大阪府立大学様

直接観察することが難しい医薬品や食品の製造プロセスにおける粒子の振る舞いを、ANSYS Fluent によるシミュレーションで解析・可視化し、現象の理解とプロセス最適化に活かす

製薬や食品、電子材料、エネルギーといった広範な製造業の製造プロセスにおいて、材料を微細な粒子(粉体)にしたり、粉体を移送したりすることは広く行われている。だがそうしたときの粉体の振る舞いについては、つい10年ほど前まではあまりよく分かっていなかった。この粉体の挙動について20 年以上に渡り、シミュレーションを使って研究しているのが、大阪府立大学 大学院工学研究科 物質化学系長で、工学域 生産技術センター長の綿野哲教授だ。10年ほど前からはANSYS Fluent を導入して研究している綿野教授の粉体解析は、この分野で世界をリードする最先端のものだ。
さまざまな企業との共同研究を手がけるとともに、国内外での学会や講演などを通じて、製造業へのシミュレーションツールの現状に詳しい綿野教授に、粉体領域へのシミュレーションツール導入のメリットや課題についてお話を伺った。

大阪府立大学 大学院工学研究科 物質化学系長 工学域 生産技術センター長
工学博士
綿野 哲 教授

Fluent の導入で研究の作業効率が大幅向上

綿野教授がシミュレーションによる粉体解析を始めたのは25 年ほど前だが、その当時はコンピュータの計算能力も低く、粒子と粒子がぶつかれば付着するといった確率論を織り込んだモンテカルロ法やポピュレーションバランス法などの定性的なシミュレーションを用いていた。その後1996年頃になって、粒子離散要素法の実用化が進んだのを受け、大学で自分たちのプログラムコードを書いて研究に取り組んだが、それでも理想的な粒子の形状での解析でかつ粒子数も限られていた。状況が変わったのが2005 年頃にFluent を導入してからだ。

乾式粉砕機の数値シミュレーション
乾式粉砕機の数値シミュレーション

Fluent を最初に使い始めたのは、容器の中で高速にハンマー状の羽根が回ることで粉体を砕く乾式粉砕器のシミュレーションだ。粉砕器自体は以前からあったが、粒子がどこにどのようにぶつかっているのかといった理屈はよく分かっておらず、装置の開発は経験的に行われていた。最初は実験で解析しようとしたが、それだけでは不十分ということから、Fluent を導入してシミュレーションを始めた。そのポイントとなったのは、粉砕器の容器や羽根の形状を設計したCADデータを取り込んで計算に使えるということ、これによって作業効率が大幅に向上したのだ。

その時点でも流体解析ソフトは複数あったが、「Fluentは一番使われているソフトの1つで、安定性と安心感、それにサポートを十分受けられるだろうというイメージで選びました」(綿野教授)。ただ、サポートの点については、やろうとしていた乾式粉砕器の解析が世界初の試みだったために先例がなく、使いこなせるようになるまで相当の苦労があったそうだ。

シミュレーションが実験のやり方を変えた

努力の甲斐あって、粉砕器の中で1つ1つの粒子がどこにどんな速度でぶつかってどのように破壊され動いていくか、ということが初めて解析できた。これに対しガラス製の観察窓を取り付けた特殊な粉砕器を作り、超高速度撮影できるビデオカメラで粒子の動きを撮影したところ、シミュレーションの正しさが確認できた。この解析で、小さくなった粒子は回転する羽根にぶつかるのではなく羽根に加速された空気に乗って容器側にぶつかって壊れているという世界初の知見を得た。この知見によって、これまで羽根の設計ばかりをやっていたが、容器側の形状も大事だということが分かったという。

それまでは実験や経験から装置を作っていたが、以後はシミュレーションでどんな形がいいのかをまず計算してから実験装置を作るという逆のアプローチができるようになり「解析の方向性、やり方がずいぶん変わりました」。その後、コンピュータの計算能力も格段に向上したことで、容器サイズを大型化したときにどうなるかという「スケールアップ」のシミュレーションもできるようになった。「これはものすごく大きいことだと思います。どういうメカニズムでスケールアップするか、1つの素過程が小さな容器でも大きな容器でも同じだということを確認できるようになり、いろいろな場面でシミュレーションが使えるようになりました」。

装置を作る前に計算でおよそのことが分かるようになった、このことはシミュレーションが与える大きなインパクトの1つで、製造業、特に製薬業界ではいま盛んにそういうシミュレーションを行って製造装置のスケールアップやプロセスの最適化に活かしているという。基礎研究においても生産技術においても応用されている。結果を予測してものを作ることができるため余計な試作をせずに済むようになったのだ。「一番大きいのは、粒子の動きを可視化できるようになったことですね。運動のメカニズムが分かるようになったことが大きいのです。付随して、研究にかける時間やコストも、試作を減らし、実験が減ることで大きく削減できました」。

シミュレーション導入の早道は

時間やコストの削減という目に見える効果が得られるシミュレーションツールは、改良が重ねられて入力や設定も簡単になり、ユーザービリティは向上しているが、いきなり安易にシミュレーションツールを導入することには注意が必要だ。「実験して実際の現象を見てもらってからでないと、原理原則が分からないままシミュレーションしてもだめ。簡単にシミュレーションできるとはいっても、結果が正しいのかどうかということを判断するのは難しい。そういう意味では、企業も最初は大学などと共同研究で進めることが多いですね」。シミュレーションツールを企業が導入する際のハードルの1つがイニシャルコストだ。また、きちんとした結果を出すには使いこなしのノウハウも必要となる。ハードウェアと違い、費用対効果が示しにくいものだけに、まずは大学との共同研究というアプローチは考慮に入れるべきだろう。

高速撹拌造粒機のスケールアップ(2ℓ→112ℓ)
高速撹拌造粒機のスケールアップ(2ℓ→112ℓ)

綿野教授が出席する学会などでは、シミュレーション関連のものが増えているほか、綿野教授らが発起人となって化学工学会でCFD研究会を今年立ち上げるなど、シミュレーションツールはいっそうの広がりを見せている。今後、シミュレーションツールの活用が増えると予想される分野について綿野教授はこう話す。「電子材料、エネルギー、電池、医薬、食品などの成長産業を中心にシミュレーションツールの導入が増えてくるでしょう。これまで考えもつかなかった用途がどんどん出てくる可能性もありますね」。

使用したANSYS 製品

製品使用における利点

  • 流体解析ツールとしての実績と信頼性
  • 粒子解析ツールとのカップリング
大阪府立大学 大阪府立大学
http://www.osakafu-u.ac.jp/


所在地:
〒599-8531 大阪府堺市 中区学園町1-1

大阪府立大学は1883年(明治16年)に設立された獣医学講習所に始まる130年以上の歴史を持つ。1949年に大阪府下にあった7つの旧制専門学校を母体として浪速大学となり、1955年には大阪府立大学に改称、そして2005年には大阪女子大学および大阪府立看護大学と合併して現在に至る。学生数約8,000人(2014年)が現代システム科学域、工学域、生命環境科学域、地域保健学域で学ぶ。「高度研究型大学 ―世界に翔く地域の信頼拠点―」を基本理念として掲げている。

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