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マイクロオプティクスとは

マイクロオプティクスとは、横方向の寸法または直径(システムによって異なる)が1マイクロメートルから1ミリメートルの範囲に収まるマイクロスケールの光学部品を指します。この分野は、小型化されたシステムを用いて光の操作、伝送、制御を小さなスケールで行うフォトニクスと密接に関連しています。

現在、多様なマイクロオプティクスシステムが存在しており、その大半はガラスやポリマーなどの従来の光学材料で製造されたより大型の光学システムを小型化したものですが、リソグラフィ技術で製造された半導体材料を用いる赤外線用途向けのマイクロオプティクスシステムもあります。

今日のマイクロオプティクスシステムは、より大型の光学システムの基本原理や光学機能の多くをはるかに小さなスケールで活用しています。具体的には、異なる波長の光の屈折、回折、反射などが挙げられます。マイクロオプティクスは、スケールが小さいがゆえに光学収差を引き起こす場合がありますが、システムの小型化がもたらす総合的な利点により、多くの先端技術分野において不可欠な存在となっています。

マイクロオプティクスの種類

マイクロオプティクスにはさまざまな種類があり、その多くはレンズ、ミラー、プリズム、回折格子、開口部といった従来の光学部品と同様の方法で製造されていますが、従来よりもはるかに小さいスケールで製作されています。以下に、現在一般的に使用されているマイクロオプティクス部品の例を示します。

マイクロレンズ

マイクロレンズは、ミリメートル、センチメートル、またはそれ以上のスケールではなく、マイクロメートル単位の直径を持つ非常に小さなレンズです。近年のマイクロレンズ技術における最大の進歩の1つが、屈折率分布型(GRIN)レンズです。GRINレンズは、それぞれが異なる屈折率を有する複数の表面(異なる材料で作られる場合がある)を持ち、これらの複数の層が、レンズの各層における屈折率の違いを利用して光を屈折させ、次の層へ順次光を導く構造になっています。また、マイクロレンズの表面に回折格子を配置することで回折光学素子を組み込んだGRINレンズも登場しています。ただし、これらは従来のGRINレンズとは異なり、むしろメタレンズに近いものです。マイクロレンズの主要な種類として、マイクロフレネルレンズも挙げられます。このレンズは、一連の同心円状の曲面を用いることで、屈折による集光を行います。

マイクロレンズアレイ

レンズレットアレイとも呼ばれるマイクロレンズアレイは、特定のパターンに製作され、配列された一連の微小レンズ(レンズレット)です。通常、これらは格子状または周期的なパターンで構成されており、光の操作、集光、導光など、さまざまな機能を果たすために、特定のパターンに配置されます。マイクロレンズアレイは、その用途や動作原理に基づいて、屈折型マイクロレンズアレイや回折型マイクロレンズアレイとして製作することもできます。

光ファイバー

光ファイバーは、日常的な通信における光伝送手段として広く知られています。コア径がマイクロスケールサイズの光ファイバーは、マイクロオプティクスシステムと見なされており、これらの超小径のファイバーを束ねることで、光信号(データを含む)を光ファイバーケーブル内で長距離伝送します。光ファイバーは、高屈折率のコア、低屈折率のクラッド層、および外側の保護被覆で構成されています。高屈折率は光をコア内部に反射させ、光を所定の目的地へ導くとともに、伝送中の損失を防止します。この反射原理は全反射(TIR)と呼ばれます。この原理は長距離光伝送に利用される一方で、光ファイバーから光を意図的に漏らす技術も、自動車、航空機、船舶、ナイトクラブなどにおける周囲照明効果に活用されています。

Fiber optics CPU chip processors

マイクロプリズム

マイクロプリズムは固体ガラスから作られる光学プリズムを小型化したものであり、光の回転、変位、分散を実現する特定の形状を有しています。マイクロプリズムは従来の光学プリズムの小型版ではありますが、主に光の方向を制御するために使用されており、光ファイバー通信において光スイッチとして広く活用されています。

マイクロミラー

マイクロミラーは大型のミラーを小型化したものであり、大型のミラーと同じ反射の基本原理に基づいて機能します。従来のミラーと同様、マイクロミラーも表面に反射コーティング(誘電体または金属の多層構造から成る)が施されており、従来よりもはるかに小さなスケールで光を反射させることができます。マイクロミラーは、動作中に位置を正確に調整できる小型アクチュエータと組み合わされることがよくあります。マイクロミラーシステムの一例として、微小電気機械システム(MEMS)デバイスが挙げられます。MEMSは多くの部品から構成される場合がありますが、MEMSの一般的なアーキテクチャは一連のマイクロミラーで構成され、各ミラーは連動または独立して角度を迅速に変更できるようになっています。

マイクロオプティクスの利点

マイクロオプティクスには多くの種類があり、それぞれ特定の用途に適した独自の利点を備えていますが、主な利点はその「小ささ」にあります。この小さなサイズは多くの副次的な利点をもたらします。たとえば、従来のマルチバンド光学システムは大きく扱いづらいものでしたが、こうした光学デバイスの軽量化と小型化を実現できるようになります。これにより、マイクロエレクトロニクスやオプトエレクトロニクスに対応する先進的な光学部品を、より少ない材料と低コストで開発することも可能になります。

このマイクロオプティクスの小ささにより、これらのレンズを新しい用途に応用できるようになります。具体的には、粘度や透明度が異なるさまざまな流体を透過することで外科医が目視できるようにする先進的な外科用内視鏡やロボット手術などの用途があります。

マイクロオプティクスの応用

マイクロオプティクス部品は、既存の光学デバイスの性能向上と小型化に寄与するとともに、レンズやその他の光学部品の新たな用途を切り開き、既存の技術をより先進的なシステムに置き換える役割を果たしています。以下に代表的な用途を示します。

フォトグラメトリー

フォトグラメトリーは、光検出および測距(LiDAR)センシングと似たプロセスですが、カメラを使用する点が異なります。フォトグラメトリーは写真を用いて物体や環境を再構築する方法であり、地上と空中のカメラを使用して複数の角度から写真を撮影し、これらの写真を高度なソフトウェアアルゴリズムで処理および合成することで、地形図や3Dモデルを作成します。

より大規模なマッピングを可能にするフォトグラメトリーは、コンピュータを用いて自動化することができます。フォトグラメトリーでは、カメラの周囲にある数百万のポイントを計測し、各ポイントまでの距離を算出することができます。光線を照射して飛行時間を計算する必要があるLiDARよりも精度の高いフォトグラメトリーでは、距離を受動的に検出することもできます。フォトグラメトリーでは、レンズレットアレイがライトフィールド画像(LFI)カメラという形で使用されています。これらのカメラは物理的に移動する必要がありません。というのも、特定の間隔で配置された各レンズが独自の視野で周囲を測定するからです。

ドローンと自動運転車両

重量があるドローンやその他の無人車両は、部品の小型化と軽量化が求められています。光学部品の重量が全体に占める割合はわずかですが、ドローンが小型化することによって、撮像システムや監視技術も小型化できるようになります。従来の光学システムの小型化に加えて、ドローンやその他の自動運転車両にはフォトグラメトリーシステムを統合することも可能です。

現場を飛行して測量する作業を手作業で行う場合には、2~3人で数日を要しますが、フォトグラメトリーシステムを搭載したドローンはこの同じ作業を1時間以内に完了することができます。カメラは移動せずに複数の視野を得られるため、現在の自動運転車両で使用されているLiDARシステムに取って代わる可能性も秘めています。

Micro Optics drone

バイオメディカルへの応用

医療機器、特に体内に挿入するものは小型化が求められています。マイクロオプティクスは、さまざまな医療機器や手術器具における光学素子の小型化に役立っています。

最大の応用分野の1つは、内視鏡のレンズの性能向上と小型化です。現在、マイクロオプティクスは内視鏡に多波長機能を持たせる手段を提供しており、これによって外科医は血液や水などの体内のさまざまな流体を透過して確認することが可能となっています。これらの機能を内視鏡に持たせるために必要なすべての光学部品を組み込むのは、従来は非常に難易度が高く、ほとんど実現不可能でした。しかし、マイクロオプティクスシステムの発展により、手術に使用可能なレベルまで光学部品を小型化できるようになりました。

外科手術用のロボットには、異なる波長のレーザー(血液は透過するが水は透過しないレーザーや、その逆の特性を有するレーザー)をシステムとして組み込むことができます。これにより、外科医は他の組織を傷つけることなく、特定の対象組織を確実にターゲットにすることができます。

example-of-an-endoscope

光操作デバイス

マイクロレンズは、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)、レーザーダイオード、フォトニック集積回路(PIC)チップ上の導波路などの小型発光体からの光をコリメートおよび集光するのにも使用できます。マイクロオプティクスは、理想的な特性から逸脱した光を補正し、光の輝度を向上させ、複数のファイバーからの光を結合することができます。さらに、マイクロオプティクスはビームスプリッタや偏光子にも利用されており、レーザービームを偏光成分に分離するのに役立っています。

フェーズドアレイアンテナは、多くのプラットフォームやパッケージに組み込まれており、特定の方向に向けられたエネルギーを最大にするために使用できる。上に示すアニメーションは、HFSSソフトウェアで生成されたダイナミックビームステアリングのアニメーションで、アンテナがホストパッケージの他の部分に誘導する電流も示されている。

マイクロオプティクス設計上の課題

マイクロオプティクスは、その小さなスケールゆえに、設計と製造が困難です。エンジニアがマイクロオプティクスシステムを設計する際には、製造方法の選択から、制限要因となる可能性のあるアパーチャサイズに至るまで、さまざまな要素を考慮する必要があります。

マイクロオプティクスの製造

小さなスケールで高性能であることが求められるため、高精度な製造技術が必要になります。マイクロオプティクスを高品質に製造しなければ、システム全体の性能が低下することになります。このため、以下のような先進的な製造手法が使用されています。

  • フォトレジストリフロー:これは、微小な円形または球状の領域にフォトレジストを塗布する手法です。デバイスをしきい値温度まで加熱することで、フォトレジストが溶融し、基板表面に流れて広がるようにします。この方法は、オプトエレクトロニクスチップ上の丸みを帯びたエッジを持つマイクロレンズを作成する際によく使用されます。
  • レプリケーション技術:大型光学機器の製造に用いられる技術ですが、マイクロオプティクスの製造にも応用できます。具体的には、射出成形、紫外線(UV)鋳造、ホットエンボス加工などが挙げられます。
  • マイクロコンタクトプリンティング:これは、光学的に透明で滑らかな曲面を形成するために使用されるソフトリソグラフィプロセスです。より柔らかい材料で用いられるこのプロセスは、柔軟性の高い基板層の製造によく使用されます。
  • ウェハベースリソグラフィ:これは、赤外線用途向けの半導体ベースのマイクロオプティクスを製造するために用いられている従来の半導体リソグラフィ技術です。

流体とマイクロオプティクスの相互作用のモデリング

内視鏡などの外科アプリケーションの場合には、体液と光学部品の相互作用や、さまざまな体液中の光の伝播を示す必要があります。このため、流体、光学部品、そしてシステム全体における光線の進行経路をモデル化しなければなりませんが、流体シミュレーションソフトウェアAnsys Fluentを使用することで、こうした相互作用をモデル化することができます。

機械的問題

通常のレンズと同様、マイクロレンズも取り付ける必要がありますが、レンズの取り付けは、振動を引き起こし、光学性能に影響を与える可能性があります。さらに、レンズの取り付けにより、複屈折を誘発し、マイクロレンズの光学特性にも影響を与えることがあります。マイクロオプティクスに影響を与える可能性のある物理的側面は、構造の有限要素法解析ソフトウェアAnsys Mechanicalを使用してモデル化することができます。

熱的問題

熱的問題はマイクロオプティクスにさまざまな形で影響を及ぼす可能性があります。熱によって、部品の膨張と収縮が生じると、ガラスの構造変形(波打ちなど)につながることがあります。ガラスの屈折率は温度に依存し、レンズを通過する光/レーザーエネルギーがガラスによって吸収される量は温度によって異なります。このため、高性能な光学部品においては、熱効果のモデリングが重要です。これは、熱解析に特化したモデリングソフトウェアAnsys Thermal DesktopとMechanicalを用いて行うことができます。

マイクロオプティクスの光学特性のシミュレーション

Ansys Lumericalと、光学システム設計および解析ソフトウェアAnsys Zemax OpticStudio、CADに統合された光学および照明シミュレーションソフトウェアAnsys Speosを使用することで、光学システムを異なるスケールでシミュレーションすることができます。Lumericalでは、有限差分時間領域(FDTD:Finite-Difference-Time-Domain)法や量子井戸ソルバーを利用し、非常に小さなスケールで光学システム(メタレンズ、個々の基板層、光学コーティングなど)のシミュレーションを行います。OpticStudioは、次のスケールアップ段階に位置し、マイクロオプティクスシステム全体を単一のシステムとしてモデル化します。Speosは最も大規模なシミュレータであり、車両などの広範なシステムへのマイクロオプティクス部品の統合をシミュレーションすることができます。

マイクロオプティクスのさまざまな側面をシミュレーションする際に利用できるツールは数多く存在しますが、マイクロオプティクス設計の問題を解決するには、複数のツールを連携させて使用する必要があります。なぜなら、すべての必要な側面を1つのツールでシミュレーションすることはできないからです。

マイクロオプティクスの未来

マイクロオプティクスは今後も発展を続け、小型化、軽量化、高性能化が進むと考えられます。これまでの最大の成果の1つとして、GRINレンズが挙げられますが、今後はメタレンズやコパッケージドオプティクスの台頭が見込まれています。メタレンズは回折光学と通常の光学を組み合わせた極めて薄く平坦なナノスケールのレンズであるのに対し、コパッケージドオプティクスはマイクロオプティクスと電子素子を同一チップ上に統合できる先進的なシステムです。また、量子コンピューティングがマイクロオプティクスを活用する次なる主要な応用分野の1つになるとも考えられています。

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