと組み合わせることで、インフォテインメントシステムに搭載されたGPSアンテナが、さまざまな走行状況下で可能な限り強力な信号を受信できるように最適化することもできます。

各モジュールが最適化されたら、プロセス統合および設計最適化ソフトウェアであるAnsys optiSLangなどの包括的な最適化プラットフォームを導入して、目標を迅速かつ効率的に達成できるようになります。

3.信頼性

自動車設計における最も重要な要素の1つが信頼性です。購入者は、何万キロも走行した後も、車両が適切に作動することを期待しています。しかし、自動車の熱、振動、衝撃、電磁ノイズは、こうしたロバスト性に関する高い目標の達成を阻害するものであるため、エンジニアリングチームは構造、熱、電磁界のシミュレーションツールを使用して、カーエレクトロニクスシステムに対して厳しい仮想テストを実施しています。

また、構造の有限要素法解析ソフトウェアであるAnsys Mechanicalを導入して、熱、構造、振動の評価を行い、すべてのコンポーネントが物理的および電気的な接続とともに車両の寿命要件を満たし、長期間にわたって稼働し続けることを確認することもできます。さらにECUのプリント回路基板(PCB)や集積回路パッケージについては、エレクトロニクス冷却シミュレーションソフトウェアであるAnsys Icepakやエレクトロニクス信頼性予測ソフトウェアであるAnsys Sherlockなど、エレクトロニクスに特化したシミュレーションツールを使用することもできます。

4.干渉

Ansys Electronics R1 2023

電磁界モデリングおよびシミュレーションソフトウェア

電磁干渉と電磁両立性(EMI/EMC)は、特にEVのように車両に高電圧システムが搭載されている場合、カーエレクトロニクスにとってこれまで以上に大きな課題となります。搭載されている高周波部品やモジュール間で移動する高速デジタル信号の数、電気バッテリシステムの電圧、アンテナの使用状況のどれも、以前よりも増加しています。エンジニアは、PCBおよびパッケージ電磁界シミュレーションソフトウェアであるAnsys SIwaveなどのツールを使用して、ECUに搭載されたPCBのシグナルインテグリティやパワーインテグリティの問題を解決したり、電磁界モデリングおよびシミュレーションソフトウェアであるAnsys EMC Plusを使用して、ケーブルやワイヤーの間で高周波波がどのように相互作用するかを調査したりすることができます。また、落雷が自動車の電子システムにどのように影響するかをモデル化するためにも使用できます。

関連リソース

Ansys Thermal Desktop:エレクトロニクス冷却、自動車、および冷却システム - パート2

このウェビナーは、熱-流体ループと二相流の相互作用を伴う、エレクトロニクス、自動車、および冷却システムのためのAnsys Thermal Desktopをご紹介する2部構成のウェビナーシリーズの第2部です。

自動車用ケーブルにおけるEMCの最適予測メタモデル

 このドキュメントでは、メタモデリング技術を自動車アプリケーション用のハーネスの設計、最適化、および評価にどのように適用できるかについて詳しく説明します。

仮想環境での妥当性確認で自動車OEMの仕様に対応

GMW3172やSAEJ3168など、OEMメーカーや業界の信頼性基準を満たすことを目指しているカーエレクトロニクスサプライヤーが直面する課題について説明します。