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Ansys、NVIDIA社の欧州向け産業用AIクラウドを介してシミュレーションを高速化

6月 11, 2025

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Rich Goldman | Ansys、Strategic Partnership Director
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NVIDIA社は、先日、ドイツで産業用AIクラウドを構築する計画を発表しました。これは、Ansysを使用する欧州のお客様がシミュレーションを実行する方法に大きな影響を与え、さまざまな業界でイノベーションを加速させます。これまでの経緯とその意味を説明しましょう。 

Ansysでは、長年にわたってNVIDIA社とのコラボレーションを着実に進めてきました。たとえば、Ansysのシミュレーションソフトウェアでは、NVIDIA CUDA-Xライブラリを活用して、製造業界のお客様のGPUパフォーマンスを最適化しています。また、AnsysのツールはNVIDIA Omniverseライブラリにも統合されており、エンジニアリングに関する知見を新たな高みに引き上げています。この継続的なパートナーシップを通じて、より大規模で包括的なシミュレーションシナリオへの対応が可能となり、プロトタイプの可視化や実際の稼働条件に基づいた設計の最適化を行えるようになります。

また、Ansysでは、計算負荷の高い物理ベースのシミュレーションを大幅に加速させるために、GPUに最適化されたまったく新しいソルバーを長年にわたって開発してきました。CPUを使用した従来のシミュレーション手法は、時間がかかり、リソースを大量に消費するため、反復的な設計改善の余地はほとんどありませんでした。

これらの課題を克服するために、Volvo Car社では、AnsysおよびNVIDIA社のテクノロジーを活用して、CFDシミュレーションの合計時間を24時間(2,016個のCPUコアを使用)から、わずか6.5時間(8個のNVIDIA Blackwell GPUを使用して解析した5.5時間 + CPUコアを使用してメッシングした1時間)まで短縮できました。これは、NVIDIA社のGPUを活用して高速化された流体シミュレーションソフトウェアのAnsys Fluentで実現したものです。

多くの企業は、製品開発をより効率化したいと考えシミュレーションを導入しています。知見をより早く得る、あるいは同じ所要時間でより優れた知見を得ることは、売上と利益の増加につながります。この高速化を実現するのはハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)であり、これに大きく貢献するのがNVIDIA社のアクセラレーテッドコンピューティングです。

Fluent、構造有限要素法解析ソフトウェアであるAnsys Mechanical高周波電磁界シミュレーションソフトウェアであるAnsys HFSS、および光学および照明シミュレーションソフトウェアであるAnsys Speosを含むAnsysのソルバー群のスピードがさらに向上したことで、世界中から高速シミュレーションの利点に高い関心が寄せられています。現在、この新しい強力なGPUにアクセスする方法は、主に3つあります。具体的には、ワークステーション、オンプレミスソリューションとなるクラスタとして構成できるターンキーGPUノード、HPCおよびAIワークロードに最適化されたGPUベースの仮想マシンを事前構成するクラウドサービスプロバイダーを介する方法です。 

欧州の大部分を含む世界各国では、データ主権の確保と自国内のコンピューティングプロバイダーの利用が戦略的および運用上の必須事項となっています。NVIDIA社は、GTC Parisにて、工業規模のワークロードに対するこれらのニーズに直接対応する「産業AIファクトリー」の計画を発表しました。

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NASAのEEE航空機エンジンに基づいた5億セルの環状燃焼器の数値流体力学(CFD)ベンチマーク。16個のNVIDIA Grace Hopper GPUを使用して10時間で解析を実行した。これは2300個のコアを搭載した16個のCPUノードと比較して、約10倍の高速化となる。

10,000個のGPUで実現できること

この新たに発表されたクラウドシステムには、NVIDIA DGX B200システムとNVIDIA RTX PROサーバーを含む10,000個のGPUが搭載されます。これは国内で提供されるものとしては極めて大容量で、Fluent、HFSS SBR+、光電子コンポーネントシミュレーションソフトウェアのAnsys Lumerical高周波チャネルおよびレーダーシグネチャシミュレーションソフトウェアのAnsys Perceive EM粒子動力学シミュレーションソフトウェアのAnsys Rocky、およびSpeosなど、Ansysの新しいGPUソルバー機能を活用したいお客様にとって最適のソリューションとなります。以下のエンジニアリング作業や製品開発では、特に大きなメリットがあります。

  • 仮想環境での自律システムの開発のための物理ベースのセンサーシミュレーション(レーダー、LiDAR、カメラ)
  • 物理AIシステム(ロボティクス)の機械学習のための物理ベースの合成ground truthトレーニングデータの生成
  • 航空宇宙および防衛分野向けのリアルタイムレーダーシミュレーション
  • 自動車開発のための精度の高い光学シミュレーション
  • 産業、製造機械および流体力学向けのサロゲートAIモデルの作成とAI推論
  • フローネットワーク、加熱/冷却システム、バッテリモジュールなど産業システムの物理ベースのデジタルツインを開発するための物理変数および材料変数の広範なスイープ
  • Ansys Fluent GPUソルバーで対応できる、ガスタービン、ターボ機械の音響、電子機器の冷却、撹拌タンクなどのCFDユースケースの拡大
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NVIDIA Omniverseとともに使用されるAnsys SimAIクラウド対応AIプラットフォーム

このプロジェクトでは、NVIDIA社と協力しながら、今後もベンチマークを実行し、お客様がこの新しいコンピューティングオプションを活用できるように、簡単にアクセスできるオプションを開発していきます。また、早期導入するお客様からご意見やフィードバックをいただきながら開発を進め、優れた成果をお届けします。 

『ターンキーハードウェアシステムでAnsysマルチフィジックスシミュレーションを加速する方法』については、電子ブックをご覧ください。


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Rich Goldman
Ansys、Strategic Partnership Director

Rich Goldmanは2018年にAnsysに入社しました。コンピュータサイエンスの学士号、経営学の修士号、そして2つの名誉博士号を取得しています。 

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