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シミュレーションによりEVバッテリ製造の効率を向上

6月 11, 2024

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Laura Carter | Ansys、シニアマーケティングコミュニケーションライター
Kim Hurt | Ansys、インダストリーマーケティング担当シニアマネージャー
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マルチフィジックスシミュレーションを使用して電気自動車のバッテリ製造を効率化することで、コストを削減し、販売を増やすことができます。

国際エネルギー機関(IEA)の報告書によると、世界全体での電気自動車(EV)の台数は、2030年までに8倍増加すると予測されています。しかし、米国ではEV販売店が抱える在庫台数は前年比で506%増となっています。つまり、EVはガソリン車よりも平均で18日長く売れ残ることになります。

これにはいくつかの理由があります。航続距離に関する懸念もありますが、普及を妨げる最大の要因は価格です。EVは、なぜ大半の消費者にとって高額な自動車となっているのでしょうか。

Ansys Customer Excellence、アジア太平洋地域担当バイスプレジデントであるPadmesh Mandloiは、次のように述べています。「電気自動車の車両コストの30~40%は、バッテリに起因しています。さらに、バッテリが機能しなくなったり、走行距離が数万マイルに達して交換が必要となった場合に、このコストはユーザーが負担することになります。こうしたコストが、特にEV生産が減速している米国内の電気自動車市場が冷え込む原因と思われます。」

シミュレーションによるバッテリ生産プロセスの最適化

では、バッテリ市場にとって明るいニュースはあるのでしょうか。世界有数の大手金融機関であるGoldman Sachs社は、ニッケルやリチウムなど、EVバッテリによく使用される原材料の供給が追いつき、全体的な需要が冷え込んでいるため、弱気市場の兆しがあると見ています。おそらく、来年にはEVの価格が下落し始めると予測されています。

これから2025年までの間にバッテリ価格が40%下落すると予測されている理由はもう1つあります。メーカーは、さらにコストを削減するために、実装を簡素化することで複雑さを軽減しています。また、シリコンなどのより優れた材料を選択しています。これにより、充電時間を短縮し、エネルギー密度を向上させ、同じ重量でさらに多くのエネルギーを供給できるようになります。

ただし、こうしたアイデアを実現する際に、従来の製造アプローチに固執すると、効率性と持続可能性が制限されます。製造アプローチを大幅に改革しなければ、生産プロセスの最適化、コスト削減の機会の特定、持続可能性に関する懸念への効果的な対処に引き続き苦労することになるでしょう。

メーカーがプロセスを改善するための明確な方法を把握できなければ、構築/実験/廃棄/繰り返しのサイクルが長引くだけです。シミュレーションは、製造プロセスや生産ラインのさまざまな開発段階に対応するために必要な知見をもたらすことで、コストのかかる試行錯誤の実験を削減し、アップタイムを向上させます。シミュレーションから得られるデータによる知見がなければ、このレベルの複雑さに対応することはほぼ不可能です。

EVバッテリ市場全体では、バッテリセルメーカーが仮想環境で数多くの技術的なエンジニアリング課題に取り組んでいます。シミュレーションを導入し、顧客の仕様を満たし、コストを削減して、品質を維持し、安全性とコンプライアンスを確保しながら、労働力不足の問題に対処し、製品寿命を迎えたバッテリの廃棄とリサイクルを改善して、優れた成果を上げています。

Mandloiは次のように述べています。「物理ベースのシミュレーションと安全分析を活用して、製造に関する貴重な知見を得るバッテリメーカーが増えてきました。Ansysのシミュレーションツールやソルバーを使用することで、バッテリ設計を最適化し、プロセスの拡張性、品質、持続可能性の向上につながる適切な装置やワークフローを特定できるようになります。」

Ansysを採用しているバッテリ製造スケールアップ施設であるUK Battery Industrialization Center(UKBIC)では、シミュレーションを活用して、成長を続けるバッテリ分野に対応するためのスキルを提供しています。この施設では、Ansysのマルチフィジックスソフトウェアを使用して、英国での電動化をサポートするバッテリテクノロジーとスキルの開発に取り組んでいます。 

UKBICのデジタル部門責任者であるTimothy Addison博士は次のように述べています。「現在のバッテリ業界は変革のペースが速く、急激なコスト上昇も見られます。UKBICでは、このような変化の著しい市場に、新しいバッテリテクノロジーを投入したいお客様をサポートしています。市場で成功するには、リソースを有効活用して、予測モデリングとシミュレーションを効果的に導入することが不可欠です。大規模製造を確実に実現するために、Ansysのソリューション製品を使用し、製品設計とプロセス設定を改善して、製造を開始する前に確実に準備を整えています。」

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リチウムイオンバッテリ製造の各工程を示した図。シミュレーションは、プロセス全体を通じて最適化の大きな機会をもたらす。

Ansysは、さまざまな物理場に対応した製品を提供しており、バッテリ製造の多数の工程に対応できる幅広い機能を備えています(上図)。たとえば、流体シミュレーションソフトウェアであるAnsys Fluentを使用して、コーティングプロセスの正確な混相流シミュレーションを実行することで、コーティング機のさまざまな条件やジオメトリを仮想的にテストしてから、プロトタイプの作製に取り掛かることができます。

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シミュレーション対象である連続コーティングプロセスの機械(左)とアニメーション(右)。Ansysのシミュレーションツールにより、プロセス全体の設計と最適化が加速する。

コーティング剤を塗布した後は、カレンダー成形(上図を参照)と呼ばれる圧縮加工が必要です。このプロセスは、リチウムイオンバッテリセルの細孔構造と性能に大きく影響します。粒子動力学シミュレーションソフトウェアであるAnsys Rockyを使用すると、カレンダー成形加工時に微細構造レベルでの調査が可能となり、構造エンジニアリングのFEA(有限要素法解析)ソフトウェアのAnsys MechanicalおよびマルチフィジックスソフトウェアであるAnsys LS-DYNAと組み合わせることで、特に欠陥が存在する場合に、加工時の圧縮によって生じる残留ひずみを特定できるようになります。

Ansysのプリンシパルアプリケーションエンジニアである藤井明は次のように述べています。「バッテリ製造は非常に動的です。それと同時に、顧客側のエンジニアリング目標では、特定の基準を満たしながら、一貫した品質を維持または改善するためのプロセスと設備の両方を最適化する必要性が重視されています。たとえば、厚さの均一性を維持できない薄膜コーティングプロセスや、ジオメトリに影響する材料厚さの変化は、シミュレーション環境で迅速に評価して対処できるさまざまなシナリオのごく一部です。」

デジタルツインを活用して運用を向上

バッテリ製造を変革させるようなトレンドの1つが、デジタルツインによって実現する生産のさらなるデジタイゼーションです。メーカーは、センサーデータとシミュレーションデータを使用してデジタルツインを開発します。デジタルツインは実際の生産プロセスの仮想的表現であり、これらのモデルを使用して製造プロセス全体を理解して改善できるようになります。また、デジタルツインを稀なケースに適用すれば、プロセス内で問題となるような箇所を明らかにし、その後で予測分析または予知保全を実施することで、問題を引き起こす要因を特定できるようになります。

Ansysは、製造プロセス全体でセンサーを導入してデジタルツインを活用する、バッテリメーカー向けの分析ソリューションを提供しています。具体的には、プロセス、製品の品質、問題が発生する箇所について、顧客に知見をもたらす仮想センサーデータの提供です。この場合、デジタルツインの重要な側面を捕捉する次数低減モデル(ROM)を使用して、予知保全を実施するために分析エンジンに入力できるデータを出力します。

Mandloiは次のように述べています。「シミュレーションベースのデジタルツインを接続して、センサーを導入した分析プロセスを実行するための方法を模索している最中です。なぜなら、分析エンジンのトレーニングには長い時間がかかり、大量のデータが必要だからです。そうしたデータが自然に手に入るまで待つだけでは、予測を行えるエンジンが完成するまでに、おそらく1~2年はかかるでしょう。この過程を短縮させる1つの方法は、複数の実験計画法(DOE)バリエーションを試して、そのすべてのデータをエンジンにフィードバックしたシミュレーションです。このシミュレーションから得た大量のデータを使用して、エンジンを強化できるようになります。」


ソリッドステートソリューションに対するニーズに対応

バッテリメーカーの長年の課題は、リチウムイオンバッテリに代わる、より安全で効率的な代替品を見つけることです。ソリッドステートバッテリを採用することで、安全性が高まり、小型で柔軟性の高いフォームファクターで、はるかに広い動作範囲にわたって、より高いエネルギー密度を実現できます。また、ソリッドステートバッテリの製造プロセスには乾燥プロセスがないため、サプライヤーは開発時間を短縮して、コストを抑えることができます。

このバッテリテクノロジーを大きく前進させるために不可欠となるのがシミュレーションです。Ansysでは、多数のマルチフィジックスツールを含め、ソリッドステートバッテリソリューションのための効率的でシームレスなワークフローを提供しています。これを活用することで、最適な粒子径分布、材料の混合比、および圧縮圧力を特定できるようになります。


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Ansysのシミュレーションでは、プロセス統合および設計最適化(PIDO)プラットフォームとデジタルツインテクノロジーにより、バッテリ製造に関連するあらゆるプロセスの設計最適化がサポートされる。

Ansysのシミュレーションで効率を向上

ここでは、EVバッテリ製造のためのシミュレーション主導による包括的なデジタルエンジニアリング戦略の利点について説明しました。現在も、多くのエンジニアがAnsysのさまざまなシミュレーションから得られた貴重な知見に基づいて、バッテリ設計を最適化し、拡張性、品質、持続可能性を実現するような設備とワークフローを特定しています。

EVバッテリ開発に関するウェビナーシリーズを是非ご視聴ください。バッテリ製造および生産プロセスに適したAnsysのソフトウェアソリューションの詳細についてご紹介します。


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Laura Carter
コーポレートコミュニケーションマネージャー

Lauraは、ライター兼クリエイティブスペシャリストとして、Ansysの製品に高い関心を持つお客様に向けて多様な情報コンテンツを提供しています。OEMメーカーやTierサプライヤーのアカウントの管理やライターとしての豊富な経験を活かして、自動車業界に関する独自の視点と専門知識でコンテンツを作成しています。

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インダストリーマーケティング担当シニアマネージャー

Kimは、Ansysで自動車業界のマーケティングを担当するシニアマネージャーです。17年以上にわたり、エンジニアリングデータ分析およびシミュレーション業界で、グローバル製品やブランドマーケティングのイニシアチブをサポートし、主導してきた経験があります。複雑な概念をわかりやすく説明できるという優れた素質があり、さまざまな分野で人脈を広げてきた経験を活かし、お客様やステークホルダーに高い付加価値をもたらすことを目指しています。

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