トーヨーエイテック株式会社様

イニシャルコストと管理の手間を掛けずに流体解析時間を大幅に高速化
――「ANSYS Fluent」をクラウドHPCサービスで使う

 CAEの活用によるモデルベース開発を積極的に進め、効率的な自動車開発で知られるマツダ株式会社。そのマツダから分離独立したトーヨーエイテック株式会社は、マツダのSKYACTIVシリーズに搭載されるオートマチックトランスミッション用オイルポンプや、エンジンの各気筒に燃料を送るフューエルレールなどの開発、製造を受注し供給している。グローバルな開発競争が進む自動車部品業界で生き残るために高性能な商品を短期間で開発して、客先の期待と要求に応えねばならないが、簡単なことではない。解析ツールの活用は必然だが、大企業ほどの潤沢なコストを掛けるわけにもいかない。そこでトーヨーエイテックが選んだのは、自社内にHPC(High Performance Computing)を設置するのではなく、「ANSYS Fluent」をクラウドサービス上で使うという解決策だ。同社で製造と品質保証を除いた、営業、設計、実験、生産技術などを一手に担当している自動車部品技術部 部長 松田 光伸氏、自動車部品技術部 自動車部品開発課 沖本 鉄八氏、同 鼻本 一哉氏にお話を伺った。

トーヨーエイテック株式会社
取材協力
自動車部品技術部
自動車部品開発
部長 松田光伸氏
担当

沖本鉄八氏
鼻本一哉氏

厳しくなる顧客の要求に応えるため解析ツールは必須

「前提としてCAEは絶対に必要です。これがなければお客様の要求スピードに応えていくことができません」と話す松田氏。トーヨーエイテックの主要な製品のひとつであるオイルポンプの場合、客先から吐出量やサイズなどの技術要件が提示され、それら要件の一つ一つを詳細設計で部品の形状や寸法として具体化することが開発設計なのだが、これはいわば顧客の目標を達成するために技術要件から部品形状や寸法を“逆算”する作業だ。相乗効果や相互作用がある場合、エンジニアにとってこうした逆算は苦手だと松田氏は言う。

「エンジニアが得意なのは、簡易計算で形状を仮決めしてポンプを作って試験して、結果を見て、顧客の仕様に合致するまでやり直すこと。これはとても楽な設計ですが、これではお客様は満足してくれません。ちゃんと逆算をすれば、一度で最適解が出るはずなのです。このエンジニアが苦手な逆算をやってくれるのがCAEです。我々はそう認識しています」(松田氏)

解析モデルと技術サポートに定評のあるANSYS

同社が開発部門でCAEを積極的に導入することを決めたのは2012年のこと。近年、客先でのCAEの活用拡大で開発期間が短くなり、その開発スピードに付いていくためだ。その後、ポンプ開発の一層の効率化を目指して汎用流体解析ツール「ANSYS Fluent」を2017年夏に導入した。
それまで別の解析ツールを使っていた自動車部品技術部が「ANSYS Fluent」を使うことにしたのは、ポンプ解析モデルの高い精度と、技術サポートへの高い評価がきっかけだ。

「他社のポンプ関連の論文にANSYSの開発ツールが使われているのを見て、コンタクトしてベンチマークを実施しました。 ベンチマークでは実測データをよく再現できており、技術サポートサービスの質も高いことから、導入を決定しました」(沖本氏)

ベーンポンプ流線図
ベーンポンプ流線図

クラウドHPCサービスでコストを抑えつつ解析を高速化

導入当初は社内のPCだけで「ANSYS Fluent」を動かしていたが、解析速度の高速化を目的として2018年初めにRescale Japan株式会社のクラウドHPCサービスの利用を始めた。「ANSYS Fluent」の解析精度や技術サポートには満足していたものの、ポンプの流体解析においては停止した状態から始めて何回か回転して定常状態になるまでを解析しなくてはならないこともあり、24コアのコンピュータでも3日かかることもあった。

「3日もかかっては、計算結果の精度うんぬんよりも、使う気になりませんよね。なんとかならないかと探したのがクラウドサービスです」(松田氏)

解析速度を上げるにはHPCサーバーを社内に構築する方法もあるが、HPCサーバーは初期費用はもちろん運用管理の手間などコストが高く、同社の規模と利用頻度を考慮すると、まずはクラウドサービスを利用するしか選択肢はなかったという。社内にはCAEシステムの専門管理部門がないため、ハードウェアの管理をクラウドサービスに任せることで、エンジニアは解析業務に集中できることも重要だった。「ANSYS Fluent」を使えるクラウドサービスを選定し、導入を決定し予算が下りてから利用できるようになるまで、わずか2週間ほどだった。

トーヨーエイテックは、社内コンピュータ(24コア)に加えて128コアのクラウドHPCサービスの利用を開始し、解析にかかる時間は3分の1、例えば3日間かかっていたものが24時間に高速化された。社内にHPCサーバーを置く場合と比べて、解析結果をクラウドから30分~1時間かけてダウンロードするという手間はあるが、費用や管理の手間がかからないメリットのほうがずっと大きいため問題とは考えていない。

開発期間と試作回数を大きく引き下げ

自動車部品技術部は、顧客からの技術要件をもらってから、大まかな構造を決める構想設計に3週間、実際の部品形状や寸法を決める詳細設計に2週間、試作に約1カ月、試作品で要求が達成できていることを確認して、顧客に「当社なら要求にあったポンプを開発できる」と回答するまで合計3カ月で終えることを目指している。従来は構想設計の部分だけで6~7週間かかっており、ボトルネックになっていた。これを、「ANSYS Fluent」+クラウドHPCサービスを駆使して最適な基本形状の考え方のベースを作っておくことで、構想設計期間をさらに短縮しようとしている。

開発期間短縮だけでなく、「ANSYS Fluent」導入前と比べ、開発の各段階で試作を作る回数が大きく減る効果も出ている。ポンプを使った部品の開発において、試作数は実に3分の1、試作にかかる費用もほぼ3分の1に減らすことができた。こうした実績もあって、最近では社内から「なぜ試作するの? CAEがあるでしょう」との声も出るようになった。

今後は解析精度を一層向上し、新製品開発において、構想設計段階では基本のポンプ構造の方向性決定、詳細設計では形状の最適化、および最適形状の性能予測に役立てたいと松田氏は言う。

「一番大事なのは『お客様の困りごとを解決する』そういうサプライヤーになりたいですね。困ったときにお声がけいただくのがエンジニアとしての本望ですから」(松田氏)

ギヤポンプ流線図
ギヤポンプ流線図

解析モデル 計算時間
社内PC クラウドHPC
ギヤポンプ
非定常解析
2日 0.7日
ベーンポンプ
非定常解析
3日 1日
クラウドHPC導入前後の計算時間比較

使用したANSYS 製品

  • ANSYS ® Fluent ®
    汎用流体解析ソフトウェア
    ANSYS ® HPC Pack
    大規模計算モジュール

ANSYSによる主な利点

  • 精度の高いポンプ解析
  • 技術サポートの質の高さ
  • クラウド上でも使えることによる
    コストパフォーマンスの高さ

トーヨーエイテック株式会社

トーヨーエイテック株式会社
https://www.toyo-at.co.jp/

所在地:
〒734-8501 広島県広島市南区宇品東5-3-38

トーヨーエイテック株式会社の歴史は、マツダ株式会社(当時は東洋工業株式会社)の一部門として研削盤を製作した1929年に始まる。工作機械や自動車部品製造を手掛け、1989年にマツダから分離独立してトーヨーエイテック株式会社となる。主力は国内トップシェアを誇る内面研削盤など工作機械事業、金属表面処理事業で金型や工具の特殊コーティング、自動車用部品事業ではATユニット用オイルポンプや燃料供給装置用のフューエルレールなどを開発・製造・販売している。売上高は240億円(2018年3月期)、資本金30億円(2018年3月)、従業員数は625人(2018年3月現在)

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