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大勢の人々の生活を向上させるような製品を開発している企業はそれほど多くありませんが、垂直離着陸(VTOL: Vertical Takeoff and Landing)機を開発するBluJ Aero社は、まさにそれを目指しています。
BluJ Aero社の従業員
BluJ Aero社の共同創設者兼CTOであるUtham Kumar Dharmapuri氏は、航空機での近距離の移動や当日配達から無人機による緊急避難まで、さまざまな用途に対応できる柔軟性が高いワールドクラスの航空機を同社が開発することで、「職業や社会的地位に関係なく、あらゆる人々の生活が向上する」と述べています。同社の製品は、特定地域間での交通や輸送における高いコストと非効率性、配送サービスの需要増加への対応など、今日の航空業界が直面している複数の重要な課題の解決策となります。
同社がどのように製品開発を実現しているかについて、「シンプルで持続可能な航空機を開発するというビジョンのもと、BluJ Aero社は設立されました」とDharmapuri氏は述べています。BluJ Aero社の持続可能性は2つの部分から成り立ちます。
また、高度なエアモビリティ(AAM: Advanced Air Mobility)業界の動きに合わせて、従来型の航空ソリューションから離れ、自律テクノロジー、従来とは異なる推進システム、コンパクトな設計、離着陸専用に設定された区域であるバーティポートやスカイポートなどのテクノロジーや手法を重点的に採用し始めています。
Dharmapuri氏は次のように述べています。「希望するすべての人がこうした航空機を利用して目的地まで移動したり、商品を配送したりすることを実現したいと考えています。滑走路は必要ありません。必要なのは、機体を安全に離着陸させるためのスペースだけです。」
BluJ Aero社は、すでにその第一歩を踏み出しており、自社初となるVTOLプロトタイプの飛行に成功しました。Dharmapuri氏は次のように述べています。「SFの世界は、想像していたよりも身近にありました。」ただし、今後もさまざまな取り組みを進める上で、AAM業界で共通するいくつかの障壁を乗り越える必要があります。
SFの世界を実現することは容易ではありません。まず、資金面でいくつかの課題があります。BluJ Aero社の共同創設者兼CEOであるAmar Sri Vatsavaya氏は、次のように述べています。「このような長期的なアイデアに投資するためには、世界的に見ても多額の資本調達と投資家の強い投資意欲が必要です。」さらに、資金調達に成功した後も、事業化を進めたり、テクノロジーの重要性を潜在的な顧客に示したりするという課題があります。
さらに、規制に関する課題もあります。Dharmapuri氏は次のように述べています。「規制当局だけでなく、一般の人々も、自宅の窓のすぐ横を航空機が飛んでいるような状況には慣れていないでしょう。しかし、航空機が当たり前のように飛び交う未来が来ると私たちは考えています。それを実現するためには、規制が重要になります。」この点について、同社はインド民間航空総局(DGCA: Directorate General of Civil Aviation)と当初から協力して取り組んできました。
さらには、新しいテクノロジーを広く採用しながら、新しい革新的な方法で既存のテクノロジーを活用しているAAM自体の特長も新たな問題を生み出します。このテクノロジーは新しい可能性を開く一方で、数百キロを飛行後し、密集した都市部で静かに着陸できるVTOLの設計など、新しい技術的課題にもつながります。
バーティポートに駐機するBluJ Aero社の垂直離着陸(VTOL)機
結局のところ、これらの課題は複数の要素を含んでおり、AAMについても「テクノロジーと規制の両面で対応できるように責任を持って製品を設計および開発しなければなりません。」とDharmapuri氏は述べています。技術的な側面だけでなく、投資家、規制当局、潜在的ユーザーにとって有用となるソリューションを見つけるために、BluJ Aero社の開発チームはAnsys, part of Synopsysのシミュレーションを導入しています。
コスト削減はすべての企業にとって重要ですが、特にスタートアップ企業にとっては重要な目標の1つです。そのため、BluJ Aero社の開発チームはAnsysスタートアッププログラムに参加し、Telled Marketing社の支援も受けました。
スタートアッププログラムに参加したことで、「当社のような企業が必要としているすべてのシミュレーションソリューションが統合されたバンドル製品」にアクセスできるようになったとVatsavaya氏は述べています。Ansysのさまざまなソリューションを1つにまとめたバンドル製品は、手頃な価格で利用できるだけでなく、予算計画にも役立ちます。
Vatsavaya氏は次のように述べています。「これらのツールを導入する際に、最も効果的なトークンやライセンスの組み合わせといったコストに関する事柄ではなく、ツールの活用方法を中心に検討することができました。これは、Ansysスタートアッププログラムを通じて得られた予期せぬメリットでした。スタートアップバンドルの1年目の価格は非常に手頃です。それはプログラムに参加しなかった場合に必要となるコストよりもはるかに低く、資金が限られている起業直後には大いに助かります。」
さらに特筆すべきは、このバンドルには、スタートアップパッケージに固有の製品であるハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)も含まれていることです。
BluJ Aero社は、Ansysスタートアッププログラムを通じて、航空機の内部および周囲の流れの相互作用を解析するための流体シミュレーションソフトウェアであるAnsys Fluentなど、必要となる高度なソフトウェアを利用できるようになりました。これにより、VTOL内部で空気や流体がどのように循環しているか、VTOL設計の空力特性やエネルギー使用効率が最大限まで達成できているかを解析できました。また、構造有限要素法解析(FEA)ソフトウェアであるAnsys Mechanicalを導入して、すべての要件と規制を満たす最適化されたVTOLを設計できるようになりました。
VTOLの翼における流れの速度の大きさのシミュレーション
さらに、複合材用のAnsys Composite PrepPost(ACP)ツールを使用して水素貯蔵用のType IV複合材圧力容器を設計し、非線形構造ダイナミクスシミュレーションソフトウェアであるAnsys LS-DYNAを使用してモデルをよりシームレスに解析しました。今後は、高度な電磁界ソルバーであるAnsys Maxwellを自社プロセスに組み込むことを検討しています。
BluJ Aero社でのシミュレーションソフトウェアの導入例の1つとして、一から自社で開発しているプロペラを見てみましょう。プロペラは設計が非常に難しいコンポーネントとして知られていますが、Ansysのツールを使用することで、「適切に設計されている部分と問題がある部分を素早く確認できるため、アイデアが浮かんだらすぐに解析して問題がないか調べることができます。」とDharmapuri氏は述べています。
シミュレーションを実行した後、忠実度の高いAnsysのモデルの結果を既存のプロペラ設計と比較しました。Dharmapuri氏は次のように述べています。「このツールを使用して検証と交差検証を行うことができました。Ansysのツールは、実環境での結果を5%以内のばらつきで予測できることがわかりました。プロペラの開発において、これは非常に良く相関していると言えます。信頼できるベンダーが製造した実際のプロペラとのばらつきが5%以内であれば、好調なスタートを切ったと言えるでしょう。」
BluJ Aero社がシミュレーションを導入している製品はプロペラだけではありません。シミュレーションソフトウェアを使用することで、エンジニアはさまざまな環境条件下で反復的な設計変更と性能を迅速に解析できます。そうすることで、「従来であれば非常に長い時間がかかっていた生産までの時間や、設計を反復して試行する時間を短縮できます。」とDharmapuri氏は述べています。
現代のエンジニアにとって、シミュレーションや解析は不可欠です。Dharmapuri氏は次のように述べています。「実際の稼働環境で、あらゆる構造のあらゆる要素をテストすることはできません。それを行う唯一の方法は機体を実際に飛ばすことですが、その段階でさまざまな要素をテストするのでは遅すぎます。」実際には、設計や開発の開始時からシミュレーションを導入する必要があります。
チームの現在の目標に関わらず、「当社の開発プロセスにおいてシミュレーションは非常に重要な役割を担っています。」とDharmapuri氏は述べています。「私はこの業界に18年間携わってきましたが、もはやシミュレーションなしで設計することはありません。設計においてシミュレーションツールが不可欠であるということが、シミュレーションツールの素晴らしさを証明していると言えるでしょう。」
BluJ Aero社は、わずか3年で大きな進歩を遂げました。2人のエンジニアと1人の教授が航空機の草案を作成してから、プロトタイプの飛行に成功するまで、航空機の開発において可能性は無限大であることを実証してきました。同社は商品搬送ソリューションとして開発した航空機で、2026年に市場に参入する予定です。
充電ステーションに駐機するBluJ Aero社のVTOL
BluJ Aero社では、自社テクノロジーを今後も拡張させ、可能性のある新たな適用分野への挑戦を続けていく予定です。Vatsavaya氏は次のように述べています。「ワークフロー全体を可能な限り自動化したいと考えていますが、Pythonスクリプトに移行しているAnsysのツールがこの点でも大いに役立つと思います。」これにより、同社では設計時間をさらに短縮できると予想しています。
さらに、開発チームは認証の取得に向けて取り組みを続けています。Dharmapuri氏は次のように述べています。「Ansysのツールは、航空業界から認定され、受け入れられているため、当社の製品をより迅速に認証できるようになります。」
また、マルチフィジックスシミュレーションを導入して、優れた空力特性だけでなく、燃費が良く静かなVTOLを設計するなど、複数の目標を同時に達成できる設計の実現も計画しています。
Dharmapuri氏は次のように述べています。「シミュレーションを導入することで、製品の生産時間を大幅に短縮できます。」
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