AUDI AG 様

複雑化するステアリングシステム開発における、 「ANSYS medini analyze」を使ったモデルベース開発事例

デジタル技術によってビジネスプロセスを変革し、新たな価値を生み出し、競争上の優位性を確立したり、社会を変えるような影響を与えたりするデジタルトランスフォーメーションが世界中の企業で進行している。製造業をはじめ産業界においても新たな価値を持った製品の設計開発や、製造、運用など製品ライフサイクル全般に、デジタルトランスフォーメーションによる急激な変革の波が押し寄せている。その中にあって、ANSYSのシミュレーションテクノロジーは、顧客企業やパートナーの知識と経験と技術力の融合により、新しい価値の創造に大きく寄与している。

 “Innovate everywhere, anytime”をテーマに、2019年10月4日にアンシス・ジャパンが開催した「ANSYS INNOVATION FORUM 2019」から、自動運転をはじめとした新しい運転支援システム開発における安全要件への取り組みにANSYSの機能安全性解析ツール「ANSYS medini analyze」を導入したAUDIのセッション「フェールオペレーショナルシステムのセーフティおよびSOTIF活動を考慮したシステムエンジニアリング向けmedini analyzeの使用方法」を紹介する。

事例作成協力
AUDI AG,
Development Steering Systems, Lead Safety Manager  
マイケル・ケースマイヤー 氏

こちらの事例はANSYS INNOVATION FORUM 2019にてご講演いただきました内容を元に作成
特別講演:フェールオペレーショナルシステムのセーフティおよびSOTIF活動を考慮したシステムエンジニアリング向けmedini analyzeの使用方法

ステアリングシステム開発における課題

このセッションに登壇したマイケル・ケースマイヤー氏は、AUDIのステアリングシステム開発部門でリードセーフティマネージャーの肩書きを持つ。セッションではステアリングシステムにおけるSOTIFへの取り組みに、「ANSYS medini analyze」をどのように活用しているかを説明した。

自動車のステアリングシステムは、現時点で市場投入されている運転アシスト機能や高速道路における自動運転機能、さらに数年後に製品化される見通しの都市部での自動運転など、求められる機能が高度化している。さらに機能要件に加えて、法的な要求事項に適合する必要もあり、システムとしてどんどん複雑化している。また、駐車アシストのようなそれほど複雑でない機能であっても、さまざまな事業体や多くのサプライヤーが関係するため、ブランドの全車種に展開するとなるとこれも難しい。

セッションの中でケースマイヤー氏が難しさの例に挙げたのは、高速道路での自動運転中に、ステアリングシステムに障害が発生した場合だ。3車線の道路を走っているときに障害が発生したら、車を路肩に寄せて停止しなくてはならない。 しかし、当然他の車線にも走行している車があるし、ステアリングシステムに障害があるなら、その障害部分の機能を停止してほかの機能を使って運転を継続するフェールオペレーショナルシステムが必要になる。ステアリングのメカニカルな部分は1つとしても、機能を提供するソフトウェアとそれが動くハードウェア(ECUなどの電子/電気的ハードウェア)を2つ用意する必要があるということだ。また、ごく短時間でステアリング機能やその法的責任をどのように運転者に引き継ぐのかという要件も ある。これらをAUDI自身だけで なく、関連するシステムのサプラ イヤーとそこから提供されるすべて のコンポーネント、ハードウェア/ ソフトウェアも含めて開発プロセスに 落とし込まなくてはならない。これが 現在のステアリングシステム開発に おける課題だ。

AUDI 1

こうした課題へのアプローチとして、AUDIではシステムエンジニアリングにVモデルを採用して開発している。メカニクス、ソフトウェア、ハードウェアという3つの要素それぞれと、それらの組み合わせについてベリフィケーションとバリデーションをVモデルで行う。AUDIのステアリングシステム開発部門は、自社ブランドだけでなくPorscheやVolkswagen、Lamborghini, Bentleyのステアリングシステムも開発しており、それぞれのブランドに異なるサプライヤーが連なる。そしてそのそれぞれに置いて重層的にVモデル開発が行われている。3つの要素のうちソフトウェアについてはASPICE(Automotive Software Process Improvement and Capability dEtermination)を利用するが、メカニクスやハードウェアについてもエンジニアリングプロセスが必要であるし、サプライヤーモニタリングも必要になる。

また安全に関して、機能安全コンセプト、技術安全コンセプトなどのレイヤー、法的要件に対してもHARA(Hazard Analysis and Risk Assessment)を実施している。SOTIF(Safety Of The Intended Functionality)に関しても、例えばステアリングシステムのECUが障害を起こしたときになにが起きるかということを、FTA(Fault Tree Analysis)とFMEA(Failure Mode Effect Analysis)などを通じて解析、検証している。安全要件については、機構、ソフトウェア、ハードウェアのレベルだけでなく、システムレベルで解析しなくてはならないからだ。

モデルベース開発に最適な「ANSYS medini analyze」

ステアリングシステムの開発には、ステアリング単体のみならず、例えばパーキングアシスタント機能なども含める必要があるため、AUDIでは「ANSYS medini analyze」を利用していると、ケースマイヤー氏は説明する。「ANSYS medini analyze」は、自動車や航空宇宙などの業界で、多種の安全性解析手法を統合して実装しており、各種の安全規格で要求される活動を効率的に一貫してサポートし、モデルベースの安全性解析を実現するツールだ。「ANSYS medini analyze」は安全に関してFTAやFMEAに対応し、またSOTIFについてもカバーするため、システム設計において安全とSOTIFという2つの観点を1つにまとめたいAUDIのニーズに応える製品である。「ANSYS medini analyze」を使った実際のステアリングシステム開発では、安全目標とSOTIFの要件/目標を「ANSYS medini analyze」の中に入れて、1つの成果物として出せるようにしようとしている。

成果物のトレーサビリティーにおいてはOCL(オブジェクト制約言語)を使って、一貫性や完全性を確認する。例えば、安全要件がソフトウェアやハードウェアのコンポーネントに紐付いていないことが検出されると、”安全要件を達成する正しいやり方ではない”としてエラーを出す仕組みになっている。それぞれの成果物ごとに確認してレビューすることはもちろん、OCLで書かれた制約ルールベースでモデルのチェックを行えることが「非常に大きなメリット」だという。ケースマイヤー氏はもう1つ、さまざまな車両におけるフェールセーフのステアリングシステムの成果物と、フェールオペレーショナルの成果物が、どのようなところが異なりどこが同じなのかを容易に確かめられることも「ANSYS medini analyze」の大きなメリットだと説明した。

AUDIのステアリングシステム開発部門では、「ANSYS medini analyze」を使用したモデルベース開発によって、複雑な成果物のトレーサビリティーや、安全コンセプトの一貫性、完全性を保つと共に、多岐にわたるバリエーションの管理を行っている。ケースマイヤー氏は今後について、自動運転のように複雑な機能に関するもの全てを「ANSYS medini analyze」でカバーして、要件に基づいてテストができるようにそれらをつなぎ、開発の一層の効率化を図りたいと話してセッションを締めくくった。

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使用したANSYS 製品

  • Ansys medini analyze
    自動車/航空宇宙向け機能安全解析ツール
AUDI AG
https://www.audi.de/de/brand/de.html

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