Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysブログ
March 14, 2024
整形外科用インプラントや心臓血管デバイス(ステントなど)が必要になった患者は、それが自分用にパーソナライズ、カスタマイズ、あるいは選択されたものだと考えることも多くありますが、ほとんどの整形外科医や心臓血管外科医は、既製の製品を経験に基づいて選択して使用しています。デバイスが各患者に合わせてパーソナライズされることは、めったにありません。
このような画一的な医療アプローチは、各患者の解剖学的・生理学的特性には大きな違いがあるという認識を欠いていると言わざるを得ません。これは非効率と費用超過をもたらすだけでなく、提供される医療の質にも影響を及ぼします。しかし、パーソナライズされた医療なら、診断から治療まで、患者固有の最適な治療計画を策定することができます。
このコンセプトはSFのように思えるかもしれませんが、先進技術が患者の回復を早め、世界中の人々の生活の質を向上させようとしています。スマート医療デバイスやウェアラブルデバイスは、心拍数・血圧のモニタリングや睡眠サイクルの追跡などを通じて、すでにハードウェアとソフトウェアの間のギャップを埋めています。
しかし、パーソナライズされた医療には、まだ大幅なパラダイムシフトと、治療のカスタマイズに使用するデータの収集・作成のための新しい技術ツールキットが必要です。生体力学シミュレーションは、患者の身体に最適に対応するデバイスやインプラントを用いて患者を治療する現場で、迅速かつ簡単にパーソナライズするソリューションです。これにより、ヘルスケアプロバイダーは真にパーソナライズされた治療計画を立て、合併症の可能性を排除することができます。
パーソナライズされた医療の分野で先頭に立っている企業の1つに、AnsysのチャネルパートナーであるCADFEM International社から独立したSimq社があります。Simq社は、パーソナライズされた医療の普及を加速させるために、使いやすいヘルスケアアプリを開発しています。また、物理ベースのシミュレーションを誰でも利用できるようにして、ヘルスケア関連のコミュニティでより多くの情報やパーソナライズされた知見が利用されるように、生体力学とインシリコ技術を組み合わせて、コンプライアンスに準拠した開発インフラストラクチャを提供しています。同社の専門家チームは、デジタルツインシミュレーション(患者固有のコンピュータモデル)、人工知能、機械学習の可能性を広く活用できるよう、最高品質のソリューションを提供することに取り組んでいます。
Simq社の開発プラットフォームをベースとした医療ソフトウェア
シミュレーションは多くの業界で非常に有益なツールとなっているものの、企業は経験豊富なエンジニアを雇ってシミュレーションを行うことに消極的な傾向があります。コストが高いことと何事にも時間がかかることが問題となっているヘルスケア業界のほとんどの企業は、エンジニアを雇う予算がなく、また医療専門家にシミュレーションソフトウェアの使い方を教える時間もありません。
Simq社は、仮想インプラント試験(Simq VIT)、複雑な骨接合術(Simq OSP)および上顎急速拡大術(Simq RPE)に対応する手術計画ツール、さらに睡眠時無呼吸患者の診断を改善する医療デバイス(Simq OSA)など、特定用途向けの複数のソリューションを提供しています。同社は、シミュレーションを使いやすくするためにPythonとAnsysのソリューションを組み合わせたPyAnsysという技術を利用することで、バイオメディカルエンジニア、さらには医療専門家による診断、研究開発、治療計画、インプラント試験を支援しています。
Simq社の開発者は、Ansysの物理ベースのエンジニアリングツールにアクセスできるようになったことで、医療でのデジタルツインの実装と導入に加えて、規制要件への対応に専念することができます。
Simq社が現在開発しているアプリは、ユーザーフレンドリーなユーザーインターフェース(UI)を備えているため、専門のエンジニアを雇用したり、医療専門家にシミュレーションの複雑な問題を教えたりする必要がなくなります。
Simq社のCTOであるAlexander Volf氏は次のように述べています。「PyAnsysは、Simq製品と当社のデジタルツイン技術の開発を変革するゲームチェンジャーと言えます。PyAnsysは最先端のPythonicなインターフェースを備えています。これは開発者にとって大きなメリットとなります。PyAnsysは、即座に利用できるだけでなく、シミュレーションプロセスにおけるPythonエコシステムの広範な機能へのアクセスや、シミュレーションと数学的・統計的・機械学習的手法の組み合わせへのアクセスも可能にします。」
手術計画ツールであるSimq RPE(左)とSimq OSP(右)
Simq社とその顧客が直面している課題の1つは、規制要件を満たすことです。すべての医療デバイスは、米国食品医薬品局(FDA)や欧州のノーティファイドボディ(NB)など関連機関の承認を受ける必要があります。メーカーが医療デバイスの承認を得るには、そのデバイスの安全性と有効性を示す膨大な文書と臨床データを提出しなければなりません。
しかし、Simq社では物理的なデバイスの製造を行っておらず、それを行うのは顧客です。では、Simq社は規制ガイドラインに従う責任があるのでしょうか。その回答は、従う必要がある、です。
ソフトウェアが医療デバイスに該当するかどうかは、医療デバイスと同様に、メーカーがソフトウェアに対して意図した目的により決まります。規制の観点からは、医療用ソフトウェアも物理的な医療デバイスと同じ要件に準拠する必要があり、一定の基準を満たさなければなりません。
下顎骨(左)と胸郭(右)のシミュレーション(Simq VITを使用)
医療デバイスメーカーは、Simq社のVIT、OSP、RPEの各医療ソフトウェアソリューションを使用することで、自社のデバイスがコンプライアンスを満たしているかどうかを確認し、パーソナライズされた医療に向けた取り組みを推進することができます。Simq社では、FDA基準に従って、患者固有のシミュレーションモデルの検証、妥当性確認、さらには不確かさの定量化を実施するサービスや、ISO 13485に準拠して製品の品質保証を行うサービスを提供しています。Simq社は、精密医療とデジタルツインのための承認フレームワークや妥当性確認プロセスを再利用できるようにし、開発プロセスの迅速化を支援する取り組みも行っています。
Simq社では、できるだけ多くの患者がSimq社のソリューションの恩恵を受けられるように、自社の基本的な技術を他の医療デバイスメーカーにも提供しています。医療デバイスメーカーは毎回一からプロセスを始める代わりにSimq社の開発フレームワークを使用することで、技術文書を再利用し、時間とコストを節約することができます。これにより、医療デバイスメーカーは貴重なリソースを節約し、大きな革新をもたらす次の医療デバイスの開発に取り組むことができます。
PyAnsysの詳細と、AnsysとSimq社のパートナーシップがお客様の次の医療イノベーションにどのように役立つかをご覧ください。