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Ashbyプロットとは

Ashbyプロットは、エンジニアリング、機械設計、材料科学、化学など、材料の特性が特に重視される分野で広く使用されています。開発者であるケンブリッジ大学のMichael Ashby教授にちなんで命名されました。

端的に言えば、Ashbyプロットは、x軸に1つの材料特性、y軸に別の材料特性を示す2D散布図です。特定の用途に材料を選択する際に、このプロットを使用して、材料特性やコストなど、さまざまな開発パラメータ間のトレードオフを調べることができます。特定の目的を満たす必要がある材料を選択する際に、さまざまな因子や特性を比較するための手法となります。Ashbyプロットは、あらゆるタイプの材料を比較するために使用できます。3Dプロットは可視化が困難ですが、2DのAshbyプロットでは追加の特性に関する情報を色分けして表示することができます。

Ashbyプロットは、材料科学や特定の特性(機械、熱、物理、電気、環境など)が製品の要となる分野で使用できます。特定の業界に限定されない幅広く活用できるツールであるため、エンジニアにとって非常に汎用性の高いツールとなります。Ashbyプロットが広く導入されている分野は、自動車、航空宇宙、コンシューマー向け製品、発電、建設業界、そして学術界などです。 

Ashbyプロットの一般的なタイプ

どのタイプのAshbyプロットも、視覚的な材料選択とスクリーニングを実行するためのツールとして機能し、各種の材料のさまざまな特性の組み合わせを調べることができます。他の因子やコストによって特定用途での採用が制限されることも多いため、最先端の材料、需要の高い材料、または広く採用されている材料が選択されないことがあります。Ashbyプロットでは、材料のジオメトリ、入手可能性、持続可能性、コストなど、必要となる特性とその他の因子の間でトレードオフを行います。すべての因子の中で最もメリットの高い結果をもたらす材料は、選択プロセス時に選択される材料です。

Ashbyプロットでは、複合材料、ポリマー、金属、合金、高エントロピー合金、天然材料、伝統セラミックス、またはファインセラミックスなどの材料クラスを色分けして表示します。

youngs modulus gpa

強度(ヤング率)とコスト(単位体積あたりの価格)のトレードオフを示すAshbyプロットの例

設計プロセスでAshbyプロットを使用すると、より適切な材料を見つけて既存のコンポーネントの性能を向上させたり、新しい用途に適した材料を見つけることができます。

mass per unit of stiffness

特定の用途に適した最も軽い材料や最も安い材料を特定するために、曲げ加工されたパネルのパフォーマンス指標を使用したAshbyプロットの例

Ashbyプロットでは、強度、コスト、環境への影響、軽量化など、任意の2つの材料特性を比較できます。ここでは、エンジニアがよく使用する特性の比較例を以下に挙げます。

  • 密度とヤング率の比較
  • ヤング率とコストの比較
  • 降伏強度と破壊靭性の比較
  • 環境への影響と任意の対象材料特性の比較
  • 密度と最大動作温度の比較

Ashbyプロットを使用した適切な材料の選択

Ashbyプロットは、材料選択を中心としたAshby法で使用されるグラフです。Ashby法では、まずすべての材料クラスで利用可能なすべての材料を検討対象とし、より具体的な材料要件と制約を考慮しながら、より狭い範囲へと絞り込んでいきます。

選択肢を絞り込むために、エンジニアは次のような質問に基づいて用途の設計要件を細分化する必要があります。

  • 設計対象は何か。
  • 製品の目的や機能は何か。
  • 必要となる荷重要件は何か。
  • 許容値はどうなるか。
  • 高温特性は必要か。
  • 腐食性物質に対する耐性は必要か。
  • ジオメトリの制約は何か。
  • 二酸化炭素排出量は重要か。

こうした設計に関する質問に答えることで、その材料の重要な特性、材料の必須要件、トレードオフに柔軟に対応できそうな特性を特定できるようになります。

材料の目的が特定されると、制約や必須の特性に対して材料のスクリーニングが実行され、適切な材料の選択肢が絞り込まれます。これらの制約の範囲外のものはすべて除外されますが、残りの材料は、最も適切な候補に基づいて(コストなどの因子を考慮しながら)検討が行われ、ランクが設定されます。結果のAshbyプロットには、制約によって除去されなかった材料のみが表示されます。プロットされた材料特性は、多くのケースでは単一の値ではなく、(パフォーマンスの代表的な変動が考慮されて)範囲として表示されます。したがって、材料は、それが示す可能性のある特性範囲を表す泡のような形態として表示されます。

単純な目的の場合、通常は1つまたは2つのAshbyプロットと他の制約を組み合わせるだけで、結論に達することができます。しかし、多くの高度な応用分野では、特定の荷重条件下における具体的なジオメトリを比較するなど、複数の手法が必要となります。そうした場合は、複数のAshbyプロットを使用したり、パフォーマンス指標を使用して用途に適した材料を特定できる、より複雑なAshbyプロットが必要です。

パフォーマンス指標を使用した手法

より複雑な応用分野や特定用途では、単純なAshbyプロットでは不十分で、パフォーマンス指標が必要になることもあります。パフォーマンス指標は、Ashbyプロットの軸上に示された単一の属性値ではありません。プロットの単一軸を使用して複数のパフォーマンス因子を解析できる、材料特性の複数の属性を数学的に組み合わせたものです。この指標を使用することで、複数の目的を扱うときに視覚要素が簡素化され、1つのプロットで多数の因子を考慮しながら、適切な材料を特定できるようになります。

パフォーマンス指標のシンプルな例は、曲げ加工されたパネル、圧縮された柱、ねじりが加えられたシャフトなどです。たとえば、曲げ加工されたパネルの例では、必要なパフォーマンスに応じたパネルの厚さなど、設計中に変化する可能性のある自由変数があります。また、設計中に変更できない固定変数も特定しなければなりません。これは、たとえば、特定のスペースに収めるために指定するパネルの長さと幅です。

これらを決定すると、次に制約条件を特定できます。制約条件は、材料の挙動に基づいて設定します。たとえば、特定の点を超えて曲げてはならない剛性制限設計や、特定の荷重下で破壊できない強度制限設計などです。制約条件によって示されるのは、特定の条件下で材料が破壊するかどうか、そして破壊されない材料の特定です。

これらの因子はすべてパフォーマンス指標に組み込まれ、エンジニアは特定のシナリオで設計を最適化するために、さまざまな材料や材料クラスをランク付けできます。このように、パフォーマンス指標ではジオメトリと荷重がある程度まで考慮されます。これは単に「最もコストの低い材料」を示すだけではありません。具体的な制約に応じて、剛性制限設計における曲げ加工されたパネルに対して「最もコストの低いオプション」を示すことを意味します。たとえば、金属から、さらに薄い部品を生成することはできますが、それよりも厚みのあるプラスチックの方が全体的に軽量であり、特定のシナリオではより有利になることもあります。パフォーマンス指標は、シナリオごとに手作業で導き出したり計算したりできますが、現在、パフォーマンス指標を最も迅速かつ簡単に使用する方法は、幅広いエンジニアリングシナリオをカバーし、簡単に選択できる形式で事前定義されたパフォーマンス指標を組み込んだソフトウェアを導入することです。

Ashbyプロットのケーススタディ: 自動車用途での適切な材料の特定

用途に応じて、さまざまな状況が発生し、スクリーニングできる材料も異なります。以下に、Ansys, part of Synopsysのエンジニアが、パフォーマンスを向上させるために、既存の材料に代わる新しい材料を特定するまでの一般的な流れを示します。この例では、自動車用クロスビームに現在採用している砂型鋳造357アルミニウム合金に代わる新しい材料を探します。アルミニウム製クロスビームに大きな問題はありませんでしたが、軽量な新しい材料を見つけて自動車部品の重量を削減し、車両全体が環境に及ぼす影響を軽減できる方法を検討しました。

選択プロセスを開始するために、クロスビームは曲げ加工されたビームに近似されました。ビームの長さと形状は変更できないものの、必要に応じてビームの面積(断面)は変更できるという状況で、固定変数と自由変数を決定しました。

自動車用クロスビームの制約条件はその強度であるため、破壊せずに荷重に耐える十分な強度を有する材料であることが必要です。質量も重要な目的の1つです。最初のAshbyプロットでは、2つのパフォーマンス指標を使用しました。Y軸は曲げ加工されたビームの強度単位あたりの質量、X軸は曲げ加工されたビームの強度単位あたりのコストです。この初期解析では、ファインセラミックスから金属、合金、そして伝統セラミックスまで、多くの材料ファミリーがこの用途に適していることが判明しました。厚さはあるが軽量な材料、薄いのに重量がある材料など、その密度に応じてさまざまです。

この時点では、除外された材料は1つもなく、自動車向けとしてはまったく採用できない材料のリストとなりました。たとえば、強度単位あたりの質量やコストの観点からは厳密には問題はなくても、木材やコンクリートといった材料は自動車には適しません。妥当な制約が適用されると、採用が現実的でない材料が除外され、適切な材料だけが残りました。自動車用クロスビームの場合、十分な機械特性、広い動作温度範囲(-40~100°C)、少なくとも真水と塩水に対するある程度の耐性などの制約があります。

これらの制約を適用した後、Ashbyプロットの下部側に残った材料は最も軽量ですが、炭素繊維複合材料のように高価になる傾向があります。また、Ashbyプロットの左端に示された選択肢は価格が最も安いものの、重量が高くなる傾向があります。低質量と低価格の妥協点について、グラスファイバーを充填したPA66(ナイロン66)グレードのポリマーは、すべての要件を満たす優れた代替材料となり得ることが判明しました。そして、候補となったこの材料に対して、さらなる解析、シミュレーション、そして実機試験が実行されました。

プロットのデータソースはAnsys MaterialUniverseデータベースです。これは数千件もの一般エンジニアリング材料と包括的で比較可能な関連情報が格納されたAnsys固有のデータベースであり、特にAshbyプロットを使用した材料選択やパフォーマンス指標の調査に適しています。

Ashbyプロットの制限事項

Ashbyプロットを使用することには多くの利点がありますが、完璧な方法ではありません。他の解析手法と同様、いくつかの制限事項はあります。以下に、Ashbyプロットの制限事項を示します。

  • 1つのAshbyプロットで、2つまたは3つ以上の因子を同時に比較することはできません。それを行うには、複数のAshbyプロットを作成して、データを並べて比較する必要があります。
  • Ashbyプロットは単一の回答や最良の材料を示す手法ではありません。より詳細に調査する必要がある材料群や候補となる複数の材料を提示する視覚的な手法です。パフォーマンス向上のためにどの程度のコスト増加が許容されるかなど、企業ごとに各トレードオフ因子の重要度を決定しなければならないため、エンジニアの判断も必要となります。
  • 材料が特定用途に適しているかどうかを完全に理解するためには、Ashbyプロットを他の検索および選択クエリと併用する必要があります。
  • Ashbyプロットには、完全で比較可能なデータが必要です。それは特性に関するデータがない場合、材料をプロットすることができないからです。こうした理由から、Ansys MaterialUniverseデータベースは最適なデータソースとなります。

Ashbyプロットの作成ツール

Ashbyプロットは、材料選定ソフトウェアのAnsys Granta Selectorや材料データ管理ソフトウェアのAnsys Granta MI Enterpriseなど、材料情報、選択、データ管理製品コレクションであるAnsys Grantaを使用して作成できます。Ansys Grantaでは、データをプロットしてラベルを付けることができ、任意の数の制約と要件を含めることで、材料の選択肢をより詳細に調査できるいくつかのオプションまで絞り込むことができます(たとえば、制約を設定することで、材料の数を数万件から5~10件程度まで減らすことができる)。

Ansys Granta Selectorは、材料選択タスクを目的としたスタンドアロンプログラムです。設計者、シミュレータ、材料科学のエキスパート向けのWindowsデスクトップベースのソリューションです。Ansys Granta MIは、企業が独自の材料データを管理および保存するために使用する、材料の検索と選択を実行する機能を備えたエンタープライズレベルのソフトウェアです。どちらのツールも、材料データからAshbyプロットを作成できます。

どちらかのGrantaツールを使用して材料を選択した後は、構造の有限要素法解析ソフトウェアのAnsys Mechanical、3D製品シミュレーションソフトウェアのAnsys Discovery、高度な電磁界ソルバーのAnsys Maxwell、高周波電磁界シミュレーションソフトウェアのAnsys HFSSなど、Ansysの他のツールを使用して、さまざまな用途におけるシナリオで材料をシミュレーションできます。関連データをGrantaから他のツールに直接エクスポートして、目的を達成する材料候補をより詳細にシミュレーションして、最適な材料を見つけることができます。

Ashbyプロットの活用方法や、用途に適した材料または材料セットを選択する方法について詳しく知りたい場合は、今すぐAnsysのエキスパートにお問い合わせください

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