マイクロ波化学株式会社様

世界の化学製造プロセスに革命をもたらすマイクロ波化学の挑戦を支える、「ANSYS HFSS」と「ANSYS Fluent」の連成解析

化学産業は化学反応によって原料を加工し、さまざまな物質を作り出す産業であるが、その製造プロセスは熱や圧力を加えるというもので、19世紀後半から現在まで大きな変化はない。現在の化学産業は、産業界全体のエネルギー消費のうち30%、二酸化炭素排出量の17%を占めることに加え、工場には広い敷地を必要とする重厚長大な産業と言える。この100年以上変わらなかった化学産業のものづくりに、マイクロ波を応用した製造プロセスによってイノベーションを起こし、世界を変えようとしているベンチャー企業が、マイクロ波化学株式会社だ。

マイクロ波化学株式会社は、電子レンジがマイクロ波で食品の水分にエネルギーを伝えて加熱するのと同じ原理を使い、特定の分子にエネルギーを伝達することによって化学反応を分子レベルでデザインする技術を開発することで、化学製品の製造プロセスを省エネルギー化、高効率化するのみならず、工場をコンパクトにでき、さらに新しい物性や構造を持つ物質の製造を可能とした。マイクロ波を使った化学反応の研究は30年ほど前から世界中で行われてきたが、いずれも実験室レベルにとどまっており、実際の化学工場の製造プロセスに応用できる実用レベルの技術を持つのはマイクロ波化学株式会社だけだ。

同社ではマイクロ波を使う化学反応器の設計開発に、ANSYSの電磁場解析ソフト「ANSYS HFSS」と汎用熱流体解析 ソフト「ANSYS Fluent」を使用して成果を上げているという。他にほとんど実用例のない、マイクロ波解析と熱流体解析の連成は、マイクロ波化学株式会社が切り開いている新分野だ。ANSYSのシミュレーションツールがマイクロ波化学株式会社の技術開発にどのように使われていて、どんなインパクトを与えているのか、同社の共同創立者であり、現在は取締役CSOを務める塚原 保徳氏にお話を伺った。

マイクロ波化学株式会社
取締役CSO

塚原 保徳 氏

100年間変わらない化学製造プロセスをマイクロ波で変える

「我々のミッションは、マイクロ波を使った化学製造プロセスという、まったく新しい概念を世の中に提供して、産業革命以降ほとんど変わっていない化学産業を変えていくことです。化学産業の市場規模は約500兆円といわれていますが、その30%をマイクロ波を使ったものに置き換えようとしています」(塚原氏)

マイクロ波とは、周波数でいえば300MHz~300GHzの電磁波を指す。電子レンジは2.45GHzを使っているが、それは水分子にエネルギーを送るよう最適化してあるためだ。

同様に、特定の物質が吸収する周波数のマイクロ波を放射することで、反応系に含まれる触媒や基質、溶媒などのうち、狙ったものだけにエネルギーを伝達して加熱することができる。マイクロ波化学株式会社が持つ技術は、どの反応系の何にエネルギーを伝達するかをデザインし、製造プロセスの中でその反応を受け持つ反応器を設計するという技術だ。

流体解析
流体解析

 

予測が難しい反応器内部の電磁場を「ANSYS HFSS」で解析

「求める物質を得るための最適な化学反応のデザインを決定したら、反応器を設計します。反応器のキャビティ内にどのように電場を分布させるかというのが我々のキーとなる技術です。効率よく目的の場所にマイクロ波を伝達させることと、反応を監視するためののぞき窓などの開口部からマイクロ波が漏れないようにするという、2つの観点で設計しなくてはなりません。この設計に『ANSYS HFSS』を使っています」(塚原氏)

一般的な電場分布の解析と大きく異なるのは、反応器内部で物質が化学反応によって変化していく点だ。反応器を流れていく原料は徐々に化学変化を起こすため、場所によってマイクロ波の吸収度も変わっていく。全体を同じ環境と見なしてしまうと、解析はうまくいかないため、セグメントごとに細かく区切り、それぞれの値を入れて解析しているという。こうしたノウハウは世の中にはなく、同社が独自に得たものだ。こうした工夫によって、意図通りの反応器の設計が可能になった。

変化し流れる物質を電磁場‐熱流体 連成で解析

反応器の設計においてもうひとつ重要な点が、撹拌だ。化学反応の原料が液体の場合、反応器の中で撹拌して効率を上げている。一般的な化学工場では熱を伝えるためと物質混合のために撹拌するが、マイクロ波を使った製造プロセスでは物質が自己発熱するため、物質混合のためだけに撹拌する。マイクロ波を原料に当てながら撹拌することで、どのように分布していくかを「ANSYS HFSS」と「ANSYS Fluent」の連成によって解析している。電磁場と熱流体の連成解析は研究レベル以外では例のない新しい分野のシミュレーション技術であり、ANSYSと協力しながら解析手法を構築している。

「本当に新しい領域なので、反応器の特定の場所にどうやってマイクロ波を通すか、あるいは通らないようにするかなどは、原理的、理論的にはある程度までしか予測できません。そのため反応器の複雑な構造の設計は、解析モデルを作って検証します。1つの反応器を作るために何百通りもの解析を行っています」(塚原氏)

具体的な電磁場‐熱流体 連成解析の設計への適用としては、マイクロ波が撹拌羽根の軸を伝って液中に入り、結果として軸近くだけが加熱され熱分布ができやすくなる課題に対して、撹拌で軽減できるかどうか、軽減できないならマイクロ波が伝わらないように軸の形状を変えるといった設計検討に使っている。また連成ではないが、完成したプラントで原料が沈降するトラブルが発生したときには、「ANSYS Fluent」の流体解析 で撹拌羽根を改良して解決した。

マイクロ波化学株式会社では最近、解析研究者を増強すると共に、スーパーコンピュータを導入した。これにより複雑な内部構造を持つ30mもの大きさの反応器の設計を加速する。同社が開発したマイクロ波製造プロセスを工場に導入を検討している企業は、三井化学株式会社、岩谷産業株式会社、ペプチスター株式会社、三井金属鉱業株式会社、フタムラ化学株式会社など国内外に広がっており、5年後の2023年には工場数48(現在4、以下同)、社員数200人(45人)、売上120億円(約6億円)を目指している。

「反応器は心臓部なのでその解析が間違っていたら当社のビジネスは成立しません。解析ソフトは開発ツールとして不可欠であることは間違いありません」(塚原氏)

電磁場‐流体 連成
電磁場‐流体 連成

使用したANSYS 製品

ANSYSによる主な利点

  • 使いやすさ
  • 市場での評価の高さ
  • 電磁場と流体の連成解析
  • サポートの良さ
マイクロ波化学 大阪事業所 マイクロ波化学株式会社様
http://mwcc.jp/

所在地:
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2番8号テクノアライアンス棟3階

マイクロ波化学株式会社は、代表取締役社長CEOの吉野 巌氏と取締役CSOの塚原 保徳氏の2人によって、2007年に創業したベンチャー企業。電子レンジなどで利用されているマイクロ波を化学反応に適用し、化学産業で100年来用いられている化学反応プロセスを効率化したり、新しい物質を生み出すことで世界のものづくりを変えることを目指している。多くの困難に直面しながらも、2014年にマイクロ波を使った製造プロセスで化学品を生産する世界初の工場を自社で建設したことが化学業界に衝撃を与え、これを機に国内外の大手化学メーカーとの共同開発プロジェクトが立ち上がった。資本金38億1,400万円、社員数44人(2018年7月)。

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