株式会社トクヤマ 様

コロナ禍による在宅勤務でのCAE利用への注目
ユーザー視点で見るAnsys Cloudの導入から利用までの実例を示す

新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりは、開発現場にも影響が及び、エンジニアの働き方も変わらざるを得ない状況となった。会社での利用が当たり前だったCAEもまた、今までと異なる環境でも高い利便性で利用できることが求められている。自動運転やEV、5G、デジタルツインといった最先端製品において、研究開発はもちろんのこと、概念設計、製造、運用に至るまで、問題の解決にシミュレーションの活用は必須となっている。

株式会社トクヤマ 徳山製造所 生産技術センターの上田政樹氏は、在宅勤務実施に際し「Ansys Cloud」を導入し、その実用性や課題について各種のデータを交えながら評価した。

取材協力
株式会社トクヤマ
徳山製造所 生産技術センター  
上田政樹 氏

在宅でのCAE利用の問題点と「Ansys Cloud」

上田政樹氏によると、トクヤマにおいても外出自粛による在宅勤務の必要性が急務となったが、そこには2つのハードルがあった。自宅にある性能の限られたコンピュータではCAEの利用に限界があったことと、CAEツールのネットワークライセンスを取得するために社内環境へのアクセスが必要だったがセキュリティ上の問題からすぐに対応することはできない状況だったことだ。これに対応するため、通常業務で主に「Ansys Fluent」を使用していたことと、在宅勤務に限らず多様な利用形態が期待できることから「Ansys Cloud」の導入を決めた。

「Ansys Cloud」はMicrosoftが提供するクラウドコンピューティングサービスAzureに、企業に要求される堅固なセキュリティを組み合わせて、堅牢かつ安全にシミュレーションを実行できるCAE専用クラウドサービスだ。「Ansys Cloud」には2つの利用方法があり、1つはAnsysのCAEツールがインストールされたクラウド上の仮想PCにアクセスして操作するVDI(Virtual Desktop Interface)環境である「クラウドデスクトップ」。もう1つは形状の作成やメッシュ作成、解析の設定までをローカルPCで行い、多くのコンピューティングリソースが必要で時間のかかるソルバーによる解析だけをクラウド上で実施する、いわゆるバッチジョブ方式だ。バッチジョブ方式の場合、解析後のポスト処理もローカルPCで行う。

「Ansys Cloud」のクラウドデスクトップはコロナ禍によるニーズを受けて、最近追加された利用形態だ。利用できるCAEツールは「Ansys Fluent」「Ansys Mechanical」「Ansys LS-DYNA」およびエレクトロニクス製品で、今後「Ansys CFX」なども追加される予定になっている。クラウドデスクトップで利用できる仮想PCは1種類。16コアCPU、220GB RAMという構成でクラスタには対応しないが、ローカルPCの性能に関わらずCAEツールが使えるメリットがある。

バッチジョブ方式では、「Ansys Fluent」で利用する場合、12コアで112GB RAMの仮想PC1台という構成から、224コアで1,792GB RAM、16台の仮想PCによるクラスタ構成まで4種類から選択できる。プリ/ポスト処理はある程度高性能のPCで行う前提のため、ローカルPCの性能によって解析規模が限定される。

「Ansys Cloud」の利用には「Ansys Elastic Licensing」というライセンス方式が適用される。「Ansys Elastic Licensing」はインターネット上のサーバで認証するプリペイド方式の従量制で、「Ansys Elastic Units(AEU)」をパッケージ単位で購入し、利用するハードウェア(仮想PC)とソフトウェアごとに定められた1時間当たり利用量に従ってAEUを消費することになる。なおソフトウェアについては、AEUを使わずに社内のネットワークライセンスでも利用できる。

Ansys Innovation Conference 2020の講演資料から
   Ansys Innovation Conference 2020の講演資料から
   Ansys Innovation Conference 2020の講演資料から
Ansys Innovation Conference 2020の講演資料から

解析の実際および時間/コストの検証

上田氏は講演で、「Ansys Cloud」と「Ansys Elastic Licensing」を利用して、自宅から粉体輸送配管のエロージョン(侵食:粒子が衝突することで部材が削り取られていく現象)を「Ansys Fluent」で解析した例を挙げ、利用時間やコストについて説明した。クラウドデスクトップ方式で、仮想PC上で配管の形状作成、メッシング、解析設定まで行った後、ソルバーによる解析はバッチジョブ方式(224コア構成)を利用、そしてクラウドデスクトップ方式によるポスト処理という流れだ。この解析で利用した時間はクラウドデスクトップ方式に12時間、バッチジョブ方式に1.5時間であった。AEUは合わせて158を消費した。

「Ansys Cloud」を在宅勤務で利用した上田氏は、以前社内で事務作業用にVDIを使った際、途中で回線が切れるなどスムーズな作業ができなかったことから、VDIにあまり良い印象を持っていなかったというが、「Ansys Cloud」のクラウドデスクトップは接続が途切れることもなく快適に使用でき、GUIも整備されていて初心者やライトユーザーでも使いやすい印象と評価している。

上田氏はまた、AnsysのCAEツールの通常の年間ライセンスおよびハードウェアレンタル費用についてそれぞれ、「Ansys Elastic Licensing」によるコストを比較検証した。それによれば、1年分のソフトウェアライセンスおよびハードウェアレンタル費用で、「Ansys Elastic Licensing」では、それぞれ約1か月、約2.5カ月使用できる計算だ。

「コスト以外の利便性など、ユーザーによって何を評価するかで総合的な価値判断は異なると思います。しかし、在宅勤務をずっと続けるという観点から見ると、クラウドサービスの利用は割高な印象なので、普及のためにもローカルPC利用と同等レベルの価格設定になることを期待します」(上田氏)

穴あき発生配管   エロージョン解析
左図:穴あき発生配管、右図:エロージョン解析

圧倒的に柔軟な利用ができる「Ansys Cloud」

上田氏は「コスト以外の利便性」としていくつかの利用シーンを挙げた。まず、社内で解析を行う場合でも解析処理時間短縮のために大規模マシンリソースを使いたい場合、つまり複数の解析ジョブの並列実施や、多数のコア構成での計算を、「Ansys Cloud」のバッチジョブに任せるという使い方だ。次に、解析への負荷が集中する時期に、社内PCには空きがあるがソフトウェアライセンスが不足している場合に、「Ansys Elastic Licensing」でライセンス数を一時的に増やす使い方。このほか、ライセンスを持っていないソフトウェアの利用/試用や、通常は流体解析を行っているが、まれに構造との連成解析をしたい場合に構造解析ソフトウェア分のライセンスを利用する、といったことが考えられると指摘している。 「『Ansys Cloud』と『Ansys Elastic Licensing』は在宅勤務だけでなく、社内でも幅広い利用ができるサービスだと思います。また、CAE使用頻度が低い部署でのメリットもあります。PCの管理も不要で、導入も停止もすぐにできるので、CAEソフトの試験導入への障壁を下げるサービスであると感じています」(上田氏)

「Ansys Cloud」の全体的な評価について上田氏は「『Ansys Cloud』の実用性は十分に高く、在宅勤務においても社内環境と変わらない仕事ができました。私が利用している短い間にも、さまざまなアップデートが行われ、使い勝手が改善されました。コストの低減とともに、クラウドの安定性の一層の向上と障害情報のリアルタイム提供、仮想PCの起動やクラスタ構築にかかる時間の短縮に期待しています」とまとめて締めくくった。

※こちらの事例はAnsys INNOVATION CONFERENCE 2020 にてご講演いただきました内容を元に作成
 講演:CAEクラウドサービスの実用性と課題

使用したAnsys 製品

  • Ansys® Cloud
    堅牢かつ安全にエンジニアリングシミュレーションを実行できるクラウド環境
  • Ansys® Fluent®
    汎用熱流体解析ソフトウェア
  • Ansys® Mechanical®
    構造・伝熱解析ソフトウェア

ANSYSによる主な利点

  • 在宅時でも社内と変わらない解析環境の提供
  • 柔軟なライセンスの利用形態
株式会社トクヤマ
https://www.tokuyama.co.jp/

所在地:
〒745-8648 山口県周南市御影町 1-1(徳山製造所)

株式会社トクヤマは炭酸ナトリウム(ソーダ灰)の国産化を目指し、1918年に日本曹達工業株式会社として、山口県徳山町(現在の周南市)に設立された。炭酸ナトリウムに加えカセイソーダやセメント生産によって事業を拡大し、1960年代にプロピレンオキサイドの製造を開始し石油化学関連事業に参入。70年代から80年代にはポリプロピレンフィルムや電子工業用薬品、多結晶シリコン、窒化アルミ粉末など加工型事業に参入した。現在は化成品部門、特殊品部門、セメント部門、ライフアメニティ部門の主に4つの事業を展開する化学素材メーカー。国内各地に営業拠点のほか、製造拠点2つと研究所、海外では7つの国と地域に製造・販売拠点を持つ。売上高は3,160億円(連結、2019年度)。従業員数5,679人(連結、2020年3月末)。

顧客事例一覧ページに戻る>

※ 本ページに記載されている情報は取材時におけるものであり、その後変更されている可能性があります。予めご了承下さい。

ANSYSへお問い合わせください

お問い合わせ先
Contact Us