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ヘッドアップディスプレイ(HUD)とは何か、そしてその仕組みとは

車を運転する際、路上だけでなく、車内のさまざまなものにも注意を向ける必要があります。たとえば、スピードメーター、燃料レベル、トラフィックアラートや運転条件などです。これらは運転するドライバーにとって重要な情報ですが、確認するには進行方向から目を離し、下方のダッシュボードなどに視線を移動させる必要があります。

ヘッドアップディスプレイとは

ヘッドアップディスプレイ(HUD)は、進行方向から目を離すことなく、ドライバーの視野内に情報を直接表示する拡張現実(AR)の一種です。  名前が示すとおり、ドライバーは視線を正面前方に維持したまま、道路状況とその他の必要な情報を同時に見ることができます。 

ヘッドアップディスプレイの適用分野

最も広く知られているヘッドアップディスプレイの適用分野は自動車ですが、このテクノロジーには多くの用途があります。ドライバーやオペレーターが実環境とデジタル情報を同時に確認する必要がある場合では、HUDが役立ちます。航空機、軍用車両、重機など、人による操縦が必要なシステムは、すべて理想的なユースケースです。進行方向や手元の作業から目をそらさずに、オペレーターが見ることができる場所に情報が投影されます。 

HUDのもう1つの一般的な適用分野はビデオゲームです。拡張現実(AR)ヘッドセットでもHUDテクノロジーを使用しており、プレイヤーがいる現実空間の中に、仮想的に浮かび上がるゲーム映像を見ることができます。ゲーム上では、ゲーム場面の上にプレイヤーのステータスに関する情報(体力、ナビゲーション、得点などのデータ)がオーバーレイ表示される複合現実が構築されます。  

また、遠隔治療の世界的な普及により、ヘルスケア分野でもヘッドアップディスプレイの採用が増えています。医療従事者にハンズフリー操作の利便性を提供するため、HUDテクノロジーを搭載したヘッドマウントディスプレイやスマートグラスは、診療、教育およびトレーニング、医療チームのコラボレーション、さらにはAIガイドによる手術にも利用できます。 

ヘッドアップディスプレイのタイプ

航空機の交通状況を監視する必要があるパイロットや、家具にぶつからないように移動しながらゲームを進行させるゲームのプレイヤーなど、特定のユーザー要件を満たすように、さまざまなヘッドアップディスプレイが設計されています。環境、コストの制約、ユーザーの快適性など、多くの要因に基づいて用途に適したHUDタイプを選択することになります。 

特定の業界やユースケースに適したHUDタイプは存在しますが、ほとんどのHUDタイプは、光源(LEDなど)、反射体(フロントガラス、コンバイナー、フラットレンズなど)、および拡大鏡システムの3つのコンポーネントで構成されています。 

どのHUDにも、光源(画像生成ユニット)と画像を反射する反射体があります(ほとんどの場合、この反射体は透明で、ユーザーには背景が透けて見える)。光源と反射体の間には、通常、拡大鏡光学システムがあります。拡大鏡システムは、以下のいずれかになります。

  • 画像を拡大する1つまたは複数の自由形状ミラー
  • 画像を拡大する格子付き導波路
  • 拡大レンズ(一般的に、航空機のHUDで採用される)
  • 何もない(一部のHUDでは拡大なし)

HUDの利点

ヘッドアップディスプレイは、ユーザーの視野内に仮想的に視覚情報を投影します。これには以下の利点があります。

  • 視線のフォーカスと意識の向上により、安全性を向上
  • 最も関連性の高い情報を適切なタイミングで優先順位付けして抽出 
  • 絶えず焦点を変えることで、目の緊張を緩和
  • システムと人が同じ現実を共有していることを示すことで、自動運転車と乗客の間の信頼を確立

ヘッドアップディスプレイの仕組み

携帯電話のライトを窓に当てると、反射した光と窓の向こうの世界の両方が見えます。ヘッドアップディスプレイは、透明な面にデジタル画像を反射することで、同じような状況を創り出します。この光学システムは、4つのステップでユーザーに情報を提供します。

  1. イメージの作成: 画像生成ユニットで、データが画像に変換されます。
  2. 光の投影: 光源によって、画像が目的の反射体に投影されます。
  3. 拡大: 光は反射または屈折して、ビームが拡大されます。
  4. 光学の組み合わせ: デジタル画像は、現実世界のビューと重なるようにコンバイナー面に映されます。

ヘッドアップディスプレイの設計

ヘッドアップディスプレイには人の知覚が関与するため、設計とテストが非常に複雑になります。設計者が仕様を満たす上ではエンジニアリング指標が役立ちますが、最終的な成功の決め手となるのは、人の感覚がプロセスにどのように影響するかを理解することです。 

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図1: シーケンシャルモードでのZemax OpticStudio HUD設計

HUD設計者は、人間的な要素を考慮するためにシミュレーションを使用します。モデルをデジタルでテストして検証することで、コストのかかる物理的なプロトタイプを作成する前に、あるいは作成せずに、多くのシナリオや技術的な課題に積極的に対処できます。次のような課題が考えられます。

  • 二重像、反り値、動的歪み
  • 頭部の位置や色覚障害などの生理学的な差異
  • コーティングされたフロントガラスや偏光眼鏡による色の変化
  • 投影画像のコントラスト、視認性、輝度
  • 読みやすさと視覚の安全性を妨げる太陽光 

事例: 太陽光の反射のシミュレーション

エンジニアは、シミュレーションを使用して、さまざまなシナリオで太陽光の反射がHUD情報の読みやすさにどのように影響するかを予測できます。

以下のシミュレーション結果は、ミラー上のHUDに反射する太陽光を示しています。設定内容と太陽の位置は同じであるが、4つの異なる材料を採用したHUDハウジングをシミュレーションした場合の4つの結果です。新しい材料に変更するたびに、不要な反射が目立たなくなっています。最後の画像では、反射光は材料によって完全に吸収されています。 

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図2: 汎用材料を使用したHUDの太陽光の反射

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図3: Vantablack VBx2を使用したHUDの太陽光の反射

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図4: Vantablack S-VISを使用したHUDの太陽光の反射

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図5: HUDの太陽光の反射: 二重像

エンジニアや設計者は、システムの光学性能をシミュレーションし、人の視覚に基づいて最終的な照明効果を評価するために、Ansys Zemax OpticStudioAnsys Speosなどの光学シミュレーションツールを使用することで、大きなメリットを得ることができます。

これらのシミュレーションツールを使用すると、以下のことができます。

  • 個々の観察者が知覚する視覚的な側面、反射、可視性、および情報の読みやすさを判断できます。
  • 人体の生理学的な視覚モデリングに基づいて、視覚的予測をシミュレーションできます。
  • 色、コントラスト、調和、光の均一性、強度を最適化することで、視覚的な知覚品質を向上できます。
  • 日中や夜間の視界を含め、周囲のさまざまな照明条件を考慮できます。

 

HUDの雨滴のシミュレーション

自動車業界では、さまざまな気象シナリオでドライバーがHUDをどのように感じるかを確認するのにもシミュレーションが役立ちます。このビデオでは、雨が降る中でHUDを見る体験をシミュレーションを用いてモデル化する方法を説明します。

未来に焦点を当てる

人のパフォーマンスがデータ主導であり続けている中で、イノベーションにおいて最も重要なのは、情報の優先順位を決定し、最も迅速かつ安全な方法で人々に情報を提供することです。HUDテクノロジーは、自動車の進化のみならず、ヘルスケア、インフラストラクチャ、通信など、さまざまな業界で人がタスクを継続する上で大きく貢献します。

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