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アリゾナ州スコッツデールに本社を置くonsemi社は、19カ国に60を超える製造拠点と設計センターを持つ大手半導体メーカーです。他の半導体メーカーと同様に、onsemi社も、より高性能でありながら、小型、低コスト、持続可能かつエネルギー効率に優れた設計を継続的に生み出す必要に迫られています。さらに、同社の収益の約75%を占めている自動車および産業用途の実際の稼働条件に対応できる十分な耐久性を備えていることも必要です。
2012年からonsemi社のモデリング&シミュレーションソリューションズのフェローを務めるJames Victory氏は次のように述べています。「半導体業界は、今まさに岐路に立っています。アーキテクチャ概念、チップ設計、ダイパッケージングはどれも大きく改善されています。デバイスの機能も日々向上しており、製造能力も大幅に向上しています。」
この業界の大きな変革の1つは、炭化ケイ素(SiC)など、新たに採用され始めた材料のメリットを最大限に活用することです。onsemi社は、このワイドバンドギャップ材料の普及を先導し、シリコンベースの代替材料よりもエネルギー効率が高く、コンパクトでロバストな半導体の生産を推進しています。その結果、小型化と低コスト化の両方を達成しながら、性能が向上した自動車および工業部品を開発できるようになりました。
Victory氏は次のように述べています。「SiCベースの半導体は、シリコン代替材料よりも優れた電気的および熱的特性を備えており、高電圧、高周波数、高温度での動作が可能です。実際、SiCベースのソリューションは、従来のシリコンベースと比較して熱伝導率が4倍向上しています。」
Victory氏は、SiCの優れた電気性能と熱性能は、既存の市場要件を満たすだけでなく、新しい分野や用途も生み出していると語ります。Victory氏は次のように述べています。「650~1200ボルトの範囲で、SiCは、次世代の電気自動車、工業用太陽光およびエネルギー貯蔵、無停電電源、高度な電源、バッテリ充電、その他の高電力システム全般において、性能効率の面で最高のソリューションであることが実証されています。」
電熱問題を解決するAnsysの革新的な機能を紹介する動画をご覧ください。
onsemi社は、SiCの持つ大きなポテンシャルに注目し、この材料を中心とした研究開発に積極的に投資しています。
これらの取り組みでは、Ansysのツールを導入した仮想プロトタイピングプラットフォームでデバイスやテクノロジーの性能を評価しています。Victory氏は、1990年代初頭からAnsysの製品を使用しており、Motorola Semiconductor社、XtremeSpectrum社、Jazz Semiconductor社で、設計支援イニシアチブを主導し、成功させた実績があります。半導体製品イノベーションを推進して、業界をリードするパワー半導体の設計支援機能を開発するために、2012年にonsemi社に入社しました。
onsemi社では、Ansysのシミュレーションを導入したことで、SiC MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)の高速スイッチング特性によって生じる設計上の課題に対処できるようになりました。この高速スイッチング特性は、ダイとパッケージの相互作用を発生させ、半導体のロバスト性と信頼性を低下させる原因となります。同社の製品開発チームは、SiCパワーモジュールを確実に大量生産するために、電気的、熱的、機械的な相互作用だけでなく、それらがモジュールの性能や信頼性にどのように影響するかを理解する必要があります。
Victory氏は次のように述べています。「モデリングとシミュレーションは、どのような業界にも適用でき、効果を発揮しますが、特に半導体メーカーにとって大きな価値をもたらすことを実際に見てきました。半導体メーカーは、モデリングとシミュレーション機能を活用することで、大きな競争優位性を得ることができます。」Victory氏は、onsemi社のSiCチップのような画期的な設計を実現するための開発サイクルを短縮する上で、シミュレーションを採用することが最良の方法であり、半導体メーカーはシミュレーションを使うことで、日々進化するテクノロジーや市場の変化に後れを取らず、イノベーションを進めることができると考えています。
Victory氏と彼のチームは、Ansysとのコラボレーションを通じて、onsemi社のSiC MOSFET工業用パワーモジュールの妥当性確認に使用されるマルチフィデリティ熱モデリング(MFIT: Multifidelity Thermal Modeling)プロセスを自動化および高速化するための新しい手法を開発しました。
この革新的な独自アプローチについては、IEEE Explore社が発行した技術論文『Automated Multidisciplinary Analysis and Lab Verification for Silicon-Carbide Based Power Modules』に詳細が記述されています。
onsemi社とAnsysが共同開発した、Webベースの自動化されたMFITプロセスにより、SiCベースパワーモジュール設計の電熱モデリングが高速になり、その精度も向上しています。また、onsemi社とAnsysは、以下の機能を備えた、完全かつ自動化された初のパワーモジュールシミュレーションプラットフォームを共同で開発しました。
エンジニアが炭化ケイ素(SiC)ベースのパワーモジュールの設計を繰り返す中で、onsemi社のオブジェクトベースアプローチはより自由度の高い創造が可能になる。画期的なクリップ設計ツールは複雑な設計に対応しているため、モデリングチームはさまざまなクリップ形状や方向を調査して、全体的な性能を最大限まで向上させることができる。
onsemi社が開発した自動化ワークフローは、従来のモデリングアプローチよりもはるかに高速で正確です。たとえば、代表的な有限要素法解析(FEA)モデルの作成フローには、エラーが発生しやすく時間もかかる、CADソリッドモデルを作成するためのタスクや、その後続のシミュレーションのプリプロセスステップでのモデルのインポートや最適化があります。onsemi社とAnsysが共同開発した新しいワークフローでは、最小限のユーザー操作で完全にスクリプト化された3Dソリッドモデルの自動作成が可能となっています。
また、この革新的なプロセスでは、特定のソリッドモデルにカスタマイズされたメッシングと解法が自動的に適用されることで、不要なステップが排除されます。たとえば、チップの活性領域のモデリングは熱解析にとっては意味があるものの、すべての信号コネクタのモデリングは電気的な効果を測定する場合にのみ必要です。このように、ユーザーの最終的な解析目標にあわせて、プロセスが自動的に適応されます。
自動化されたMFITアプローチは、所定の順序でソリッドジオメトリを積層する従来のワークフローよりも柔軟性が高くなっています。onsemi社のプロセスはオブジェクトベースであるため、各モジュールは、アセンブリのバックボーンを定義するルートオブジェクトから始めて、ボトムアップアプローチで構成できます。新しいレイアウトや複雑な形状にも容易に対応できるため、製品のイノベーションが促進されます。
onsemi社とAnsysが共同開発した、自動化されたMFITプロセスは、SiC MOSFETパワーモジュールの3Dモデル(左)を使用して最終製品(右)の性能を非常に正確に予測できることが実証された。
独自のMFITアプローチを採用した成果は、onsemi社のさまざまなSiC MOSFET工業用パワーモジュールのラボテストで実証されています。Ansysのツールと自動化されたワークフローを使用することで、複雑な電熱問題を迅速かつ自信を持って解決できるようになりました。
Victory氏は次のように述べています。「実機試験とプロトタイプ作製を通じて、当社のMFITが高い精度で成果を上げることが証明されました。このように最初から適切に設計された機能により、革新的で競争力のある製品を短期間で市場投入できることは、当社にとって大きな強みとなります。」
Victory氏は、SiC製造に関連する材料と製造プロセスは非常に高価である点にも言及しています。つまり、同社のMFITプロセスは、生産投資を行う前に、そして設計の非常に早い段階で製品性能を予測できることで、大幅なコスト削減にもつながります。
Ansysと共同開発した自動化されたMFITプロセスは、現在ではonsemi社のエンドツーエンドの開発プロセスの重要なコンポーネントとなっているとVictory氏は語ります。MFITプロセスのスピードと高い精度により、onsemi社は、お客様が求めるさまざまな用途に対応したSiCの商業化において業界をリードすることが可能になりました。
さらに、Victory氏は次のように述べています。「他の多くのイノベーションと同様に、SiCへの移行はエンジニアリングと設計の大きな課題をもたらします。しかし、長年に渡るAnsysとの連携のおかげで、イノベーションに直結する新しい設計、プロセス、シミュレーションフローを開発でき、こうした課題に対処できるようになりました。」
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