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メディアの注目や環境規制、政府の政策議論は主に自家用車やトラックに集中していますが、持続可能性の向上を牽引する大きな可能性を秘めているのが公共交通機関です。世界中で37億8,000万人もの人が公共交通機関を毎日利用し、2,330億ドルの年間売上高を誇る成長産業を支えています。
EVバスは最も急成長している交通手段カテゴリーであり、2024年の27万9,236台から2032年には100万台を超えると予測されています。バスの電動化によるメリットは明白で、その急成長は当然と言えます。EVバスによるCO₂削減量は中国だけで年間44万トンと推定されています。
しかし、イタリアのスタートアップ企業NExT社の創設者兼CTOであるTommaso Gecchelin氏は、世界の交通業界はさらに良くなると確信しています。Gecchelin氏は次のように述べています。「乗客を乗せずに走っているバスをよく目にします。公共交通機関の車両のサイズは最大収容人数に基づいて決められているため、これはどの大都市でもよく見られる光景です。これらの車両では、1日を通して変動する需要に対応できないのです。」
NExT社のモジュール式車両の最高速度は時速60マイル、充電航続距離は200マイル以上である。NExT社の試算によると、この車両は従来のEVバスに比べて、エネルギー消費量を50~60%削減できる。
Gecchelin氏がこうした課題を解決するために2017年に設立したのが、NExT社です。同社のモジュール式電気自動車(ポッド)は、需要に応じて輸送容量を動的に調整できるように設計されており、通勤のピーク時には、ロボットシステムを用いて最大5台のポッドを連結することができます。その結果、最大5台のポッドで構成される、連節機構を持たない車両構成(大型都市バスに匹敵する輸送容量を持つ)が完成することになります。交通当局は、混雑が緩和される時間帯になると、これらを1台または2台のポッドから成る、より小型で輸送容量の少ない構成に変更することができます。
NExT社では、需要に柔軟に対応できるゼロエミッション車両を公共交通機関で運用することで電力消費を50~60%削減できる可能性があると試算しています。これは、ピーク時以外の時間帯には、駆動エネルギーの需要だけでなく、車内の冷暖房の必要性も減るためです。また、公共交通事業者は、使用されていないポッドを計画的に充電できるため、都市では、エネルギー消費を戦略的に分散させ、電力網への負荷を軽減することができます。
従来の定員固定型バスに比べて摩耗が50%少ないNExT社のモジュール式ポッドは、メンテナンスの必要性を低減するとともに、製品寿命を延ばし、長期的な廃棄物削減を実現する可能性があります。また、そのコンパクトなバスは、交通渋滞を最大80%軽減できる可能性もあります。
NExT社のモジュール式車両は、輸送需要の変化に合わせて柔軟に構成を変更できる。交通当局は、需要の低い時間帯には1台のポッドを運用できるだけでなく、従来の全長18mのバスの輸送容量と同等となるように、最大5台のポッドを連結することも可能である。
これらすべてが相まって、魅力的な提案となる一方で、大きなエンジニアリング上の課題も生じています。車両性能の最適化を担うのは、NExT社のチーフエンジニアであるEdoardo Fantin氏を含む8名の開発チームです。Fantin氏は、Braitec Srl社の支援を受けながら、Ansysスタートアッププログラムを通じて、先進的なシミュレーションソリューションを活用し、NExT社の製品ソリューションの安全性、空力特性、応力、およびその他の主要な性能特性を最適化しています。
資金が限られている中小企業におけるイノベーションを促進するために創設されたAnsysスタートアッププログラムは、高度なAnsysソフトウェア、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)リソース、技術サポート、および学習リソースへのアクセスを、2,700社以上のスタートアップ企業に提供してきました。
Fantin氏は、NExT社のモジュール式車両コンセプトの設計を進めるには、シミュレーションを活用できることが極めて重要であったと話しています。Fantin氏は次のように語っています。「エンジニアリング上の課題は重大です。当社の車両が、形状、走行中のドッキング機能、車両ダイナミクス、そしてフリート管理システムの点で全く新しいものであるためです。私たち白紙の状態から取り組み、『電気公共交通の効率性を新たなレベルに引き上げるにはどうすればよいか』という課題の答えを出そうとしたのです。」
Fantin氏は、設計コンセプトの改良と改善にあたり、Ansysのソフトウェアを用いて、幅広い性能特性を調査しました。同氏は次のように語っています。「キャビン構造、車両フレーム、連結システムなどの重要な車両コンポーネントのFEM解析を、構造の有限要素法解析ソフトウェアAnsys Mechanicalを使用して行うことがよくあります。特に連結システムは、連結される車両の質量によって非常に高い応力がかかるコンポーネントであるため、その応力が車両フレームにどのように伝達されるかを確認する必要があります。」
パドヴァとドバイで9台のプロトタイプ車両の走行試験が成功裏に実施された。NExT社は、シミュレーションを利用して製造性を最適化した上で、今年から量産を開始する。
Fantin氏は次のように述べています。「製造前に部品の応力や変形をシミュレーションできれば、実機試験で検証する場合に比べて、時間を大幅に節約することができます。これにより、車両性能を向上させるとともに、軽量化と生産コストの大幅な削減を実現することができました。これはスタートアップ企業にとって極めて重要なことです。」
Fantin氏はまた、非線形動的構造シミュレーションソフトウェアであるAnsys LS-DYNAを用いて、キャビンの横転などの動的シミュレーションも実施しました。さらに、流体シミュレーションソフトウェアのAnsys Fluentを使用し、エネルギー消費量の推定と削減における重要な要素である車両の空気抵抗係数を最適化しました。
Fantin氏は次のように語っています。「Ansysのソフトウェアを初めて使用したのは、パドヴァ大学で工学を学んでいた頃です。このソフトウェアは業界標準とされており、シミュレーションは実際の挙動を正確に再現します。Ansysスタートアッププログラムを通じてAnsysのソリューションやその他のリソースを利用できることを幸運に思っています。」
ECE R66規格に準拠した車両横転衝突試験のシミュレーション
今年、NExT社はモジュール式ポッドの量産を開始します。また、2025年に30台、続いて2026年にはさらに100台のポッドを展開する予定です。同社は、2050年までに地球上で最も持続可能な都市になるというドバイの野心的な目標を支援するため、ドバイ道路交通局と共同で多段階の開発および試験計画を進めており、すでに9台のプロトタイプ車両がドバイと同社の本社所在地であるパドヴァでテストされています。
Fantin氏は次のように述べています。「私たちが今まさに踏み出している一歩は、当社の歴史において最も重要なものの1つです。NExTは車両の量産を開始しますが、これは主に、私たちのビジョンを信じ、支援してくださったAnsysのような戦略的パートナーのおかげです。こうしたパートナーは私たちの成功を支える重要な原動力です。」
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