Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
宇宙ミッション運用時に精密なミッション計画を立てるためには、宇宙船の質量を正確に把握することが不可欠です。宇宙船の質量は、打ち上げ前には容易に測定できますが、打ち上げ後の測定となると、容易には行えません。軌道測定処理ソフトウェアAnsys Orbit Determination Tool Kit(ODTK)7.10を使用すると、すでに軌道上にある衛星の追跡計測を用いて、衛星の質量とマヌーバ中の質量損失を推定することができます。
ご存じのように、宇宙船の軌道に影響を与える重力を持つ地球と月の質量(大きさと分布の両方)は解明されています。太陽系の他の主要な天体の質量についても、かなり妥当な推定値が得られていますが、これは太陽系を偶然通過する多数の小惑星には当てはまりません。しかし、幸いなことに、ODTKを使用することで、あらゆる惑星、衛星、小惑星の質量推定値を補正し、ミッション計画の精度を向上させることができます。
マヌーバ中の燃料の燃焼や物体の放出などによって宇宙船から失われる質量は記録しておく必要がありますが、残りの質量に影響を与える事象が増加するにつれて、この記録に含まれる不確実性が増大していくという問題があります。たとえば、スラスターは以下のようになる可能性があります。
これらの累積誤差を補正することで、軌道をより高精度に予測し、ミッションの残りの期間で使用できる燃料の量をより正確に推定することができます。
宇宙空間では、近くの惑星で体重計に乗ることはできないため、ミッションの実行中に衛星の質量を推定できる方法が必要です。ODTK 7.10のリリースにより、それが可能になりました。
質量の推定は容易ではありません。多くの場合、質量自体は直接観測できず、他のパラメータも未知であるからです。理論上、軌道に影響を及ぼすパラメータを推定することは可能であり、その典型的な方法は宇宙船の加速度に影響を与えることです。例として、大気抵抗による加速度を考えてみましょう。質量の推定値を導き出せるのは、大気密度、抗力係数、抗力面積に関する正確な知識がある場合です。特に、各コンポーネントが適切に調整される前にミッションが開始された場合には、大気抵抗に関する詳細な知識が限られていることがあります。さらに悪いことに、最良の大気密度モデルにも大きな不確実性が伴います。太陽輻射圧による加速度にも同じ原則が当てはまりますが、この場合、大気の影響を受けることはありません。注意すべき点は、大気抵抗と太陽輻射圧による加速度が、それぞれ速度と太陽の反対方向という既知の方向を持つベクトルであるということです。このため、これらの方向の加速度誤差を分離することで、宇宙船の質量を推定できることになります。
宇宙船のエンジンに影響を与える他のパラメータが高精度で得られている場合でも、マヌーバ中に質量を推定することができます。加速度に基づくロケット方程式が有効です。たとえば、追跡データを用いてマヌーバ中の加速度を推定でき、排気速度を十分に把握していると仮定すれば、観測された加速度を生じさせるために必要な質量流量を推定することができます。質量流量の推定精度が向上すれば、マヌーバ中に消費される質量の推定精度も向上し、結果として宇宙船の総質量の推定精度も向上します。また、大気抵抗や太陽輻射圧の場合と同様に、推力による加速度も、ある程度の精度で把握されている方向を持つベクトルです。
前述したパラメータの精度によっては、衛星の質量を常時推定するか、あるいはマヌーバ中にのみ推定するかを選択したい場合があります。ODTKでは、そのようなオプションを選択できるようになっています。
質量流量と推定マヌーバ性能を関連付けることで、燃料消費量の推定精度が向上し、残りの燃料質量をより正確に推定できるようになる。
ODTKは、以前のリリース時より、質量とそれに伴う重力の推定をサポートしています。小惑星の質量がよく分からないために、これらの天体に向かうOSIRIS-RExのようなミッションが、目的地の不正確な重力モデルに基づいて開始されることがよくあります。しかし、宇宙船の軌道を正確に予測するには、目標天体の質量を正確に推定する必要があります。
宇宙船と目標天体の間の重力を求めるために用いられる方法では、多くの場合、重力定数と物体の質量を1つの値(G*M、またはGM)として扱います。同様に、重力も、目標天体の質量中心に向かう既知の方向を持つベクトルであり、目標天体に向かう加速度の観測結果と、宇宙船の航行中に予測された加速度の間にある差を利用することで、天体のGM値の補正量を推定することができます。
ODTK 7.10のすべての新機能については、リリースノートをご覧ください。
Ansys Advantageブログでは、専門家が投稿した記事を公開しています。Ansysのシミュレーションが未来のテクノロジーにつながるイノベーションをどのように推進しているかについて最新の情報をご覧ください。