トヨタ自動車株式会社様 (流体解析事例)

ハイブリッド車の設計開発において ドライブトレーンユニットの冷却性能予測のため ANSYS Fluent でユニット内部の油流れや温度分布を解析

トヨタ自動車株式会社でパワートレーンユニットの企画から生産までを一貫して受け持つユニットセンター、そのなかでトランスミッションやハイブリッド・ディファレンシャルといった駆動系の設計を担当するドライブトレーンユニット設計部で、CAD やCAE による解析と技術開発を担当する部署がデジタルエンジニアリング室だ。デジタルエンジニアリング室ではハイブリッド駆動ユニットの冷却性の解析にANSYS Fluent を使用している。同室主任の山田直氏にANSYS 選定の理由と、ハイブリッド車の設計にもたらしたインパクトについて聞いた。

トヨタ自動車株式会社 ユニットセンター ドライブトレーンユニット設計部
デジタルエンジニアリング室 主任

山田 直 様

決め手は解析精度の高さと機能

社内では早くからCAE 流体解析の導入が進んでいたが、それは車両部門の空力解析やエンジン部門の燃焼、吸排気解析などであって、取り扱う現象が難しい駆動部門でのCAE利用はあまり進んでいなかったという。山田氏の所属する駆動部門(現ドライブトレーンユニット設計部デジタルエンジニアリング室)で、ハイブリッド駆動ユニットの冷却性能予測のため内部の油流れ解析を目的に流体解析を使いはじめたのは2000 年代前半だった。油流れの解析は油だけの流れと、油と空気の2 相の流れとがあるが、後者の解析は難しく、さまざまな流体解析ソフトについてベンチマークテストを行いANSYS Fluent を選んだ。

「どのソルバーでもできる領域と、そのソルバーでないとできない領域、どのソルバーでもできない領域がある。我々がやりたい油と空気の流れ解析は、どのソルバーでもできる領域と、あるソルバーでなければできない領域の境界線にある。ソルバーの選定でできることが決まってくるため、精度と機能に関してはベンチマークを行って、数年かけて実験と解析結果の比較や基礎検証を行った。選択のポイントで大きかったのは精度の高さだ」

こうして選択されたANSYS Fluent が使われているのが、ハイブリッド車のエンジンとタイヤの間をつなぐハイブリッド駆動ユニットの冷却性能予測だ。いかに効率よく油を流してユニットに内蔵されたモーターを冷却するか、見えない熱を測って設計するのは難しいため、ANSYS Fluent で予測して可視化し、それに応じた設計をするという開発サイクルを目指している。

Heat Transfer Coefficient(Exterior Surface) 実物カットモデル
(左)Heat Transfer Coefficient(Exterior Surface)     (右)実物カットモデル


魅力ある車へ、変化する車づくり

トヨタ自動車のハイブリッド車は販売好調で、全世界の80 以上の国や地域で500 万台以上が走っている。暑い国や坂道が多い国もあり、駆動ユニットの性能確保は大事な技術になっている。

以前は、駆動ユニットを設計して試作し単体で評価していたが、熱に関しては車両に乗せなければ評価はできないため、車をすべて試作した段階でなければ評価が行えなかった。そのためそこでNG となると非常に大きなサイクルを再び回すことになっていた。その上、対策は開発者の経験と勘によるところが大きく、このサイクルを何度も回す場合もあったという。

これに対してANSYS Fluent を導入後に山田氏が取り組んでいる手法では、試作車両ができる前に熱の評価が可能なため、開発のサイクルが格段に小さくなり、試作の回数も減らせることになる。解析によってどの部分が冷却に効いているのか可視化できるようになって対策がしやすくなり、どの部分の温度が高いとかどの部分の冷却性効率がいいといったノウハウがたまってきて、新規開発でもある程度冷却の当たりをつけて設計できるということで、開発現場や設計部署からはかなり期待されているという。

トヨタ自動車は2013 年3 月に、“もっといいクルマづくり”に向けた商品力の飛躍的向上と原価削減を狙う中長期製品戦略「Toyota New Global Architecture(TNGA)」を発表している。

「これまでのCAE は、試作数の減少によるコスト削減というところばかり注目されがちだった。最近では『もっといいクルマづくり』というかけ声のもと、より高い商品魅力、具体的には燃費や走り・音・振動といった性能の向上と、小型軽量化・低コスト化を高次元かつスピーディーに実現するための開発ツールとしての役割が求められるようになり、期待が高まっている。

他社もCAE をどんどん活用して新しい商品を出してきている。『AT やCVT、MT でも他社には負けられない。早く、いいものを出せ』という声は以前より厳しくなっている」

これからの魅力のある車の開発には、CAE の活用は欠かせない要素だ。山田氏はハイブリッド駆動部の冷却性解析をいっそう強化するため、現在80 並列HPC オプションで使っているANSYS Fluent を256 並列に引き上げるべく準備を進めている。今後、ハイブリッド以外の駆動ユニットの解析にもCAE を提供していくという。

ハイブリッド駆動部の冷却性解析


使用したANSYS 製品

製品使用における利点

  • 流体解析における高い精度
  • 熱の可視化による設計への応用
  • 開発サイクルにおける試作回数減少
トヨタ自動車株式会社様 トヨタ自動車株式会社様
https://toyota.jp/

所在地:
〒471-8571 愛知県豊田市トヨタ町1 番地

トヨタ自動車株式会社 ユニットセンターは、2013 年4 月1 日の組織変更で誕生した4 つのビジネスユニットの1 つ。世界一の競争力を持つ自動車ユニットの開発と迅速な製品化の実現を目的として、ユニット事業の企画・開発から生産技術、生産機能を集約し、副社長であるセンター長がすべてを見る体制となっている

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