トヨタ自動車株式会社様 (回路シミュレータ事例)

乗用車の企画開発段階においてVHDL-AMS を使って車両をモデル化し ANSYS Simplorer による解析で装備の性能・効果を評価

現在の自動車開発における大きなポイントの一つが、車両全体の効率を上げてエネルギー消費を抑えるための技術開発である。トヨタ自動車株式会社は小型ハイブリッド車「アクア」を開発するに当たって、初期段階の車両企画においてANSYS Simplorer 上に車両のベースモデルを構築して全体を俯瞰し、開発の効率化を狙った。辻公壽氏は、2007 年に電子技術部から将来の車両戦略を企画する先行車両企画部に異動となって車両俯瞰技術の開発を担当し、数名の部下と車両の全体モデル化技術の開発に着手、CO2 戦略の為の車両モデルを開発した(現在は、車両技術開発部に所属)。辻氏に、ANSYS Simplorer を使った車両モデル開発の意義とその効果について聞いた。

トヨタ自動車株式会社 車両技術開発部 車両統合技術開発室
SS4グループ 主幹 工学博士

辻 公壽 様

重視したのはマルチフィジックスの表現と国際標準への準拠

ANSYS Simplorer は基本的にはパワーエレクトロニクス向けの回路シミュレータである。なぜ自動車の車両モデル作成に電気系のシミュレータであるANSYS Simplorer が選ばれたのだろうか。

辻氏らは先行車両企画部に配属される前に、車両の電気系統の安全性検証を目的に電源マネジメントのシミュレーション技術を開発しており、そのときANSYS Simplorer に触れていた。先行企画部での車両開発の契機は、当時の本部長(専務)から車両のシナリオや企画戦略を立てる上で車両全体が見えるものができないかとの話を受けたことだった。車両のエネルギー戦略やCO2 戦略を立てるためには、当時あまり話題にされていなかった車両の中でのマルチフィジックスを扱えるシミュレーションモデルを作る必要があった。また戦略企画に関与するため、ベンダーのライブラリーを活用するための情報開示はできれば最小限にとどめたく、かつ作成したモデルは重要な資産となり得る。それらの理由により個別のツールに依存するのではなく、標準のようなものに準拠したもので構成し、モデルはすべて自前で開発する必要があると考えた。当時、調査した中で、VHDL-AMS はIEEE1076.1 スタンダード(現在のIEC61696-1)といった標準でモデルを記述することができ、さらにドイツではVDA の委員会で普及活動を行っていることを知り、それをサポートしているANSYS Simplorer で、VHDL-AMS での車両モデルに着手した。

さらにマルチフィジックス対応に加えて、解析環境として熱や磁場解析といったほかの解析ツールとの整合性もよく、例えばハイブリッド車のモータの磁場解析のシミュレーション結果と、ANSYS Simplorer 上に構築した車両モデルとを連成させて解析するといったことや、熱の部分をもっと細かく見たいときに熱の解析ツールにゆだねて連成させて解くといったことへの可能性も考慮した部分だ。

もう一方のポイントであるVHDL-AMS だが、もともとは電気系のハードウェアモデリング言語で、機械や熱も表現できるよう拡張された、マルチフィジックスを表現できるいくつかの言語の一つ。重要なのは国際標準規格であることだ。自動車はすべての部品を自社で作っているわけではなく、異なる国のメーカーの製品を利用することが多い。辻氏は、ヨーロッパではモデル言語で記述された部品モデルが流通しているということを知り、そうした外部のモデルをすぐに取り込めることを意識して国際標準規格にこだわった。そのほか技術的な部分では、VHDL-AMS はほかのモデル言語と比べて実際の物理系と近いイメージで表現できること、自動車のような多くの要素が複雑に絡む場合でも比較的開発が容易にできるというメリットもある。

マルチフィジックスの表現


解析結果を基に実車の装備を判断

辻氏らが開発し作り上げた車両モデルによって、さまざまな装備やシステムを採用した場合のパフォーマンスが試作車両を作って実測しなくても判断できるようになった。車両モデルによる燃費シミュレーション結果が実車両による実測値とよく合致し、効果が確認できるベースができると、いくつかの装備や制御のどれを選べば費用と性能の釣り合いがとれるかの判断材料としてシミュレーション結果を使う事が可能となる。実際、アクアの燃費企画において、先行車両企画部で開発したモデルを、装備の費用対効果評価と装備の企画に適用した。図には一例としてそのモデルと燃費精度、動力性能予測、及び装備に排気熱回収器による燃費効果の試算結果を示す。これは自動車開発の流れの中で非常に大きなインパクトといえるだろう。

ANSYS Simplorer について、辻氏は製品そのものだけでなく、サポートについても評価している。ユーザーとして欲しい機能などの提案をしたそうだが、それが製品に織り込まれることが何度かあり、ユーザーニーズをくみ取ってくれることがうれしいという。また海外ベンダー製品のサポートでは、問い合わせ窓口が海外だったりメールのみだったりすることも多いが、ANSYS の国内電話サポートはしっかりしているとのことだ。

車両の解析モデルをものづくりに生かす試みは、現在、自動車技術会(JSAE)のなかに委員会ができ議論が行われているという。標準に準拠したモデル言語によるマルチフィジックスモデリングとシミュレーションは今後の大きなトレンドになっていくだろう。

車両モデルならびに燃費精度 動力性能予測ならびに排気熱回収器による燃費効果


使用したANSYS 製品

  • ANSYS® Simplorer®
    パワーエレクトロニクス向け回路・システムシミュレータ

製品使用における利点

  • マルチフィジックス対応
  • 国際標準フォーマットVHDL-AMS への対応
  • 熱や磁場解析など他の解析ツールとの連携
  • サポート
トヨタ自動車株式会社東富士研究所 トヨタ自動車株式会社東富士研究所
https://toyota.jp/

所在地:
〒410-1193 静岡県裾野市御宿1200番地

トヨタ自動車株式会社 東富士研究所の歴史は、1965 年6 月に広大な富士の裾野に約208 万平米の原野を取得したことに始まる。以後、10 年間にわたって300 億円をかけ、21 棟の施設、各種テストコースを建設、1971 年2 月に研究所の表玄関にあたる事務館も完成し、東富士研究所として発足した。先行開発を行う研究開発拠点としての役割を担っている。

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