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2024年1月上旬、航空宇宙システム研究所(ASRI)の学生と職員20名がフロリダ州オーランドを訪れました。
ASRIのメンバーは、世界最大級の航空宇宙会議の1つである米国航空宇宙学会(AIAA)主催の2024 SciTech航空宇宙会議に参加し、専門知識を共有できることに大きな期待を抱いていました。彼らは5日間の会議で15の論文を発表し、研究成果を世界中から集まった参加者と共有しました。
米国航空宇宙学会(AIAA)会議に参加した航空宇宙システム研究所(ASRI)のメンバー
この経験により、ASRIは野心的な目標の達成に一歩近づくことができました。ASRIのシニアエンジニアであり、ロケット推進要素の推進システムおよび熱・構造設計を専門とするNino Wunderlin氏は、その目標の1つとして、「南アフリカとアフリカのための独自の打ち上げ能力」の開発を挙げています。同氏はこう述べています。「私たちは、この最終的な目標の達成に必要な技術と熟練した人材を育成したいと考えています。」ASRIはこの目標の一環として、工業製造拠点と非常に複雑なロケット部品の開発・生産にも注力しています。
目標を達成することは容易ではありませんが、ASRIはチームが追求しているいくつかの主要なプロジェクトを通じて、この課題に取り組む準備をしています。
観測ロケットは宇宙産業の発展に不可欠なものです。観測ロケットを利用して実験装置を宇宙空間の限界まで打ち上げ、ロケットを地球に自由落下させます。これにより、微小重力などの現象を調査し、ミッション計画の改善に役立つ情報を得ることができます。
ASRIは、Phoenixハイブリッド観測ロケットプログラム(HSRP)を通じて、数年にわたり観測ロケットの開発に取り組んできました。現在、7回目の実施を迎えています。Phoenix HSRPは、推進技術、機体設計、モータ製造の進歩に貢献するだけでなく、ASRIの発展を支援し、次世代の宇宙イノベーターにインスピレーションを与える取り組みも行っています。Phoenix HSRPの主な目的は、南アフリカとアフリカの科学界のニーズを満たす民間向け観測ロケットを開発することです。Wunderlin氏は第3回目からロケット開発に参加し、主に、Phoenixの燃焼室、ノズル、フィンアセンブリの設計と構造の最適化に取り組んできました。
Phoenixは、これまでにも記録を塗り替えています。たとえば、Wunderlin氏は、このプロジェクトにおいて最も誇りに思う出来事として、「Phoenixが18kmまで飛行し、アフリカのハイブリッドロケットの高度記録を破ったとき」を挙げています。ASRIは今後、このプロジェクトを、アフリカの物理学コミュニティ全体で利用できる、到達高度100kmの観測ロケットを打ち上げる土台として活用したいと考えています。
ロケット打ち上げ
また、ASRIは、SAFFIRE(South African First Rocket Engine)プロジェクトでこれまでの限界を超えるエンジン設計に挑んでいます。これは、Wunderlin氏とASRIの多くのメンバーが注力する重要な取り組みです。
SAFFIREは、ケロシンと液体酸素を電気ポンプで供給する27kNのポンプ供給式液体推進剤ロケットエンジであり、独自の軌道級ロケットの動力源として設計されています。SAFFIREの主な利点の1つは、モジュール式のコンパクトな設計であり、さまざまな構成や打ち上げ機の一部として使用することができます。このため、幅広い用途が考えられ、その1つとして、CubeSatを低地球周回軌道(LEO)に低コストで投入できることが挙げられます。
Wunderlin氏は次のように述べています。「この取り組みは私にとって最もエキサイティングなものです。なぜなら、南アフリカでこの最先端技術を研究しているのは私たちだけであり、南アフリカの産業界の最前線に立っていると言えるからです。」SAFFIREにより、ASRIはアフリカ大陸全域でSmallSat打ち上げロケットの能力を強化できる可能性があります。
ASRIによる設計の試験
ASRIは、目標に向かって前進し、技術を進歩させ続けるために、いくつかの大きな課題に取り組んでいます。その1つが、過酷な宇宙環境に対応する製品の開発に関連することです。Wunderlin氏は次のように語っています。「部品をテストする際、二度目のチャンスはほとんどありません。機能するか、しないかのどちらかです。」ASRIはリスクを最小限に抑え、最初から正しい設計を行うために、シミュレーションソフトウェアを採用しています。
Ansys Student Team PartnerであるASRIは、構造有限要素法解析(FEA)ソフトウェアであるAnsys Mechanical、Ansys Composite PrepPost(ACP)ツール、Ansys Material Designerソリューション、流体シミュレーションソフトウェアであるAnsys Fluentなど、大きな成果をもたらすシミュレーション製品の「幅広く、密に連携したエコシステム」(Wunderlin氏)を利用することができます。Wunderlin氏はこう述べています。「私たちのリソースは限られています。部品を実際に製造する前でも、すべてをチェックしてシミュレーションできるAnsysのソフトウェアは、私たちにとって非常に貴重なツールでした。実際、開発時間を短縮し、高額な費用がかかる可能性のある実機試験の反復を減らすことができました。」
ASRIのシミュレーション作業の一例として、MechanicalとACPを使用して高精度なFEAを実施する場合を挙げます。ASRIは、Ansysアカデミックプログラムを通じてAnsysのシミュレーションソフトウェアを活用することで、重要な部品はもちろんのこと、SAFFIREとPhoenixの主要な構成材料である複合材のような取り扱いが難しい材料に関しても、徹底的な分析を行い、構造健全性や振動モードなどを解析しています。Wunderlin氏は次のように語っています。「Ansys ACPとMechanicalを組み合わせることで、構造的にも熱的にも最も効率的な部品を設計することができます。」
燃焼室の相当応力有限要素法解析(FEA)
ASRIでは、設計の外部抗力と空力荷重条件を求める際にFluentを使用しています。その結果は、Mechanicalで行われる構造検証解析の入力として使われます。さらに、燃焼シミュレーションに加えて、インジェクタや再生冷却流路の設計時の内部流れ解析にもFluentを使用しています。このように複数のAnsysのソフトウェアを組み合わせることができることは、ASRIにとって大きな利点です。Wunderlin氏は、「他のソフトウェアでは実行きない熱ー構造解析や流体ー構造連成解析(FSI)をシームレスに実行できます。」と語ります。
ASRIは、AnsysのテクノロジーパートナーであるCFturbo社のソフトウェアとFluentを連携させて使用し、SAFFIREのポンプに搭載されるターボ機械の開発を進めることもできました。また、このチームの活動は、Ansys Channel PartnerであるQfinsoft社の支援も受けています。
速度の大きさの解析
Wunderlin氏は、ASRIの活動全般でシミュレーションを活用してきたことを振り返り、こう述べています。「基本的に、ほとんどのミッションクリティカルな部品にAnsysのソフトウェアを使用しています。ASRIのMScプログラムでAnsysのシミュレーションの利用を奨励しているのは、当研究所の研究目標をサポートしてくれているためです。」
ASRIが課題に打ち勝ち、宇宙に到達するには、構造的に極めて効率的な機体を開発する必要があります。Wunderlin氏は、「削れるものは何でも削らなければなりません。」と述べています。シミュレーションソフトウェアは、ASRIがこの目標を達成する手助けとなります。たとえば、ASRIは高度なモデリング手法に加えて、新しい製造技術と材料を使用することで、Phoenixの燃焼室、ノズル、フィンアセンブリの質量を75%削減することができました。
Ansysのシミュレーションは、ASRIの研究開発スケジュールにもメリットをもたらしています。Ansysのシミュレーションにより、「部品が試験台に載る前に、あらゆるものをシミュレーションし、設計を検証できるようになりました。Ansysの製品のおかげで、開発時間を65%短縮できたと推定しています。」とWunderlin氏は語ります。このようにASRIの開発速度が大幅に向上したのは、Ansys Student Team Partnershipによって、ASRIがより多くのライセンスとさまざまなソフトウェア製品を利用できるようになったためです。Wunderlin氏は次のように述べています。「Ansys Studentがなかったら、今の私たちは実現していないでしょう。」
ASRIは、その取り組みを発展させながら、航空宇宙分野全体の発展も目指しています。Wunderlin氏は次のように述べています。「私たちが進めている取り組みは、南アフリカだけでなくアフリカ全体にとっても非常に有益なものになると信じています。このプログラムは南アフリカにおける最先端技術の製造拠点の開発に役立つとともに、航空宇宙工学の道を志す若い学生やエンジニアに刺激を与えるものになるでしょう。」
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