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半導体向けISO 26262について:自動車業界向けガイド

12月 18, 2024

1:00 Min

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Akanksha Soni | (Ansys、プロダクトマーケティングマネージャー)
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自動車業界は急速に進化しており、自動車に搭載される高度なエレクトロニクスとソフトウェアへの依存度が高まっています。高度な機能は、より大きな計算能力を必要とし、半導体設計をより複雑にしています。このため、設計者には、こうしたシステムを駆動する半導体が厳格な自動車安全基準を確実に満たすように設計することが求められています。

半導体は、電気自動車(EV)などの高度な自動運転車の開発や、そのセキュリティと接続性において重要な役割を果たしています。これらの懸念に対処する主要な規格の1つとして、自動車システムの機能安全に焦点を当てたISO 26262が挙げられます。ISO 26262は拡張され、道路車両の機能安全分析の範囲に半導体部品を明示的に含めるようになりました。

高度な自動車の開発に不可欠なエレクトロニクスには、以下のものがあります。

  • イメージセンサー/レーダー/LiDAR
  • ビジョンプロセッサ
  • 信号プロセッサ
  • 人工知能(AI)
  • コネクティビティソリューション
  • ハードコーディングされたセキュリティ機能

これらのセーフティクリティカルなシステムで使用されるシステムオンチップ(SoC)は、高度なマルチコア設計を採用しており、高集積、高機能、高速動作、および優れた電源管理を実現します。また、性能を向上させ、電力効率の要件を満たすために、異種ダイ(2.5D/3D-IC構成)が使用されることがよくあります。

設計者は、シミュレーション技術を活用することで、半導体の知的財産(IP)、SoC、システムインパッケージ(SIP)が、ISO 26262で規定されている自動車エレクトロニクスの機能安全および信頼性規格に準拠しているかどうかを確認することができます。

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設計者は、包括的なレジスタ転送レベル(RTL)電力解析および電力削減ソフトウェア「Ansys PowerArtist」を使用することで、自動車用ICの電力効率を向上させることができる。

ISO 26262とは

ISO 26262は道路車両の機能安全に関する国際規格であり、自動車システムおよびコンポーネントのライフサイクル全体に関するガイドラインを提供します。2011年に最初に発行されたISO 26262は、改訂が繰り返され、最新版は2018年に発行されました。ハードウェア、ソフトウェア、人間による操作を含む車両のすべての要素に適用されるこの規格は、コンセプト設計から廃棄に至るまで、安全性を確保することを目的としています。

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修正が必要なエレクトロマイグレーション(EM)ホットスポットをフィルタリングするための、熱を考慮したEM解析の例

半導体にとってISO 26262が重要な理由

半導体は、エンジン制御ユニット(ECU)から先進運転支援システム(ADAS)に至るまで、現代の自動車システムで重要な役割を果たしています。車両の自動化と相互接続が進む中で、半導体の設計と生産におけるロバストな安全対策の重要性が一層高まっています。

集積回路(IC)がISO 26262認証を取得するには、厳格な機能安全試験および認定を受けなければなりません。車両に搭載される各半導体部品は、さまざまな自動車グレードに対応する安全要件を満たす必要があります。たとえば、自動車はラスベガスのうだるような暑さの中でも、カナダの極寒の冬の中でも、同じように安全に走行できるものでなければなりません。そのため、すべての部品は、静電放電(ESD)および熱応力テストに合格し、さまざまな条件下で信頼性の高い動作を保証するものである必要があります。

設計者は、自動車の寿命が通常10~15年であることを踏まえ、自動運転システムとADASが自動車の寿命全体にわたって故障率ゼロを維持することを証明しなければなりません。これらのシステムが長期間にわたって機能安全を維持できるようにするためには、設計者は潜在的な故障モードに対応する十分な冗長性を設計に組み込む必要があります。半導体の品質を保証する最も効果的な方法の1つは、自動車用ICがISO 26262規格に準拠していることを証明することです。

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暗号鍵開示の電磁界(EM)サイドチャネル評価

ISO 26262の自動車用IC要件を満たすためのシミュレーションの課題

車両の所望の機能安全を達成するためには、半導体デバイスをシミュレーションし、その性能と信頼性を向上させることが不可欠です。

FinFET設計や2.5D/3D-ICの高度なパッケージング技術がISO 26262規格を確実に満たすようにするためのシミュレーション課題に取り組むには、マルチフィジックスシミュレーションの使用が必要であり、そのプロセスは複雑です。

たとえば、自動運転システムは電力効率に優れている必要があります。電力効率が低いと、自動車のバッテリが急速に消耗し、走行距離に影響が及びますが、特に設計サイクルの早い段階でクロックゲーティングやデータゲーティングなどの電力削減技術を用いて対処することで、電力効率を最大限に高めることができます。

ただし、パワーゲーティングなどの電力削減技術は、自動車システムに適用できないことがあります。たとえば、衝突回避のシナリオでは、このシステムが、パワーゲーティングされたスリープ状態から復帰するのにかかる時間が致命的になる可能性があります。

もう1つのマルチフィジックスの課題は、電力がチップの熱シグネチャに与える影響に関連しています。熱的影響は長期的な信頼性の問題を引き起こす可能性があります。したがって、電源電圧を下げることは全体的な電力プロファイルが低くなるため有益です。しかし、これによって、電源のノイズや変動に影響するヘッドルームが減少し、最終的にチップのタイミングに影響が及びます。

今日の自動車においては、セキュリティが重要な課題となっています。ハッカーは、半導体チップからの電源ノイズ、EMエミッション、熱プロファイルを悪用して、車両に不正アクセスする場合があります。そのため、設計者は、プレシリコンICの設計段階でハードウェアサイドチャネルの脆弱性を特定し、分析することで、車両の安全性を確保する必要があります。

信号配線における電力、ノイズ、高速スイッチングの関係は、電磁クロストークによって悪化します。これにより、機能の不具合、平均故障時間の短縮、製品の性能低下につながる可能性があります。

設計者は、Ansysの半導体向けポートフォリオを使用することで、これらのマルチフィジックス問題すべてに対処し、自動車エレクトロニクスシステムの厳しい安全性および信頼性基準を満たすことができます。

ISO 26262認証に準拠するAnsysの半導体向けポートフォリオ

設計者がISO 26262規格を満たすためには、ISO 26262の「Tool Confidence Level 1」(TCL1)カテゴリで認証された電子設計自動化(EDA:Electronic Design Automation)ツールを使用する必要があります。

この認証は、システム全体の機能安全性を損なう設計ミスをツールによって防ぐことを保証するものです。これにより、設計者は、以下の点を含めてEDAツールを理解することで、電子システムの安全性を確保することができます。

  • 使用モデル
  • 下流ツールとの連携
  • 潜在的な誤動作や誤ったレポート
  • エラーの検出および防止方法

電力効率、パワーインテグリティ、および信頼性の向上を実現するAnsysの半導体向けポートフォリオは、ISO 26262のTCL1認証を取得しています。この認証によって、自動車ICの設計企業は、ADASや自動運転の用途における厳しい安全要件を満たすことができます。

自動車向け半導体の設計者は、包括的なRTL電力解析および電力削減ソフトウェアAnsys PowerArtist、アナログおよびミックスドシグナルIC用のパワーインテグリティサインオフプラットフォームAnsys Totem、3D-IC用の熱およびマルチフィジックスサインオフプラットフォームAnsys Redhawk-SC Electrothermal、そしてマルチフィジックスシミュレーションソリューションAnsys RedHawkを使用することで、あらゆる自動車安全水準(ASIL:Automotive Safety Integrity Level)のすべてのISO 26262安全関連開発プロジェクトに取り組むことができます。

Ansysは、チップ、パッケージ、システム全体にわたる電力、熱、構造、信頼性、電磁界の影響を正確にモデル化できる広範なマルチフィジックスシミュレーションを提供し、さまざまな破壊メカニズムの特定を支援しています。半導体メーカーはAnsysのマルチフィジックスシミュレーションを活用することで、ISO 26262で規定されている厳格な機能安全要件を確実に満たす半導体を開発することができます。


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プロダクトマーケティングマネージャー

Akanksha Soniは2年間にわたり、Ansysで半導体設計およびシミュレーション製品を中心とする製品マーケティングに携わってきました。以前は、Cadence Design Systems社で7年間にわたり製品検証と技術マーケティングに従事していました。Soniは、電子工学と通信工学の学士号を取得しています。

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