光洋サーモシステム株式会社様

たった一人で始めたCAE がなくてはならない強みに変わるまで

1,000 度にも達する高温に熱した金属部品を油に浸して焼き入れする工業加熱装置から、わずかなほこりも許されないクリーンルームでシリコンウェハーを熱する半導体製造装置やフラットディスプレイパネルのガラス基板を熱処理する製造装置まで、幅広い分野に向けて熱処理装置を提供しているのが光洋サーモシステム株式会社だ。ある分野に特化した熱処理装置メーカーが多い中で、熱処理の総合メーカーという珍しい存在の同社。装置の心臓部に当たる、加熱ヒーター「ヒートエレメント」まで内製して、多くの自社製装置に使用しているという。

つい2001 年ころまでは、これら装置の設計は職人的な勘・コツ・経験によって行われていた。開発や研究を行う部隊はなく、CAE の認知度は非常に低かった。そうした企業風土の中でCAE の重要性を説き、商品開発やトラブルの原因検証におけるCAE の有効性を示しながら、同社初の解析専任部隊を立ち上げたのが、商品開発部 次長で技術管理グループ長 兼 商品開発グループ 実験解析チーム長の藤山周秀氏だ。その藤山氏に、CAE を社内に根付かせ、欠くことのできない存在にしたプロセスについて、お話を伺った。

光洋サーモシステム株式会社
商品開発部 次長
技術管理グループ長
兼 商品開発グループ
実験解析チーム長

藤山 周秀 様

ANSYS ツールで熱処理装置内部を連成解析

もともと新商品開発のために光洋サーモシステムに入社した藤山氏は、まず自分が担当する誘導加熱装置の開発効率を上げるためにCAE ツールを導入してもらった。当時、社内にはCAE を使う土壌はなく、プレゼン資料を上層部に見せたところ「“CAE”って何をするものなんだ?」と言われて驚いたほどだったという。当初導入したのは3D CAD にアドインして使うミドルレンジのCAE ツールで、熱流体解析、構造解析、電磁場解析の3 つを使って、熱処理装置内の流れや温度分布、応力や磁場などを可視化した。社内プレゼンでCAE データを使っていくことで、徐々にCAE への理解が進み、他部署からの解析依頼は更に増加した。そして、CAE 技術の飛躍的なレベルアップを目指して、 2007 年にCAE 専任部隊が発足した。

当初、藤山氏と社員2 人でスタートした解析チーム。CAE の社内浸透と活用で、より精度の高い解析結果を求められるようになり、ハイエンドCAE ツールを導入することにした。社内解析事案は、6、7 割が熱流体解析、2、3 割が構造解析、残りが電磁場解析という状況であり、まずANSYS Fluent を導入した。そして温度分布の解析を高い精度でできるようになってからANSYS Mechanical を追加導入した。これは、熱応力解析と呼ばれる熱と構造の連成を非常に多く行うためだ。ミッドレンジCAE ツールを使っていたとき、CAD と一体で使える便利さを実感していたことから、ANSYS Workbench を使った連成解析が効率的におこなえるANSYS Fluent とANSYS Mechanical を選んだ。「熱流体解析から構造解析にシームレスに移れるというのは大きなメリットです。『データを変換しないと』、『中間ファイルが』というようなことになると非常にやっかいなので(Workbench の利用に)迷いはまったくありませんでした」。ANSYS の技術サポートが、問い合わせに対して、レスポンス良く非常に的確で親身に対応してくれていることも大きかった。

連続炉の温度プロファイル(自動搬送される処理品の温度分布)
連続炉の温度プロファイル(自動搬送される処理品の温度分布)

解析チーム発足から、2 年後藤山氏はチーム名を「実験解析チーム」に変更。炉内は200 ℃~1,000 ℃と高温のため、実験で流速や温度分布を把握することが難しい。そのため、常温で測定したデータと常温物性による解析結果の比較で妥当性を検証し、ノウハウを蓄積することにより、解析精度を高めることに努めている。


導入ガスの濃度分布
導入ガスの濃度分布
加熱室の速度分布
加熱室の速度分布
油槽室の速度分布
油槽室の速度分布
熱処理装置のトータルシミュレーション

「CAEをやっていたから取れた案件」に涙

3 人で始まった専任部隊は現在8 人にまで増え、よりレベルの高い解析ができるようになった。この間、社内でのCAE への評価は格段に向上した。「Fluent を使い始めて、解析結果をお客様のところへ自信を持って出せるようになりました。作ってみてやってみてなんぼの世界なので、CAE ツールで炉の中の温度や流れ、分布をお見せすると、お客様は本当に喜んでくださるのです」。顧客からの喜びの声は上層部に直接届き、実験解析チームの評価はより高まった。役員会議の営業提出資料に「CAE をやったからこそ取れた案件」という記述があるのを知ったとき、藤山氏は涙が出るほど嬉しかったという。「お客様の窓口である営業が、一番CAE の効果を感じて喜んでくれるんです。それが会社の空気を変えたんじゃないかと思います」

もう一つ、CAE の導入が生み出した、企業にとって重要な強みがある。それは、解析結果を用いた特許出願である。藤山氏は、結果を報告する際、「この結果から、このようにすべきだと考える」、「こうした方が流れが良くなる」といった更なる改善につながる提案を含めるよう、解析チームのメンバーに指導している。この指導で生まれた新しいアイデアや工夫が特許出願につながり、ここ数年では、年に3、4 件を取得しているという。

いまや、光洋サーモシステムでは「CAE がなくては回らない」という状況にまでなった。そして社長から藤山氏に「断トツのCAE 技術を持ちなさい!」との指示がでているのだという。熱処理の業界の中で同社レベルの解析が行えるところはなく、かなりのアドバンテージを持っていると自負する藤山氏だが、その目はもっと先を見ている。「当社でのCAE のゴールは、熱処理品質の予測技術確立です。熱流体解析で流れや温度分布、ガスの濃度は見せられますが、お客様のご要望は『その分布でこの熱処理したいものがどんな品質になる?』ということです。それを示せなければ中途半端なんです」

CAE 文化を持たなかった企業が、十数年で、現場から経営層までCAE の利点を十分に理解し、なくてはならない存在だと言うほどに変わってきた。そしてさらに、まだ他社が到達できていない高みに向かって進んでいる。

炉の冷却(アニメーション)
炉の冷却

使用したANSYS 製品

製品使用における利点

  • 熱流体解析と構造解析の高度な連成
  • Workbench による熱流体解析と構造解析のシームレスな連携

光洋サーモシステム株式会社様

光洋サーモシステム株式会社
http://www.koyo-thermos.co.jp/

所在地:
〒632-0084 奈良県天理市嘉幡町 229

光洋サーモシステム株式会社は、1958 年に光洋精工株式会社(現、株式会社ジェイテクト)が工業用熱処理炉の国産化を目指して設立したリンドバーグ事業部に端を発する。1967 年に米General Signal Corporation 系列会社との合弁により光洋リンドバーグヘビーデューティー株式会社として独立し、1999 年に合弁を発展的に解消した後、現社名に変更した。事業部設立以来一貫して熱処理技術に注力しており、工業加熱装置、半導体製造用炉、電子部品製造用炉、化学実験用小型電気炉などを手がけている。

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