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1月に、業界の現状に基づいて、Forbes誌が今年の世界的な自動車業界の展望を発表しました。2026年に向けて、こうした動向は継続し、さらに加速する見込みです。
自動車メーカーは、持続可能なモビリティへの橋渡しとしてハイブリッド化を重視しています。一方、電気自動車(EV)は、持続的なインフラストラクチャと手頃な価格という課題の中で安定して成長しています。同時に、ソフトウェア定義車両(SDV)と先進運転支援システム(ADAS)に対する需要の高まりが、人工知能の急速な台頭に直面し、車両の設計、開発、ユーザーエクスペリエンスは新たな局面を迎えています。
2026年以降も競争力を維持するには、メーカーやサプライヤーがAIとデジタルエンジニアリングを効果的に活用して、増大する複雑さとタイトな開発サイクルを管理し、よりスマートで安全、効率的な車両を提供する必要があります。
では、これをどのように成功に導けばよいのでしょうか。その答えは、連携を強化して、より迅速な意思決定とイノベーションにつながるソリューションを見つけることにあります。しかし、多くのOEMメーカーやサプライヤーにとって、チームを横断する意思決定の統合と流れは依然として課題であり、重大な経営上のリスクとなっています。
このような環境で、自動車の高度な複雑さを管理する重要な手法として、モデルベースシステムズエンジニアリング(MBSE)が登場しました。モデルベースシステムズエンジニアリングにより、各エンジニアが協力して要件を検討・決定し、次世代の車両設計を早期により効率的に検証することができます。
「優れた自動車システムエンジニアがいれば、以前なら、テーブルを囲んで議論していたでしょう。いまでは、「バーチャルなテーブル」かもしれませんが」と、Ansys, part of SynopsysのPrincipal Product ManagerであるScott Ragonは語ります。「ドキュメントをやり取りしながら、良い設計を作り出したことでしょう。しかし、車両設計の複雑さが増し、プロセスに関与する人数が増えたため、このやり方はもはや機能しません。従来のシステムズエンジニアリングの手法は崩壊しています。MBSEは、システムズエンジニアリングに代わるより体系的で組織的な代替手段であり、結果を飛躍的に向上させるアプローチです。」
MBSEは可能性を秘めていますが、自動車業界の多くの組織で採用されるには、文化を大きく変革する必要があります。モデル駆動型の手法を採用する必要があり、従来のワークフローを現在の課題に合わせなければなりません。MBSEの場合、しばしば、独自のツールや手法を使用してサプライチェーン全体を統合する必要があります。多くの人はこの移行を手に負えないと考えるでしょう。しかし、必ずしもそうではありません。
MBSEは、情報、フィードバック、要件を交換する主要な手段として、デジタルシステムの使用とデジタルモデルのエンジニアリングに焦点を当てた手法です。ドキュメント中心のシステムズエンジニアリングとは対照的です。この場合、特定のシステムのライフサイクル全体を通じて、デジタルモデルの捕捉、通信、調整、維持が関与します。
MBSEは、自動車のイノベーションにおいて重要な役割を果たすでしょう。相互接続されたシステムの複雑さと、今日のソフトウェア制御される高度な車両システムを適切に管理するために、構造化されたモデル駆動型アプローチを提供します。MBSEは、従来の自動車エンジニアリングによくあるギャップを埋めることもできます。そのために、システム設計プロセスを一元化して、要件から実装までトレーサビリティを確保します。
MBSEが大きな力を発揮すれば、自動車エンジニアは、1つの共有システムアーキテクチャモデルに組み込まれたシステムアーキテクチャの信頼できる情報源を作成することができるでしょう。単一のソースとなるモデルへ普遍的にアクセスできることで、どの車両コンポーネント、サブシステム、システムに取り組んでいるかに関係なく、すべてのステークホルダーが一貫性のある最新の正確な情報にアクセスできるようになります。また、サイロ化されたエンジニアリング手法に起因するチーム間の不整合や冗長性のリスクも軽減されます。
シミュレーションは自動車のMBSEにおいて重要な役割を果たします。シミュレーションにより、エンジニアは主要要件を満たしているかを確認でき、すべてのステークホルダーが製品の挙動に関して容易に理解できるようになり、複雑な問題に対処することが可能になります。EVおよびSDVの場合、MBSEは設計要件を適切なシミュレーションワークフローに接続し、検証と妥当性確認を高速化します。
たとえば、EVのパワートレイン開発時に、MBSEにより、エンジニアがバッテリーサイズ、モータ仕様、コンポーネント重量のトレードオフを解析して、すべての要件を満たしながら、航続距離、コスト、性能を最適化できます。
AnsysのSenior Principal Application EngineerであるTushar Sambharamは次のように述べています。「電動パワートレインの設計上のすべての意思決定は、コストと比較した性能に帰着します。EV開発において設計上の意思決定に直面した場合、選択を行うことになります。その選択は常に影響を与えます。どのようなセル電気化学、バッテリー冷却システム、またはモータ仕様を選択すれば良いか。また、この選択は、他の選択肢や車両の航続距離などの性能目標やコストにどのような影響を与えるか。このような判断は、MBSEワークフローにより簡単に答えを見つけることができます。」
SDVの開発中に、MBSEは動的なソフトウェアアップデートと高度な車両機能を考慮しながら、電気および電子(E/E)アーキテクチャの定義と改良を容易にします。SDVの機能の多くをソフトウェア駆動型フレームワークにフロントローディングすることにより、開発時に特有の課題が発生します。このタスクは、車両のライフサイクルにわたってさまざまなシステムに生じる動的なアップデートによってさらに複雑になります。
MBSEは、SDVをサポートする複雑なE/Eアーキテクチャの設計、妥当性確認、および保守に必要な基本フレームワークを提供します。その価値は、ADAS、インフォテインメント、自律システム、電動システムをサポートする電子制御ユニット、センサー、アクチュエータ、配線など、多数のコンポーネントを含むプラットフォームを整理・調査することにあります。
たとえば、MBSEを活用してゾーンのE/Eアーキテクチャを定義すれば、車両の特定のゾーン内で機能をグループ化し、中央の高性能コンピュータ(HPC)に接続することで、電子制御ユニット(ECU)の配置を合理化できます。エンジニアは、これらのゾーンをマッピングし、データフローを定義して、安全性、コスト、性能に関する自動車製造要件に対して、車両アーキテクチャの妥当性確認を行うことができます。
MBSEは、継続的統合/継続的展開(CI/CD)ワークフローとプラクティスに対する反復手法を提供し、システムの品質と信頼性を中心にソフトウェア開発ライフサイクルを自動化および強化します。この手法を採用することにより、コード変更の統合からソフトウェアのリリースまで、さまざまな面にプラスの影響を与えるでしょう。
Sambharamは次のように述べています。「エンジニアがソフトウェアを大きく変更する場合、その後、検証と妥当性確認が行われます。直接的にも間接的にも、車両の動作に関する制約のしきい値を超えることはできません。たとえば、ソフトウェアを更新したときにバッテリーが過熱していたらどうでしょう。これは、車の場合は予期しない問題であり、セーフティクリティカルな問題です。CI/CDとは、何かを開発するたびにMBSE手法で妥当性確認を行い、展開に移行する前に正常に機能していることを確かめるということです。」
具体的には、ソフトウェアアップデートのMBSEフレームワークへの継続的統合により、エンジニアは安全性や性能を損なうことなく、既存の車両ハードウェアとの互換性を確保しながら、システム要件に対して変更の妥当性確認を実行できます。これには、テストが成功した後、変更の本番環境への継続的展開を自動的に実行することも含まれます。
OEMメーカーおよびティアサプライヤーにとってMBSEが大きな価値を持つのは、コスト、市場投入までの時間、開発後期の欠陥といった、従来から極めて重要とされてきた優先事項に対して有用である点にあります。MBSEなら、体系的なテストと要件検証を行い、開発サイクルの早い段階でエンジニアが設計上の問題を特定して解決できるため、コストのかかる再作業や生産後のリコールを回避できます。
そのために、多くのAnsysのツールは、車両開発時の自動車エンジニアリングにおけるMBSEの主な目標をサポートします。
Ansysのオープンエコシステムは、これらのシステムの設計に使用されるツール間のギャップを埋めることができます。構造化、効率化され、統合された方法で、チーム、サプライヤー、顧客が協力することを可能にし、他と差別化できる車両技術を提供します。
具体的には、SAMを活用して、設計サイクルの早い段階で設計上の欠陥を検出できます。このツールの優れたリアルタイムコラボレーション機能は、設計プロセスに関与するすべてのエンジニア間のやり取りを効率化し、OEMメーカーとサプライヤーがシームレスにモデルを共有し、システム設計においてリアルタイムで連携することを可能にします。1台の車両に、複数のサプライヤーのコンポーネントが組み込まれていることが多いため、これは重要な利点です。
Ragonは次のように語ります。「SysML V2の登場により、お客様は異なるベンダーのツール間でモデルを共有できるようになるでしょう。Ansysのツールでモデルを作成できるようになり、サプライチェーンの下流にいる誰かが競合ツールを使用していることがわかっている場合は、モデルを提供して、そのツールにインポートできます。このように、SysML v2では、SysML v1の独自性とベンダーロックが根本的に解消されることになります。」
今まさに、MBSEは車両の設計、開発、保守の方法を変革しようとしています。エンジニアが複雑さに対処し、革新的なワークフローにより早期に妥当性確認を行い、EVおよびSDV開発の課題に適切に対応できるようになります。Ansysは、自動車業界全体で MBSE を推進するために、一連のツールとソルバーからなる先進的なソフトウェアフレームワークを提供しています。
SDVの複雑さに関しては、設計段階における安全性への重点がこれまで以上に重要となっています。モデルベースのツールにより、統合の強化、開発効率化、コンプライアンス準拠、サイバー脅威からの保護を実現する方法については、ソフトウェア定義車両における安全なソフトウェアおよびシームレスなアップグレードの実現をご覧ください。
SDV開発にMBSEのアプローチを適用することで、自動車メーカーが性能とコストのトレードオフを早い段階で特定できる仕組みについての詳細は、MBSEによる自動車の安全性、性能、最適化の再定義をぜひご覧ください。
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