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Ansysブログ

February 13, 2023

Ansysのツールを使用して動脈瘤を瞬時に診断

世界保健機関(WHO)によると、世界の主要な死因の1つは依然として心臓病です。その中でも上行大動脈瘤(AsAA)は非常に多い心臓血管疾患で、人体の主要な動脈である大動脈に異常な膨らみや脆い部分ができる、生命を脅かす病気です。多くの人が動脈瘤とは何かを知っています。血管が突然破裂し、死に至ることもある恐ろしい病気として有名だからです。

しかし、AsAAと診断されたからといって、必ずしも死に至るわけではありません。効果的な治療として生活習慣の一部を改善するケースもあれば、手術が必要になる深刻なケースもあります。朗報としては、AsAAの手術を受けた人の10年後生存率が79%という調査結果があります。

しかし、血管が破裂した場合は、最初の48時間が極めて重要です。この48時間の間に緊急手術を受けられないと、救命率は半減します1 。いずれにせよ、家族歴や医学的専門知識のほか、さまざまな画像技術を用いた関連検査に基づく詳細な臨床評価と確定診断が患者の生存に大きな影響を及ぼす可能性があります。 

解剖学的構造と臨床問題。現在、上行大動脈瘤手術の適用基準は上行大動脈径の評価のみに基づいている。

将来的に、1日という限られた時間内に医療チームが動脈瘤に対して何をすべきかをシミュレーション環境でより迅速かつ正確に特定し、即座に処置を講じて治療を成功させることが可能になるかもしれません。明確にしておきますが、この処置は単独で行われるものではなく、担当医の専門知識、より大きな医療チームによる評価、さらにはさまざまな画像や検査結果によって導かれるものです。

動脈瘤の予防と治療の未来に向けたデジタルツイン戦略

MeDiTATe(動脈瘤の予防と治療のための医療デジタルツイン)によって、シミュレーションが動脈瘤の診断と治療で重要な要素となる可能性があります。  MeDiTATeの研究は、Ansysとソフトウェア企業RBF Morph社との長年にわたるパートナーシップによって支えられています。

現在、MeDiTATeではデジタルツインの活用に焦点を当てた3つの研究プロジェクトが進行しています。これらのプロジェクトは相互に関連しており、複数のプロジェクトを掛け持つ参加者もいます。これら3つのプロジェクトでは、RBF Morph社のメッシュモーフィング技術がAnsysのコンピュータ支援エンジニアリング(CAE)ソリューションとAnsys Twin Builderとともに使用され、AsAAなどの病状の理解を深めるのに寄与しています。

RBF Morph社のCTO兼創設者であり、ローマトルヴェルガータ大学の機械設計准教授でもあるMarco Evangelos Biancolini博士は次のように述べています。「私たちはMeDiTATeに参加する時点で、すでにこのテーマに関連する活動に関わっているのです。動脈瘤の研究は本当に重要で本当に難しいものであり、この研究には学術界と医療業界が共通の目標を目指して協力していく必要があると考えています。このプロジェクトの予算は400万ドルであり、Ansysを含む多くのパートナーに加えて、14人の研究者がこの取り組みに全面的に協力しており、ほぼ100人の医療デジタルツインタスクフォースが形成されています。」

MeDiTATeの大規模な研究者コンソーシアムは医用画像セグメンテーションソフトウェアを使用しながら、Ansysと共同で研究を進めています。研究者は、患者の画像をTwin Builderで作成した次数低減モデル(ROM)と照らし合わせて、病態の変化をリアルタイムで確認した後、この医療デジタルツインモデルから得られたシミュレーション結果を画像に重ね合わせます。これにより、指標やバイオマーカーを抽出し、医学的に何が起こっているのかをさらに理解することができます。 

デジタルツインとリアルタイムシミュレーション

最終的には、Twin Builderで医療デジタルツインを作成することにより、患者固有の形状に忠実なシミュレーションを行えるようになります。その目的は、より多くの情報を外科医に提供して動脈瘤の死亡率を低下させることです。医療デジタルツインを導入すれば、医療上の意思決定プロセスにおいて、さらなるエビデンスと知識に支えられたより確実な判断を下すことも可能になります。

Biancolini氏は次のように語っています。「もし私が患者でこの病気を発症している場合、あなたが提供してくれる新たな視点や追加情報が私の臨床判断に役立つのであれば、もちろんそれに越したことはありません。シミュレーションを導入することで、新たな技術に基づいた、より信頼できる明確な情報を得ることができます。将来的には、デジタルツインが超音波診断装置に搭載されるなど、医療機器の重要な構成要素または一部になる可能性もあります。」

Ansysのソフトウェアが回復への新たな道を開く

MeDiTATeチームは、Ansysベースの医療デジタルツインをデプロイする中で多くの未知の課題に直面していますが、シミュレーションを広範に活用することで得られたメリットもあります。こうしたメリットはまず、Ansys FluentAnsys MechanicalAnsys LS-DYNAなどの高精度なシミュレーションソフトウェアを使用してチームの総合的な経験に反映されます。これら3つのソフトウェアは、チームの作業の大部分を占める、流体、構造、および電気生理学的な流体-構造連成の研究に不可欠なものとなっています。また、MeDiTATeの研究者は、このプロセスにおいてROMを効率的に作成かつ使いやすくするために、Twin Builderを用いたソリューションを展開しています。

研究者は、デジタルツイン開発用の新技術をサポートする十分に確立されたツールを使用することで、より的確に作業に取り組むことができます。これにより、自分たちがどの方向に向かっているのかを把握し、その過程で予想される課題を理解することも可能になります。

Biancolini氏は次のように述べています。「効果的な医療デジタルツインをデプロイするには私たちの研究から得られた最先端のデータが必要ですが、それだけでは不十分です。ROMのデータ圧縮と、それを実行するためのモデルという2つの異なるものも必要です。このデータ圧縮にはハイパフォーマンスコンピューティングが利用されます。Twin Builderでは、大量のデータを抽出してそのデータを使用し、何時間もの計算を実行する代わりにリアルタイムで計算を実行できるモデルを作成することができます。高度な可視化によって、このデータを医療の世界で活用できるように変換することも可能になります。」

メッシュモーフィングとデジタルツインモデルの作成を3次元に

大動脈弁の研究(RBF社のメッシュモーフィング技術を使用)

RBF Morph社のメッシュモーフィング技術は、パラメトリックな形状や形態(つまり、曲線的な特性を持つ形状)を作る上で欠かせないものです。RBF Morph社のソフトウェアは、形状パラメータの定義(たとえば、人工装具の位置決め)に有用であるだけでなく、統計的形状モデリング(つまり、患者コホートに共通する形状の特徴を抽出するためのもの)にも必要です。また、研究者が一般的な患者のモデルを作成するタスクに取り組むプロジェクトで非常に役立ちます。大規模コホートを用いて統計モデルを作成する場合にこのソフトウェアを使用することで、Twin Builderから生成されたデジタルツインが新たな患者に容易に適応してその患者を表現できるようになります。追加のCAE計算は不要です。

現在、この手法は大動脈弓に適用されており、医療画像のセグメンテーションに用いられる3次元スライサーソフトウェアで新たな患者の血流全体のシミュレーションが即座に利用できるようになっています。これによって、磁気共鳴映像法(MRI)またはコンピュータ断層撮影(CT)スキャンなどの断面画像法のデータから、対象領域(ROI)の3次元画像データを抽出することも可能となっています。DITAID(ヒト気道における気流と薬物送達のデジタルツイン)チームも、同様のプロセスを用いてパラメトリックな気道モデルを作成し、患者中心のアプローチでさまざまな肺疾患の治療に必要な薬物送達を決定できるようにしています。

眼科手術の最適化から、個別化された細胞ベースの呼吸器治療の開発大動脈手術の予後改善に至るまで、医療用デジタルツインの可能性は計り知れません。Ansys Twin Builderの詳細については、当社のWebサイトをご覧ください。無料トライアルもご利用いただけます。