国立大学法人群馬大学理工学部様

モデルベース設計/解析は、複雑で大規模化する製品開発向けシミュレーションへの福音となる

シミュレーションツールを使った解析は、HPC クラスタなど大規模なコンピュータリソースが使えるようになってきたことで、かつての比較的単純で小さなモデル/限定された範囲から、周辺の部品を含めたものや、マルチフィジクスなど、より複雑でより大きなモデル/範囲を対象にしたいという設計開発現場からの欲求が強まっている。それでも、複雑で巨大なシステム全体を一度にシミュレーションすることは、コンピュータリソースコストや解析に要する時間の面から現実的ではない。その一方で、自動車や組み込みシステムは複雑化、大規模化の一途をたどっており、これら多数の部品を含む製品を効率的に解析していかなくては、今後開発コストはどんどん膨らんでいくだろうと懸念されている。このような課題に対する有効な手立ての一つが、モデルベース設計/モデルベース開発(MBD:Model Based Design/Model Based Development)だ。

モデルベース統合開発環境であるANSYS SCADE Suite を使って、組み込みシステムや電気自動車の開発、非破壊検査、人体の非侵襲的検査手法を研究している、国立大学法人群馬大学理工学部 理工学研究院知能機械創製部門 工学博士 白石洋一准教授と、同 研究・産業連携戦略推進機構 産学連携・知的財産戦略室 高度人材育成センター 高橋修司研究員に、モデルベース設計と、設計/開発以外への応用となるモデルベース解析についてお話を伺った。

国立大学法人群馬大学 理工学研究院知能機械創製部門

准教授 工学博士
白石 洋一 様

国立大学法人群馬大学 研究・産業連携戦略推進機構
産学連携・知的財産戦略室
高度人材育成センター 研究員
高橋 修司 様

倒立振子ライントレースロボット
倒立振子ライントレースロボット

シミュレーションを効率化し、応用範囲の広いモデルベースの手法

自動車、とりわけハイブリッド車や電気自動車の設計開発ではモデルベース設計は当たり前のように使われているが、自動車以外の業界ではまだそれほど利用されていないという。白石准教授は、モデルベースのシミュレーションを設計や開発だけに限定せず、さまざまな事象に応用して、モデルベースのシミュレーションで解析する“モデルベース解析”を研究している。

モデルベース解析の応用範囲は多岐にわたるが、白石准教授の取り組みの中でユニークなものとしては、樹木の幹や鋼管柱を叩いてその振動波形を解析し、樹木の空洞や、鋼管柱の穴や腐食を見つけようというものがある。「専用シミュレータを作ることは大変なので、ハンマーや鋼管柱をモデル化し、ハンマーで鋼管柱を叩いたときどうなるか連成でモデル化して全体シミュレーションを行おうというものです。まだ研究途中ですが、最終的には街頭の信号機や標識などの損傷を、叩いて振動波形を測定するだけで見つけられるはずだということで進めています」(白石准教授)。

また人体の非侵襲的検査への応用も研究中だ。正確な血圧を得るためにはカテーテルを心臓弁まで入れて計測する必要があるのだが、脈波(血管への血液流入による変化を波形として捉えたもの)を外から計測して、動脈硬化や心臓弁の異常をシミュレーションしたものと比較することで、最終的には脈波を計測するだけで、外見では分からない疾患を見つけることを目指すものだ。さらに、心臓の近くの、物理的に同時には測定できない複数の値を、シミュレーションで得ようという研究も他大学と進めている。こうしたモデルベース解析は、まだあまり研究例がない分野だという。

Data Store Read と解曲線の振動
Data Store Read と解曲線の振動

既存のモデルベースツールに対し、大きな優位性を持つANSYS SCADE Suite

白石研究室で、いまモデルベース解析のメインツールとして使われているのが、ANSYS SCADE Suite だ。以前は別のツールを使っていたのだが、切り替えることにしたのには理由がある。その一つが、解析実行時の不具合が起きにくいことだ。以前のツールを使っていたとき、人体の循環器系シミュレーションにおける微分方程式の解が振動してしまったことがあった。プログラムのミスから起きたことであったが、この点でANSYS SCADE Suite では、この様なミスの原因となる記述を許さないことになっている。またもう一つが、自動車業界における機能安全性の必須規格であるISO26262 を取得していることで、自動生成するコードの正当性が保証されているのだ。

さらに、習得の容易さでも優位性があるという。白石研究室では4 年生のモデルベース実践教育として、ETロボコンに出場している。ANSYS SCADE Suite を5カ月学習した学生に、ロボットにある機能を実装させたところ、1年半のプログラミング経験と1年のC 言語経験がある学生とほぼ同等の時間で完成した。工数としては変わらないが、習得するまでの教育期間や、作成したプログラムの設計資産としての再利用性、メインテナンス性を考えると、ANSYS SCADE Suite による実装のメリットが非常に大きいといえる。このことから、白石研究室では今後、従来のツールで実装していた制御プログラムや解析用シミュレータの実装も、順次ANSYS SCADE Suite による実装に置き換えていく予定だ。

モデルベースツールを使った解析手法は、シミュレーションツールだけでは解析することが難しかった製品や事象に対して、解析の可能性を広げるものだ。自動運転車やロボット、多数の機器がつながった複雑なシステムなどへ応用が進んでいけば、優れた製品をより短期間で世の中に出していくことができるのではないだろうか。

SCADE Suite
SCADE Suite
自動生成Cコード
自動生成Cコード

使用したANSYS 製品

製品使用における利点

  • 厳密な記述規則によって、意図したとおりのモデルベース解析が可能
  • ISO 26262 など国際規格への対応
  • 習得の容易さ

モデルベースの シミュレーションについて
複雑なシステムすべてをモデル化して1つのシミュレーションとして解析しようとすると、膨大な計算量となって現実的な時間で解を得ることができない。そのため、システムの中の要素ごとにモデル化して単体で解析を行い、それぞれの要素に対して「こういう入力をするとこういう出力が得られる」という入出力特性データを得ておく。これによって、それらの要素を組み合わせてシステムにしたとき、入出力特性が分かっている要素については改めて解析を行わないことで、全体の解析コスト(コンピュータリソースおよび時間)を圧縮し、効率化できるメリットがある。


国立大学法人群馬大学理工学部 国立大学法人群馬大学理工学部
www.st.gunma-u.ac.jp

所在地:
〒376-8515 群馬県桐生市天神町1-5-1 (桐生キャンパス)

群馬県桐生市は明治時代、日本の基幹産業であった繊維産業の中心地だった。国立大学法人群馬大学理工学部は、その桐生市に技術者の養成や技術開発を目的として1896年(明治29年)に設立された桐生織物学校に端を発し、1915年(大正4年)に官立の桐生高等染織学校となり、2015年に創立100周年を迎えた。

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