Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
Ansysは、シミュレーションエンジニアリングソフトウェアを学生に無償で提供することで、未来を拓く学生たちの助けとなることを目指しています。
最高品質を追求する自動車メーカーBMW Groupは、高性能なプレミアムカーであるBMW、究極のラグジュアリーを体現するロールス・ロイス、そして運転の楽しさを追及したMINIといった、個性豊かなブランドを通じて、最高水準のドライビングエクスペリエンスを提供しています。また、卓越したパフォーマンスに加えて、洗練された内装デザインにもこだわり、特徴的な内装を採用しています。たとえば、スワロフスキークリスタルをあしらったシフトノブ、車内に星空を映し出すスターライト・ヘッドライナー、ダッシュボードに投影されるディスプレイなどがあります。
こうした新しい機能を、すでに多数のシステムが搭載されている環境に組み込むことは容易ではありません。バックライト付きのボタンや、インフォテインメントやメーター表示、さらに日光や夜間の対向車からのヘッドライトが加わると、光の干渉が生じたり、ドライバーの注意力の妨げになったりします。BMW Groupでは、NVIDIA GPUアクセラレーテッドコンピューティングプラットフォーム上で実行されるAnsysのシミュレーションを活用し、不要な反射やグレアに対処し、快適な運転環境を実現しました。
BMW i8の内装照明: 日中と日没後の光の解析
BMW GroupのバーチャルバリデーションプロジェクトリーダーであるKenneth Weselake氏は、BMW、ロールス・ロイス、MINI Cooperの内装デザインの光学要素を最適化するために、開発初期段階からCADに統合された光学および照明シミュレーションソフトウェアであるAnsys Speosを導入して、光の解析を実行しています。
Weselake氏は次のように述べています。「私たちは、光を情報キャリアとして活用し、アニメーションを作成したり、見えない位置にプロジェクターを実装したりしています。また、ダッシュボードに映像を投影し、デジタル世界と実世界をつなげています。BMWの新しいヘッドアップディスプレイであるBMW Panoramic Visionでは、光、材料、制御技術を融合することで、フロントガラスに複数のディスプレイを投影しています。」
これらの要素はすべて、さまざまな材料や色の光特性に基づいて設計されています。適切に設計するためには、安全性を考慮しながらアイデアの実現性を判断するために、ダッシュボードのさまざまな要素をランク付けして、評価することが必要です。
運転を妨げることなく、明るい色の内装をどのように採用するかが大きな課題でした。ブランドイメージとの整合性を含め、ダッシュボードを構成するすべての素材に配慮し、反射を抑えるためのテクスチャの工夫も求められました。Weselake氏は、Speosを導入して、さまざまな色のグラデーション、ダッシュボードのジオメトリ、材料を試したことで、不要な反射とグレアを最小限に抑えることができました。
Weselake氏は次のように述べています。「これまで1,000種類を超える材料を測定しました。比較のために必要だったからです。Speosを使用して色の強度を測定しています。コックピットの設定では、Speosで異なる材料を使用してダッシュボードモデルを更新して、ジオメトリや材料の変更が与える影響を確認できます。設計プロセスの初期段階ではジオメトリによる影響、後半では主に材料による影響を確認できます。」
上:ロールス・ロイス「PHANTOM」のダッシュボードの照明シナリオとガラスの反射防止コーティングの比較。下: ロールス・ロイスのドアの照明効果と反射のシミュレーション。
Weselake氏は、遊び心と運転の楽しさを追及したMINIから、より洗練されたBMW、そして最上級のラグジュアリーカーであるロールス・ロイスまで、BMW Group傘下のさまざまなブランドにわたって内装照明の概念を開発しています。様式は異なりますが、こうしたシミュレーションは大規模で長い実行時間を要する傾向があります。Weselake氏は、以前はCPUコンピューティングを使用して、数時間にわたってテストを実行していました。さらに、テストの完了後には、最大1週間ほどをかけて実際のシミュレーションを実行する必要がありました。もしも問題が発生した場合は、テストを含むシミュレーションサイクルを繰り返す必要がありました。
Weselake氏は、SpeosとNVIDIA RTX 6000 Ada Generation GPUを活用することで、光学シミュレーションを300倍も高速に実行できるようになりました。具体的には、この構成によってSpeosのパフォーマンスが大幅に向上し、個々のテストは数時間から10分以内まで大幅に短縮されました。
Weselake氏は次のように述べています。「シミュレーションにかかる時間を数時間から、たった数分まで短縮できることは、非常に大きなメリットでした。これまでは、大規模なシミュレーションを実行するたびに、数日から最長で1週間ほどの期間を想定する必要がありました。今では、その時間と労力を他のタスクに向けることができます。」
このスピードアップは、どのように達成できたのでしょうか。NVIDIA社のアクセラレーテッドコンピューティングプラットフォームは、48GBの大容量メモリと驚異的なパフォーマンスを組み合わせています。Weselake氏は、このプラットフォームとSpeosを使用することで、複雑な光学シミュレーションに必要な計算能力を得ました。それにより、より多くの設計反復が可能になり、課題をより迅速に解決できるようになりました。さらに、準備なしで即時にテストを実行できるようになり、それも大きなメリットであると語ります。
「この構成でNVIDIA GPUアクセラレーテッドコンピューティングを活用することで、さまざまな材料をこれまでよりも300倍も高速に解析できます。すぐにレポートを作成し、強度を比較して、グレアや反射の材料オプションのランク付けができます。結果を得られたその日のうちに、こうした作業を進めることができ、驚くべきスピードアップを達成できています。」
BMWのドア: 暗い色の材料と明るい色の材料から反射する光強度の比較(黒で同じ外観を得るには、照明を7倍明るくする必要がある)。
Weselake氏にとって、比較を行える機能は非常に重要です。NVIDIA社のアクセラレーテッドコンピューティングとSpeosを利用する前は、材料候補を1つずつ解析する必要がありましたが、この新しい機能により、複数の材料候補を以前よりも広範囲にテストして比較できるようになりました。
Weselake氏は、SpeosとNVIDIA GPUコンピューティングを組み合わせることで、BMWとロールス・ロイスの新しいステアリングホイールのシンボルを、光の屈折を考慮しながら正確に配置する新しい方法を開発できました。さらに、シミュレーション機能により、光を巧みに使用して視覚をシミュレーションする方法に関する特許を取得しました。
シミュレーションから得られた知見が、新たな発見につながることもあります。たとえば、ヘッドアップディスプレイ(HUD)を開発しているときに、不要な迷光の振る舞いを確認できました。
「Speosを使用した解析では、不要な反射光線の振る舞いを明確に確認でき、それを遮断するサーフェスを作成できました。」
MINIのウィンドウコントロール: 夜間の照明および反射を考慮した設計のシミュレーション
このような発見は、最終的にはBMW Groupの収益にとっても大きな影響を及ぼします。たとえば、Weselake氏は、ロールス・ロイス「PHANTOM」のHUDにおける開発上の問題を特定しました。問題が特定されなければ、ダッシュボード全体あるいは車両全体の再設計が必要となり、2年間にも及ぶ開発期間と数千万ユーロのコストが無駄になるところでした。
Weselake氏は次のように述べています。「私が光学解析ソフトウェアを開発するとしたら、Speosと同じものを開発します。すべてが理にかなっているソフトウェアです。GPUコンピューティングのおかげで、さまざまな可能性を迅速にシミュレーションし、評価して、精度の高い結果を得ることができます。物理プロトタイプを製作して、結果を見せると、誰もがシミュレーションとまったく同じ結果であることに驚きます。」
Speos GPUを使用して設計探索を向上させる方法については、無料のオンデマンドウェビナー「Speos GPUのInteractive Live Previewで設計調査を向上」をご覧ください。
Ansys Advantageブログでは、専門家が投稿した記事を公開しています。Ansysのシミュレーションが未来のテクノロジーにつながるイノベーションをどのように推進しているかについて最新の情報をご覧ください。