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設計から承認まで: Ansysの光学シミュレーションで医療機器開発の課題を克服

6月 30, 2025

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Kerry Herbert | Ansys、Senior Product Marketing Manager
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医療機器の開発は複雑でリスクの高いプロセスであり、精度、安全性、性能の面で妥協は許されません。最初の概念から市場に投入できる製品までの道のりは、特に光学システムのような先進技術を組み込む場合、数々の課題が待ち受けます。内視鏡や光コヒーレンストモグラフィー(OCT)システムのような画像診断ツールから、手術で使用される治療用レーザーまで、光学部品は多くの医療機器に不可欠です。このようなシステムは非常に厳しい条件下で完璧に動作する必要があり、エンジニアは機能要件と規制要件の両方を確実に満たさなければなりません。

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内視鏡の使用例

医療機器開発の複雑さ

以下の主要な要素が、医療機器の開発を本質的に複雑なものにしています。

厳しい規制要件

医療機器は米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)などの厳しい規制の対象です。これらの規制は装置の安全性、品質、有効性を保証し、メーカーは承認前に広範な文書と性能のエビデンスの提供を求められます。

光学システムの場合、これは厳格なテストを行って、安全基準を満たし、一貫して高品質の結果を得ることを意味します。

設計と統合に関する課題

現代の医療機器は、複数の技術が組み込まれ、それぞれが調和して動作します。光学系、機械系、電気系、およびソフトウェアシステムをコンパクトな機能ユニットに統合する必要があります。特に光学システムは、小型化、アライメント、精度などの課題に直面します。光学部品の設計にわずかでもずれがあれば、画像の歪みや位置ずれなど、性能上の重大な問題を引き起こし、最終的には患者の転帰に影響を与えるでしょう。

コストと製造上の考慮事項

高品質の光学部品の設計と製造には大きなコストがかかります。製造コストを予算内に抑えながら、要求される性能基準を達成することが目標となります。また、医療機器は大規模に製造する必要があり、一貫性と費用対効果のために生産プロセスを最適化することがきわめて重要です。

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迅速な市場投入へのプレッシャー

医療機器市場は競争が激しく、メーカーは革新的なソリューションを可能な限り早く提供することを迫られています。しかし、機器の安全性と有効性を保証するために徹底的なテストと妥当性確認が求められ、時間的プレッシャーとバランスを取る必要があります。

Ansysの光学シミュレーションでこの課題を解決する方法

Ansys Optics製品コレクションには、一連の優れた光学シミュレーションツールが含まれており、エンジニアが設計プロセスの早い段階で光学システムを最適化し、テストすることを可能にします。Ansysの光学シミュレーションを使用することで、メーカーは医療機器開発の課題に効果的に対処し、新しい機器の市場投入に伴う時間とコストを削減し、リスクを低減することができます。

シミュレーションによる設計プロセスの高速化

医療機器開発における最大の課題の1つは、性能、サイズ、コストの制約を満たす光学システムを設計することです。従来の設計方法ではプロトタイプを作成して物理的にテストすることが必要であり、これには時間とコストがかかります。Ansysの光学シミュレーションは、エンジニアが仮想環境で光学システム全体をシミュレーションすることを可能にし、この状況を変革します。これにより、設計コンセプトの迅速な反復が可能になり、エンジニアは光学性能、アライメント、効率の問題を迅速に特定して対処できます。

Ansysの光学シミュレーションならレイトレーシングや波動光学などのツールで、光と光学部品との相互作用をシミュレーションできます。そのため、設計者は物理的なプロトタイプを必要とせず、レンズの曲率、焦点距離、光透過率などの要素を最適化できます。これにより設計プロセスがスピードアップし、最終製品が最初から可能な限り最高の性能を発揮することが保証されます。

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Ansys Optics製品を活用した内視鏡の開発例

マルチフィジックス統合設計への総合的なアプローチ

医療機器は本質的に多分野にわたるものであり、光学システムは、機械部品や電気部品などの他のサブシステムとシームレスに動作する必要があります。Ansysの光学シミュレーション独自の利点は、光学、熱、構造シミュレーションを単一のワークフローに統合するマルチフィジックスシミュレーションが可能なことです。この総合的アプローチにより、異なるサブシステムがどのように相互作用するか、システムの1つ部分の変更が機器の全体的性能にどのように影響するかをエンジニアが確認できます。

例えば、レーザーを用いた治療機器の場合、レーザーの光学的挙動をその熱効果や機械的応力とともにシミュレーションすることができます。これにより、光学部品が動作条件下で安定した状態を維持し、熱管理システムが効果的に熱を放散し、敏感な部品の損傷を防ぐことができます。

Ansysの光学シミュレーション独自の利点は、光学、熱、構造シミュレーションを単一のワークフローに統合するマルチフィジックスシミュレーションが可能なことです。

熱解析と構造解析で信頼性の高いパフォーマンスを実現

熱的・機械的応力は光学システムの性能に大きな影響を与える可能性があります。Ansys Optics製品は熱解析と構造解析のための統合ツールを備え、光学部品に対する温度変化と機械的変形の影響に対するシミュレーションを可能にします。これは医療機器において特に重要であり、わずかなずれでも治療や診断の精度と有効性を損なうおそれがあります。

例えば、医療用画像システムは、熱の影響により光学部品が膨張または収縮し、位置ずれにつながる可能性があります。Ansys Optics製品で、このような熱変動をシミュレーションすることにより、動作温度範囲全体にわたってアライメントと性能を維持できるシステムを設計することが可能になります。これにより、過酷な条件下でも、堅牢で信頼性が高い最終製品を得ることができます。

妥当性確認ツールを使用した規制承認の合理化

規制に関する環境は、医療機器開発の最も困難な側面の1つでしょう。規制当局は、医療機器の使用を承認する前に、広範な文書と妥当性確認を要求します。Ansys Optics製品の優れた妥当性確認機能でこのプロセスを合理化し、規制基準を満たす光学性能のシミュレーションとテストを実行できます。仮想性能試験を実施することにより、物理試験が必要になる前であっても、設計が安全基準と品質基準を満たすことを確認できます。

加えて、規制関連の申請に役立つ詳細なレポートと文書を得ることができるため、コンプライアンスに必要な時間と作業を削減できます。これにより、機器が安全で有効であるだけでなく、承認に必要な規制要件を満たすことが保証されます。

コスト削減と製造最適化

医療機器開発は、特に高品質の光学部品を製造する場合、高価になる可能性があります。Ansys Optics製品を活用することで、エンジニアは製造可能性を考慮して設計を最適化できるため、コスト削減が実現します。様々な製造条件下で光学システムの性能をシミュレーションすることで、設計フェーズの初期に潜在的な製造上の課題を特定し、効率性を改善するための調整を行うことができます。

さらに、シミュレーションは最も費用対効果の高い材料と製造技術の選択に役立ち、最終的なデバイスが適正な価格で最も良い品質であることを保証します。これは、生産コストと市場への投入期間に大きなインパクトを与えるでしょう。

Ansys Optics製品の事例

Ansys Optics製品で得られるメリットとして実例をご紹介します。

皮膚がんは米国で最も多いがんで、毎年およそ500万人が治療を受けます。欧州連合のHorizon Europeプログラムは、メラノーマの早期発見を簡単かつ効率的にするためにIntelligent Total Body Scanner for Early Detection of Melanoma(iToBos)プロジェクトに資金を提供しました。このプラットフォームにはフルボディスキャナーとコンピュータ支援診断ツールが組み込まれ、患者固有のデータを統合します。フルボディスキャナーには、Optotune社による液体レンズ搭載の高解像度カメラを使用する予定で、これまでにない高画質の全身画像を提供できます。

iToBosの構造はMRIやCTスキャナーに似た構造で、水平方向と垂直方向に移動可能な3つのカメラモジュールを備えています。レンズは、カメラ距離、スキャナー時間、狭い視野、浅い被写界深度など、特定のパラメータを満たす必要があります。異なるレンズ要件をテストするために、Optotune社は光学システム設計および解析ソフトウェアであるAnsys Zemax OpticStudioに注目しました。

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iToBoS(左)およびカメラモジュール(右)のレンダリング

Optotune社では、患者とカメラモジュールとの距離(動作距離)を350~650mm、中距離を420mmに調整する必要がありました。液体レンズ搭載スキャナーカメラをOpticStudioでシミュレーションしたところ、目標仕様をかなり上回っていました。それでも、iToBosには非常に高い光学的品質が求められます。

Optotune社は、iToBosのような非常に敏感な光学システムの重力の影響を補正するために重力補正(GC)レンズを開発しました。Optotune社のチームがOpticStudioを用いて最悪のシナリオをシミュレーションしたところ、レンズが3つの距離すべてで最小許容パラメータを満たすことが分かりました。

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左はカメラモジュールのレイアウトと性能特性(Ansys Zemax OpticStudioを使用)。右はカメラモジュールの光学機械設計。黄色の四角枠は液体レンズの収納位置を示す。

Ansys Optics製品の優れた機能

医療機器開発における概念段階から承認までの道のりは課題が多く、特に複雑な光学システムを組み込む場合には多くの課題に直面します。Ansys Optics製品は、このような課題に対する包括的なソリューションであり、シミュレーション、最適化、妥当性確認のための優れたツールを備えています。これにより、設計プロセスの加速、確実な規制準拠、コスト削減を実現します。これらの機能を活用することで、メーカーは革新的で性能の高い医療機器を、自信をもって効率的に市場に投入し、患者の転帰を改善し、医療業界の進歩に貢献することができます。

次世代のイメージングシステム、レーザー治療、診断ツール - どのような医療機器の設計であっても、Ansysの光学シミュレーションなら、医療機器開発の課題を克服し、ビジョンを現実に変えることができるでしょう。詳細については、オンデマンドウェビナー「メラノーマの早期発見: 液体レンズで光学的な課題を解決する」をご覧ください。


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プロダクトマーケティング担当シニアマネージャー

Kerryは、Ansysのシニアプロダクトマーケティングマネージャーとして2年以上の経験を持ち、これまでテクノロジー、光学設計、法律分野を含むさまざまな業界のマーケティングに8年以上携わってきました。ビジネスマネジメントの学士号を取得し、Chartered Institute of Marketing(CIM)のアフィリエイト会員でもあります。

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