東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社 様

最先端プラズマプロセス成膜装置開発に貢献する 電磁界シミュレーション

東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社は、半導体製造装置およびフラットパネルディスプレイ(FPD)製造装置のリーディングカンパニーである東京エレクトロン株式会社のグループ会社として、半導体製造プロセスにおいてウエハーの表面に薄膜を付ける成膜技術を担う企業だ。半導体製造においては一般に3D化と呼ばれる、ウエハー上に何層も繰り返し膜を積んでいく成膜技術や、微細化技術が一層進んでいる。さらに成膜プロセスの低温化も進んでおり、プラズマを利用した成膜プロセスの重要度が増している。半導体製造において、顧客である半導体メーカーの要求は多種多様であり、それぞれ個別に対応するプラズマ装置を開発する必要がある。電磁界シミュレーションツールを用いることで、こうしたプラズマ装置開発を促進することができる。

東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社において、プラズマ技術関連の新規製品開発を手掛けるプロジェクト統括部 エキスパートの池田太郎氏は、ウエハー上の微細な配線に対してプラズマが与えるダメージは配線のレイアウトに依存する、という新しい知見を得て、このたび論文として発表し、権威ある米国学術誌「Journal of Applied Physics」に掲載された。この研究ではANSYSの電磁界解析ソフトウェア「ANSYS HFSS」が重要な役割を担ったという。池田氏に論文の意義やプラズマ技術開発における電磁界シミュレーションツールの重要性について伺った。

取材協力
東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社
プロジェクト統括部 エキスパート  
池田太郎 氏

プラズマ技術の開発に貢献する電磁界シミュレーション

半導体製造における成膜は、原子レベルの精度が要求される技術だ。「膜は用途によっては 200~400 nm と厚いものもありますが、最先端の薄膜の厚さは 1 nm 程度しかありません。つまり原子5個分くらいの膜を直径300mmのウエハーに均一に敷き詰める必要があります。原子1個の厚さの違いがトランジスターの電気特性に影響します」というほど厳しい。

プラズマ技術には大きく分けて「プラズマ源の開発」「プラズマ制御技術の開発」「プラズマ計測技術の開発」「プラズマ評価技術の開発」の4つの要素がある。それらいずれにおいても「ANSYS HFSS」が活用されることがあるという。

1つ目の「プラズマ源の開発」は、プラズマをどのように作るかという、プラズマのソース源の開発に関する技術。プラズマを発生させるチャンバー内で電界分布が大きく偏ると、異常な放電が発生し部材やウェハ―にダメージを与える。そのため、電界をムラなく均一にすることが求められる。2つ目の「プラズマ制御技術の開発」はプラズマへどのように電力(エネルギー)を伝えるかというものだ。電源から送られる電力はプラズマで一部が反射して戻ってくる。そこで、プラズマと電源の間にインピーダンス整合器を入れる。安定した電力を供給するためには整合器での電力損失を最小にしなければならない。3つ目の「プラズマ計測技術の開発」は、プラズマの状態をどのように見るかというものだ。半導体製造で何万枚もウエハーに成膜する中で安定して同じ厚さの膜、特性の膜を付けるために、発生しているプラズマがどういう状態になっているかということを知ることは重要だ。

図1. Cu 配線中の電子が光照射により振動し、2次電磁波を発生、Cu 配線間で共鳴し、配線間 Low-k 膜は強い電界に晒される。この電界共鳴による電界増強は光照射波長とCu 配線幅(レイアウト)に依存して発生する。
図1. Cu 配線中の電子が光照射により振動し、2次電磁波を発生、Cu 配線間で共鳴し、配線間 Low-k 膜は強い電界に晒される。
この電界共鳴による電界増強は光照射波長とCu 配線幅(レイアウト)に依存して発生する。

4つ目の「プラズマ評価技術の開発」が、今回の論文のテーマとなった。チャンバーの中で発生させているプラズマは、原子または分子の一部がバラバラになった(電子とイオンに分離した状態になった)状態である。そのプラズマの下にあるウエハー上には高い電圧や電界がかかると破壊または劣化してしまう非常に複雑で精密なLSIの配線がある。そのような環境下でプラズマによって膜を付けるには高度な技術が求められる。プラズマがLSI配線の電気特性および信頼性に悪影響を与えることを「プラズマダメージ」と呼ぶが、そのダメージの評価を池田氏は「ANSYS HFSS」で解析しており、その研究成果の一部が論文につながった。
※論文全文(英文)はこちらでお読みいただけます

今回の論文のテーマはプラズマダメージの一種である「プラズマ照射ダメージ」だ。プラズマは、電子、イオン、中性ガス、ラジカル(反応性の高い中性ガス)から成るが、それら以外にプラズマからは光も出てくる。この光が回路に与えるダメージがプラズマ照射ダメージだ。この光は、比較的高いエネルギーを持つことがあり、回路の配線の間に使われているポーラス(多孔質)Low-k材等という部分にダメージを与えることがある。このダメージにより、回路が設計通りの性能を発揮できなくなってしまうことが問題となる。

今回の論文で池田氏は、プラズマからの光がウエハー上にある銅配線のレイアウトによって強められる、言い換えるとプラズマ照射ダメージが銅配線のレイアウトに依存することを「ANSYS HFSS」による電磁界シミュレーションと実験から実証した。

「今回のシミュレーションのポイントは、配線に使われる銅を金属ではなく誘電体と見なしたことだ。銅は光から見ると負の誘電率を持った誘電体と見なせる。このように光から見ると銀や銅が負の誘電率を持つことは、光伝送やプラズモニクスの分野では昔から知られていたことだ。この負の誘電率を持つという特異な物性により、銀や銅の膜や配線で挟まれた酸化膜等の誘電膜で光照射時に電界増強効果が生じることがある。LSI配線構造も銅配線から成り、同様にプラズマ照射時に配線間絶縁膜において電界増強効果が生じるのではないかと考えた。この仮説をシミュレーションと実験により実証したことが認められて論文掲載に至った。」「ANSYS HFSS」によるシミュレーションでは、プラズマから出たフォトンの波長を計測して周波数を求め、その周波数を基に解析計算を行っている。

装置メーカーとしての競争力をサポート

もともとプロセスエンジニアだった池田氏だが、要素開発部門に異動し、自身で電磁界シミュレーションを始めた2008年以来「ANSYS HFSS」を使っている。プロジェクト統括部ではさまざまなシミュレーションツールを使用しているが、「個人的な見解ですが『ANSYS HFSS』の優れているところは3次元解析の速度、それにGUIの充実です」という。プロセスエンジニア時代はCADもシミュレーションツールも使ったことがなかったため、最初の1、2年をかけてANSYSの技術サポートと毎日のように電話でやりとりして解析スキルを習得したという。

池田氏はプラズマに関連する技術や装置開発全般を担当しているが、電磁界シミュレーションツールは欠かせないものになっていると強調する。「私はシミュレーションツールを、どういうものを作っていったらいいか、どういう構造にしたらいいかという方向性を決めるためのツールとして使っています。逆に言うと電磁界シミュレーションがなければ方向性が見えてこないこともあるんです。そうなるといろんな方向性のものを作ってみなくてはならず、ものづくりのコストや期間、評価するための工数などがかかってしまいます。」池田氏が関わったプラズマ装置でも、電磁界シミュレーションがなければ今のような優れた形ではなく、全く異なる方向性に進んでいただろうと思える構造や製品はいくつもあるという。

また、池田氏はシミュレーションツールを使って独自の技術や製品を開発することについて、業界をリードするメーカーとして重要なことだと指摘する。「電磁界シミュレーションツール等を用いて、自らプラズマ装置を設計していかなければ、世界をリードする装置メーカーとしての技術競争力はどんどんなくなってきます。 また自ら開発していけば、顧客の要望に応じて装置および周辺技術をカスタマイズすることができます。さらに、将来への技術継承も可能になり、技術競争力の維持・向上に貢献することができます。電磁界シミュレーションを使う意義はそういったところにあるのです。」

図2. Cu配線に対して垂直に電界が入射すると、Near-field effect によりCu配線表面近傍で強い電界が発生する。
図2. Cu配線に対して垂直に電界が入射すると、Near-field effect によりCu配線表面近傍で強い電界が発生する。

使用したAnsys 製品

  • Ansys HFSS
    電磁界解析ソフトウェア

ANSYSによる主な利点

  • 3次元解析の高速性
  • 充実したGUI
  • 電話による技術サポート
東京エレクトロン 
テクノロジーソリューションズ株式会社
 様
東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社
https://www.tel.co.jp/about/locations/tyl.html

所在地:
〒407-8511 山梨県韮崎市藤井町北下条2381-1

東京エレクトロン株式会社は、1963年に半導体製造装置などの産業用装置の輸入やカーラジオなどのコンシューマー製品の輸出を手掛ける技術専門商社「株式会社東京エレクトロン研究所」として設立された。1978年に「東京エレクトロン株式会社」に商号を変更、1980年代には半導体製造装置の自社生産を開始して商社からメーカーへと業態を変える。半導体製造装置とフラットパネルディスプレイ製造装置を2つの柱として世界中に提供し、それら製造装置の多くは、世界市場でトップシェアとなっている。グループ企業は国内を含め世界17カ国/地域に34社。従業員数は1万3,021人(2019年4月1日現在)、売上高は1兆2,782億円(連結、2019年3月末)。東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社は東京エレクトロンのグループ企業で2017年に現在の商号となった。成膜装置全般の研究開発・製品開発および製造を手掛け、山梨県、岩手県、東京都に事業所を持つ。

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